- 「ファクトフルネス」って、どういう意味なんだろう?
- 本書が大きな反響を呼んだ理由が、何なのかを知りたい
- ファクトフルネスの書籍の要約、書評を読みたい
- 本書に対しての批判はどのようなものがあるのかを知りたい
「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」は、2019年にベストセラーにもなった名著です。
なぜ本書がここまで反響を呼んだのかというと、それは世界の国々の貧困や教育、医療や人口推移などの現状に対して、いかに自分が勝手な思い込みで誤った見方をしていたかと気付かされる内容となっているからです。
のぶゆき
「あなたの”常識”は、20年前で止まっている!?」
この本書のキャッチコピーにもある通り、実は世界は多くの人の想像を優に超えるレベルですでに発展しており、医療や教育水準も向上して豊かになっています。
しかし自分の中の誤った思い込みが、そうした世界の真実を知る機会を奪っているわけです。ではどうすれば自分の誤った思い込みに気付いて、正しく世界を見られるようになるのでしょうか。
サイト管理人:大山俊輔
この記事では、世界の正しい見方について解説されている、著「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」を要約についてまとめています。書評から内容に対しての批評などについてもカバーしていますので、本書を手に取る前に是非ご参照いただけますと幸いです。
目次
ファクトフルネスとは
ファクトフルネスとは思い込みや先入観ではなく、客観的なデータに基づいて正しく物事を見ていく習慣のことを言います。
普段私たちが想像しているこの世界や社会に対するイメージは、思い込みや偏見、古い情報に満ちていて、世界の実情とはかけ離れたものになっている可能性が大いにあります。
それは客観的なデータや裏付けとなる根拠を調べて確認するという習慣が、ほとんどの人にはないためです。
「世界は悪くなっている」という思い込み
本書の中では、いかに多くの人がいまの世界の実情に対して、思い込みや先入観をもっているかに気付かされる13問のクイズが出題されています。
その中の1つが次の質問です。
Q.現在、低所得国で暮らしている女の子の何割が、初等教育を修了できると思いますか?
正解は6割です。
実は低所得国の半数以上の女子が、すでに最低限の教育を受けられている事実があります。つまり世界は良くなっていっているわけです。
しかし大半の人は「世界は悪くなっていっている」と思いがちです。その原因には、人間に生まれ持って備わっている本能が深く関わっています。
ファクトフルネスを身に付けるために知るべき「本能」についての要約ポイント
本書が一貫して主張していることは、人は思い込みの中で生きているという点です。
そして本書の中では、多くの人が誤った思い込みや先入観を引き起こしてしまう、人間の10個の本能について紹介されています。それぞれ見ていきましょう。
①分断本能
分断本能とは、物事を何でも二極化して(2つのグループに分けて)捉えてしまうという本能のことです。
たとえば世界の国々のことを全て「先進国か発展途上国か」のどちらかで捉えようとすれば、その中間に位置しているような国を、無理やり「発展途上国」というカテゴリに入れてしまいかねません。
世界を2つに分けることでシンプルに物事を捉えたいという無意識の思いが、現実を歪めて見てしまう原因になるわけです。
②ネガティブ本能
ネガティブ本能とは、世界はどんどん悪い方向に向かっていると思い込みやすい本能のことです。
たとえば世界人口のうち、極度の貧困にある人の割合は過去20年間でどう変わったかという質問に対して、多くの人はネガティブな答えを想定してしまいます。
しかし極度の貧困にある人は、実際20年で約半数になっているんです。
人間はそもそも本能的にネガティブな情報に敏感な生き物です。
そこに新聞やテレビ、ネットなどのニュースで世界の悲惨な状況を目にすれば、そうした情報が強く印象に残り、先入観も生まれやすくなってしまいます。
③直線本能
直線本能とは、一時的にでも増加傾向のあるもの(世界人口など)は、そのままひたすら増え続けていくと思い込んでしまう本能のことです。
人間は誰でも、物事をとにかくシンプルに捉えようとします。
それは指数関数的に爆発的な変化をする人口推移のグラフや、ある一定以上の値には増加しないような識字率のグラフなどを、人はイメージすることが苦手だからです。
④恐怖本能
恐怖本能とは、恐怖心を刺激する情報にばかり自然と意識が向いてしまう本能のことです。
メディアのニュースでは、多くの人に関心をもってもらうために「めったに起こらないが恐怖心を刺激する事件」ばかりが見出しに挙がりやすい傾向があります。
たとえば高齢者による交通事故のニュースを毎日のようにテレビで見ていれば、「高齢者は事故を起こしやすいんだ」と誰しもが思ってしまうわけです。
⑤過大視本能
過大視本能とは、目の前の数字が最も重要であると思い込んでしまう本能のことです。
たとえばユニセスの発表では、2016年だけで世界中の0歳児は、約420万人亡くなっていると報告されています。
これだけを聞くと「なんて数が多いんだ」とショッキングに感じてしまいますよね。しかし実際には、2015年には440万人、2014年には450万人、さらに1950年は1440万人もの赤ちゃんが亡くなっているんです。
この事実を知ったなら、目の前の420万人という数字が急に小さく感じるものです。つまりこうした比較対象がない数字には、注意が必要になります。
⑥パターン化本能
パターン化本能とは、よく考えずに物事をパターン化して、それを何にでも当てはめてしまう本能のことです。
たとえば、ある国の人が川で洗濯をしている映像をテレビで見たとき、その国のことをよく知らなければ、「この国のほとんどの人は洗濯機を持っておらず、川で洗濯をしているんだ」と思ってしまうことがあるというわけです。
これは偏見にも近いですが、ほんの少数の事例から全体を決めつけてしまうことは誰にでもありがちなことです。
⑦宿命本能
宿命本能とは、物事は何でもゆっくりと少しずつ確実に変化しているものなのに、変わることがないように感じてしまう本能のことです。
多くの人は国の発展具合や人々の国民性など、過去からずっと変わらないものは、これからも大きな変化もなく、今のままずっとあり続けるものだと思いがちです。
しかし世界の貧困層の割合や途上国の経済発展など、時とともに世の中は確実に変化しています。
こうした少しずつゆっくりと変化しているものを正しく捉えるためにも、客観的なデータに基づいて世界を見ていく習慣(=ファクトフルネス)は必要になってきます。
⑧単純化本能
単純化本能とは、全ての問題はたった一つの原因から生まれていると思い込んでしまう本能のことです。
本来、世界中で起きている貧困や食料危機、環境問題などの様々な問題は、複数の原因が複雑に絡み合うことで生じているはずです。
しかし「貧困は経済格差が原因だ」「環境問題は二酸化炭素の排出が原因だ」などと、それらしい主張ばかりを耳にすれば、あたかもその一つだけが諸悪の根源であるかのように思ってしまいがちです。
常にいくつかの原因を探す習慣を身に付けていくことが大切です。
⑨犯人捜し本能
犯人捜し本能とは、何か悪い事が起きたとき、誰もが分かりやすい理由や犯人を見つけたくなる本能のことです。
誰かが悪いと決めつけることができれば、簡単に問題は解決すると多くの人は思いがちです。
ただほとんどの場合、そうして問題が本当の意味で解決することはありません。真の問題解決のためには、犯人ではなく原因を探すことに注力すべきなんです。
⑩焦り本能
焦り本能とは「いますぐ決めなければ大変なことになる」と思い込んでしまう本能のことです。
身近な例で言えば、「本日限定の特別価格!」などの表記を目にすれば、「安く買えるこの機会を逃したくない」という焦りの気持ちから、冷静に物事を考えられなくなるものです。
また世界に目を向けてみても、たとえば、
「いまこの瞬間にも途上国の子供たちの2人に1人が、医療を受けられず亡くなっている」
こうした問題を焦りの本能から解決しようと、医薬品を援助したり支援金を送付したりすることは確かに素晴らしいことではあります。
しかし実際に彼らの命を奪っている本当の原因は、医薬品や資金不足よりも、
- 子供を病院まで搬送する道が整備されていないこと
- 搬送する自動車がないこと
こうしたことが問題の本質だったりするわけです。
いつも一呼吸置いてから行動を起こす習慣こそが、重要になるんです。
ファクトフルネスを仕事やプライベートに活かすためには
客観的なデータを見て物事を判断するというファクトフルネスを身に付けることのメリットは、グローバルな世界を正しく見られるようになることだけではありません。
ファクトフルネスの重要性は、いまのネット社会だからこそ必要とされるものでもあります。
特に近年は、SNSやネットニュースでのデマ情報に振り回されてしまう人が、後を絶ちません。それはほとんどの人が、流れてくる情報の根拠となるデータや一次情報を確認しようとしないためです。
多くの人は「自分が見たいようにしか」世界を見ていません。
しかしだからこそファクトフルネスという習慣を取り入れていくことが、物事を正しく見極めるスキルの習得につながっていくんです。
まとめ
著「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」の要約をまとめると次のようになります。
- 思い込みによって、多くの人は世界の真実を正しく理解できていない
- ファクトフルネスを身に付けるためには、陥りやすい人間の本能に気を付けなければならない
- 先入観に囚われないために、定期的に自分の持っている情報をアップデートしていくことが必要
また本書の中で紹介されている、客観的なデータから見た正しい世界の実情の一例は下記のようなものになります。
- 発展途上国の所得レベルは年々上がっていること
- 世界的に平均寿命や乳児への予防接種の割合も、上がっていること
- いくらかでも電気が使える人の割合は、すでに世界の80%にも及んでいること
そして本書を読むことで、
- 自分の凝り固まった見方は、世界を理解するのに役に立たないと気付ける
- 本能に訴えかけようとする悪いニュースを冷静に見られるようになる
こうした真実を見極められる習慣を、身に付けられるようになるはずです。
のぶゆき