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安宅和人 著『イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」』を徹底解説!初心者でも要約を読んで内容を理解しよう!

『イシューからはじめよ』

この本は、『イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」』というタイトルなのですが、わりとよく目にするな‥‥とか、ビジネスに役立ちそうだな‥‥とか、気にはなっているけど難しそう‥‥とか、なかなか手に取る気になれない‥‥とか思っている人はいませんか?

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この記事を書いている、Hと申します。シンクタンクで、リサーチャーとして従事したあと、行政コンサルタントとして案件業務に従事しています。コンサルタントのキャリアは10年近くあるのですが、主に行政分野にコミットしています。最近、民間企業の経営分野にも携わるようになりました。

そんな人にとって、この本は間違いなく必読に値する本です。あなたの脳内には既に「イシューってなんや?」のような問いがグルグルと渦巻いていることでしょう。この記事では、そんな方にぜひとも「イシュー」を取り巻く言葉について理解を深めていただくとともに、この本で著者が伝えようとしていることを少しでも学んでいただければと思います。特にタイトルでも言及していますように「初心者」にフォーカスし、巷にあふれている要約記事等では言及しきれていない前提の部分に注力したいと考えています。

そして「こんな本は知らない」という人でも、日常業務の中で知的生産に携わっている人には、ぜひともこの記事を読んでいただき、知的生産の本質を理解するとともに、日常業務の生産性や価値の向上に役立てていただければ幸いです。帯にも書いてありますが「人生は何かを成し遂げるためには あまりにも短い」のですから、やらなくてもいい仕事に自分の貴重な時間をささげるのは、あまりにももったいない。私自身、本書は事あるごとに読み返す本でして、自身の立ち位置を確認するために欠かせない本であると考えていますし、読むたびに発見があります。そこに名著と呼ばれる、本書の真髄があるように思います。

サイト管理人:大山俊輔

本職は英会話スクールの経営。語学学習の世界においても、手間がかかり成果にはつながらない「犬の道」を選ぶ人が本当に多くいらっしゃいます。そにょうな意味でも、本書はビジネスマンだけでなくあらゆる人のために役立つ本だと確信しています。

本記事では安宅和人の名著『イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」』の要約・まとめを通じて、具体的に私たちの日々の生活やビジネスの現場においてどのように応用していくかについてまとめています。今まで、難しいと思って避けてきた方、そんな人にこそ読んでもらいたいと思いましたので、図解も入れてわかりやすく解説しています。

『イシューからはじめよ』 – 本書と著者安宅和人さんについて

さて、再びこの本の帯について見ていくと――「本」という物体だとか、表紙を眺めることだとかも読書の範疇に入るのだ、ということを書いた読書術の本もありますので――「コンサルタント、研究者、マーケター、プランナー……『生み出す変化』で稼ぐ、プロフェッショナルのための思考術」と書いてあります。

また、本文中にもこう書かれています。

「意味あるアウトプットを一定期間内に生み出す必要のある人にとって、本当に考えなければならないことは何か。この本はそのことに絞って紹介したい

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よってこの本は、端的に「思考術」の本であると捉えておけば、ファーストステップとしてはOKかと思います。

ですので、「『イシューからはじめよ』ってどんな本?」と聞かれれば、「価値のあるアウトプットを生み出すための思考術の本だよ」というように答えれば、それだけで読んだ風を装えるわけです(笑)。

それでもやはり、「へ~!じゃあ詳しく教えてよ!」となったときにしどろもどろしなくて済むように、先に読み進めてくださいね。

この本の著者は安宅和人さん。

ヤフー株式会社CFO(チーフストラテジーオフィサー)、 データサイエンティスト協会理事、応用統計学会理事等々の肩書を持つマルチプレーヤーの方です。安宅氏は1968年富山県生まれ。東京大学大学院生物化学専攻にて修士課程修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。4年半の勤務後、イェール大学・脳神経科学プログラムに入学。平均7年弱かかるところ3年9カ月で学位取得(Ph.D.)‥‥というキャリアとのことで、一読して凄い人ですし、ユニークな経歴でもあります。

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で、本人は「変わった経歴」とおっしゃっています。

こういった経歴だからこそ、この本が生み出されたといっても過言ではないでしょうし、著者の思いとしても「科学者とコンサルタント、そしてビジネスの現場という不思議な経験のミックスのなかで学んできたことのうち、本当に重要なエッセンスを皆さんにお伝えできれば」と書かれています。これは上記のような無二の経歴を歩んできた著者ならではのメッセージだと思います。

『イシューからはじめよ』 – こんな人におすすめの本

さて、こうした背景から、本書はどんな人におすすめ?
そういう質問が出てきそうですが、私なら迷わず下記のような人にオススメしたいと思います。

  • 手先は器用でどんどん作業は進むけどいざ実際にその作業がプロジェクトや組織に役立てているわからない方
  • 物事の本質を捉えて、あっという結果を短期間で出したいと思っている方
  • 会社経営やプロジェクトの場において、最小限のリソースで最大限の成果を出したいと考えている方

サイト管理人:大山俊輔

英語学習などでも、自分にあった学習法を考える前にとりあえず気合で単語を1万語覚えてしまうような人がいます。若い時ならそれもいいんですが、大人になってから、使うかどうかわからない単語を覚える前に、先にイシューからはじめていれば無駄なく自分の目的に見合った学習法で短期間に英語が話せるようになるはずですよね。

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そうそう。ビジネスだけでなく、学習でもこのイシュードリブンの考え方は役に立ちます。

『イシューからはじめよ』 –  この本の全体像、そして「イシュー」とは?

『イシューからはじめよ』 -  この本の全体像、そして「イシュー」とは?

超ざっくりいうと?

あえて、本書で著者が言いたいことを一言で言ってみるとこのことだと私は理解しています。

  • 生産性が高いというのは仕事が早いというのとは同義ではない
  • 手先が器用で仕事が早くても方向(イシュー)設定が間違っていれば犬の道を行くことになるから
  • 生産性の高い人というのは、問題を解く前に、問題の「見極め」をしている
  • つまり、解くべき問題(課題)を見極めることを先に行うことで、最短時間で最適解につなげることができる
  • 昔ながらの言葉で言えば、戦術を極めるより先に戦略ということ

どんなに事務処理能力が高くても、方向の見極めができない人は生産性が高くなく、一方で、作業は遅い人でも方向の見定めができる人であれば効率よく最適解に近いポイントに近づくことができる。

これが、本書で著者が伝えたいポイントです。

各章について

少し前置きが長くなりましたが、ここから本書の内容について書いていきます。まずは目次から見ていきましょう。

■序 章 この本の考え方―脱「犬の道」
■第1章 イシュードリブン―「解く」前に「見極める」
■第2章 仮説ドリブン①―イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
■第3章 仮説ドリブン②―ストーリーを絵コンテにする
■第4章 アウトプットドリブン―実際の分析を進める
■第5章 メッセージドリブン―「伝えるもの」をまとめる
おわりに 「毎日の小さな成功」からはじめよう

「はじめに」では著者の経歴も踏まえながら、「圧倒的に生産性の高い人」にひとつ共通していることとして「ひとつのことをやるスピードが10倍、20倍と速いわけではない」と記しつつ、ビジネスであれサイエンスであれ「本当に優れた知的生産には共通の手法がある」ということを示します。

「悩む」と「考える」の違いについて

また、「悩む」と「考える」についての違いも明示します(これだけでも本書を読む価値があると思うのは私だけでしょうか)。

「悩む」=「答えが出ない」という前提のもとに「考えるフリ」をすること
「考える」=「答えが出る」という前提のもとに建設的に考えを組み立てること

著者は、著者の周囲で働く人には悩んでいる自分を察知・認知できるようになることを勧めています。これも、ビジネスを進める上では重要なポイントであると思いますし、私自身も仕事を進める上で役に立っているアドバイスであります。

そして序章では、「一般常識を捨てる」ことや「生産性」、「バリューのある仕事」についての定義づけがなされています。ここから先に進むために重要なことなので、それぞれ説明したいと思います。

「イシューからはじめる」ためには、何よりも「一般常識を捨てる」

「イシューからはじめる」ためには、何よりも「一般常識を捨てる」ことが大切であると著者は説きます。とりあえず、以下の項目すべてに目を通してみてください。

・「問題を解く」よりも「問題を見極める」
・「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」
・「知れば知るほど知恵が湧く」より「知りすぎるとバカになる」
・「1つひとつを速くやる」より「やることを削る」
・「数字のケタ数にこだわる」より「答えが出せるかにこだわる」

いかがでしょうか?

それぞれの項目におけるカッコ内の後者が、この本で著者が主張しているポイントになります。読みながらドキッとした方はいませんか。私は何回読んでもドキッとしてしまいます。

『イシューからはじめよ』 –  生産性とは?価値ある仕事とは?

『イシューからはじめよ』 -  生産性とは?価値ある仕事とは?

生産性について

それでは続いて「生産性」についてです。

そもそも「生産性」とは何でしょうか? 著者は問います。ウィキペディアの例を挙げながら、本書における定義を「どれだけのインプット(投下した労力と時間)で、どれだけのアウトプット(成果)を生み出せたか」と、以下の数式とともに端的に表現します。

生産性 = アウトプット/インプット = 成果/(投下した労力・時間)

さらに、ビジネスパーソンにとってきっちりと対価がもらえる、研究者にとって研究費をもらえる「意味のある仕事」を「バリューのある仕事」とします。そして「バリューのある仕事とは何か」という問いの答えを明確に定義してこそ、生産性は上がるものだと諭します。

バリューのある仕事とは?

バリューのある仕事とは
バリューのある仕事とは?

 

「バリューのある仕事」とは、いったい何なのでしょうか?

著者の理解として、バリューの本質は2つの軸で構成されています。「イシュー度」と「解の質」といった2つの軸をとったマトリクスを示します。

そして「イシュー」についてです。著者の言うイシューは以下の2つを満たすものです。

・a matter that is in dispute between two or more parties
2つ以上の集団の間で決着のついていない問題

・a vital or unsettled matter
根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題

よって、「イシュー度」が高く(=自分の置かれた局面で、この問題に答えを出す必要性が高い)、「解の質」が高い(=そのイシューに対して高い質で明確に答えを出せている)、仕事こそがバリューのある仕事となるわけです(先ほど示したマトリクスの右上の象限に当てはまるところ)。

これは常に頭に入れておくべきマトリクスであると言えるでしょう。

「解の質」よりも「イシュー度の質」

なお、著者は「解の質」よりも「イシュー度の質」の方が重要であると説きます。「課題の質」とも書いていますが、「課題の解像度」とも言えるでしょう。さらに先述の「一般常識を捨てる」の項目と掛け合わせると、

「課題を適切に見極め、知りすぎない範囲で課題の解像度を上げて、シンプルにまとめてあって答えの出るもの」

というようにまとめられるように思います。

犬の道に踏み込んではいけない

犬の道に踏み込んではいけない

さて、ここで著者は「犬の道」に踏み込んではならないと厳しく言います。

それは、何も考えずにがむしゃらに働き続けることの無意味さを説くものでもあります。先ほどのマトリクスで示すと、上記のようになります。

まずは何より「イシュー度」の低い問題に取り組んではいけない。先に「イシュー度」の高い問題に絞って、それに取り組むことを著者は勧めます。仮に判断が難しければ、上司や研究室の指導教官に聞くことで「本当に答えを出す価値のある問題」を絞ることが重要なのです。そのことによって時間も浮かせることができますし、「ダメな人」になる可能性を下げることができます。

サイト管理人:大山俊輔

英語が話せるようになりたいから英語学習はじめたはずなのに、気づけばTOEIC990点目指して全然話せないケースなどは、犬の道に入ってしまう典型的なパターンかも。

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あ(笑)。自分もそれやっちゃったことあるかも。

「うさぎ跳びを繰り返してもイチロー選手にはなれない」

然るべき仕事に、正しくリソースを注ぐことが重要なのです。

本書のそれ以外の視点について

以降は、「イシューからはじめる」アプローチとして、先述の目次と対照させながら本書は展開していきます。

◎イシュードリブン(第1章)
→今本当に答えを出すべき問題=「イシュー」を見極める

 

◎仮説ドリブン①(第2章)
→イシューを解けるところまで小さく砕き、それに基づいてストーリーの流れを整理する

 

◎仮説ドリブン②(第3章)
→ストーリーを検証するために必要なアウトプットのイメージを描き、分析を設計する

 

◎アウトプットドリブン(第4章)
→ストーリーの骨格を踏まえつつ、段取りよく検証する

 

◎メッセージドリブン(第5章)
→論拠と構造を磨きつつ、報告書や論文をまとめる

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本当は全部カバーしたいのですが、長くなりすぎますのでここでは割愛します。是非、本書をお読みください。

著者は、このサイクルを素早く、何回転もさせることが大事だと説きます。

やはり数をこなしてこそ得られる質というものがあります。「量より質」という格言は初心者には該当しないものだと心得た方がいいでしょう。量を重ねることで、質を担保するための骨格であるとか、力の抜きどころであるとかが見えてくるはずです。

私の経験からも、それは真実だと思います。ただ、その一方で「根性に逃げるな」と、著者は言います。この点は、匙加減が難しいところではありますので、このあたりについては、ぜひとも本書を読んでみてください。

「イシュー」という言葉1つとっても、これだけのバックグラウンドがあるんだということを理解いただけるとありがたいなと思っています。同じ言葉を使うにしても、あの人の言葉には説得力がある‥‥と感じるときなんかは、得てしてそれだけのバックグラウンドを秘めているものだと、そしてそれを自分は感じているんだということを知ることができればいいのかなと思います。

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか?

この本は「コンサルタント、研究者、マーケター、プランナー」というような知的生産に携わる人に向けて書かれた本です。全体像とそれぞれの語義についての説明を深めに行いましたが、ぜひとも周囲の人やビジネスの現場で、それぞれの立場で「イシュー」にまつわる議論を展開していただければと思います。

しかし一方で、私の実感としては、ここまで徹底的にイシューを追求せずとも、ある一定の成果を出すことで回っている分野もあるように思うのが正直なところです。自身のスキルがまだまだだ‥‥ということもあるかもしれませんし、それが日本の停滞を招いているのかもしれませんが。もっとも私の場合、究極的に考えていくと自身のような職はなくなった方がいい、とまで考えてしまうのですが、これだとビジネスになりませんし、本書に書かれているように答えの出る問いではないわけです。

そこで、自分の出せる解であるとかバリューのある仕事(とされるもの?)を提供している中で、顧客に喜んでもらえて‥‥というような現実があるのであれば、それでいいのかなとも思います。

いずれにしても、本書は発行から10年以上経ってもなお読み続けられている本ですし、これにかわる本が見当たるものでもありません。ですので、ぜひともいろいろな方の意見を学びつつ、それらを足掛かりにしながら、ぜひとも本書にあたっていただき、著者と(本を通じて)対話する中で、あなたとビジネスパートナーにとって価値あるアウトプットを生み出していただければと思います。

H&大山俊輔