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トマ・ピケティの『21世紀の資本』の徹底要約! | 初心者にもわかりやすく解説しました!

トマ・ピケティの『21世紀の資本』の徹底要約! 初心者にもわかりやすく解説しました

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、世界的に経済活動へ大きな打撃となりました。これにより、各国では大きな経済損失を受け、2020年は経済格差が際立った1年になったのではないでしょうか。

経済格差問題と言えば、2013年にフランスの経済学者トマ・ピケティが出版した『21世紀の資本』が世界的にベストセラーとなったことが記憶に新しいと思います。『21世紀の資本』は本格的な経済学書であるため、タイトルを聞いたことがあっても読んだことはない人が多いのではないでしょうか。

経済学初心者にとっては、少し難しい内容の書籍であるかも知れません。

茶もふ

現在は教育に関わる仕事をしています。大学では法律を中心として、経済学などの文系学問を勉強しておりました。経済学や資本論は私たちの生活に直結する話であり、いま話題の「積立NISA」などによる資産運用や投資信託を行う上でも重要な知識になります。

サイト管理人:大山俊輔

本職は英会話スクールの経営者。大学では経済学、今の会社を起業する前は証券会社で勤務していました。金融、実体経済両方の世界を見てきて『21世紀の資本』は現在の世界経済の状況を実に正確に描写していると思いますので、この記事を通じて一緒に学びたいとおもいます。

この記事では、トマ・ピケティの『21世紀の資本』について、初心者向けに徹底解説いたします。今まで、『21世紀の資本』を読みたいけど難しいんじゃ、と思ってた方もご安心を。わかりやすくポイントを要約しましたので、この記事を通じてエッセンスを理解してくださいね。

『21世紀の資本』の内容を3つのポイントで要約

『21世紀の資本』の内容を3つのポイントで要約

トマ・ピケティは、1800年代以降における20ヵ国以上の税金データを集め、歴史的なデータとして経済格差の拡大を主張したことで大きな評価を得ました。18世紀にアダム・スミスが唱えた「放任主義」とは反対に、ピケティは「干渉主義」を唱えました。

ここでは、ピケティの著書『21世紀の資本』の重点ポイントを3つに絞り、解説いたします。

ポイント1 – 資本主義の見直しが必要である

そもそも、従来の資本主義とは一体どういうものなのでしょうか。

資本主義とは「市場メカニズム」を重視した考え方であり、産業革命以後に確立されたものです。その最大の特徴は、「資本を効率的に配分する」という点であり、これは「資本を平等に配分すること」ではありません。ピケティは、この従来の資本主義の考え方を作り直さなければ中間層以下は豊かにならないと主張しました。

スミスが唱えた「放任主義」は「市場メカニズム」を重視するものであり、富裕層が豊かになるほど中間層以下も自然と豊かになっていくという考え方でした。これを経済用語では「トリクルダウン理論」と呼びます。しかし、ピケティは、この「トリクルダウン理論」を否定し、政府が「放任主義」を続けることで経済格差がどんどん拡大していくと訴えました。

ピケティは収集した膨大な過去のデータを根拠とし、経済発展によって豊かになるのは富裕層のみであり、富裕層が蓄積した富は貧困層には行き渡らないものであると主張しました。なぜなら、豊かになるための1番大事な要素は財産相続であり、富裕層の富は世代を超えて受け継がれていくものだからです。

また、昨今の人口減少社会に伴い、ますます経済格差が固定されていくと考えました。ピケティは、このような社会は平等ではないとし、累進的な資産税の導入が必要であると主張しました。つまり、資産をたくさん持っている人から多くの税金を徴収するということであり、分かりやすく言うと富裕税ということになります。

ポイント2 – 資産に対する累進的課税の導入について

では、富裕層の資産を中間層以下に分配していくにはどうしたら良いのでしょうか。トマ・ピケティは、富裕層が所有する資産に対して累進的に税金を課し、それを財源として中間層以下に還元していくべきであると『21世紀の資本』において述べています。つまり、富裕層の資産から税金を取ることで富裕層の資産成長スピードを緩やかにし、中間層以下の労働者階級には所得税減税などの救済を行っていくということです。

資産からの収益は労働による収益よりも大きなものであるため、現代社会において労働によって豊かさを得ることは難しいとピケティは考えました。日本では所得税などの税金が累進課税制度を採用していますが、これを富裕層の資産に対しても課し、富裕税として徴収していくべきだということです。

ポイント3 – r>gの公式について

r>gの公式

『21世紀の資本』において、トマ・ピケティは「r>gの公式」を主張しました。

rはreturnの頭文字であり、「資本収益率」(資産運用による利回り)を表しています。gはgrowthの頭文字であり、「経済成長率」(賃金収入による収益)を表しています。

『21世紀の資本』では、gが2%程度であるのに対し、rは5%程度であると述べられています。

サイト管理人:大山俊輔

日本に至っては、過去20年デフレを放置してきたためgですら2%もないのが悲しいところですね(笑)。

ここでいう資本とは不動産や株式などによる資産であり、資産は賃金による成長率を上回るものであると主張しています。

この「r>g」の公式は歴史的かつ恒久的に成立するものであるとピケティは考えています。資産運用をできるような多くの資産を持っている人と、給料収入のほとんどを生活費として消費してしまう人を比較すると、その格差は時間の経過と共にどんどん拡大していくのです。

具体的に考えてみましょう。gに当てはまる人として、年収410万円のサラリーマンを想定してみます。年収410万円というのは2020年の日本人の平均年収でありますが、この人の賃金が2%上昇すると来年の年収は約418万円となります。そして、rに当てはまる人として410万円分の資産を運用できる人を想定してみます。rの収益率は5%であるため、来年の資産は約430万円となります。

これにより、たった1年間で約12万円もの差が生まれました。対象金額が大きくなり、また、時間の経過が大きくなるほど、この格差は拡大していきます。

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しかも格差の拡大は複利で膨らみますから、拡大のスピードは指数関数的に大きくなっていきます。

このように資産運用によって富裕層はどんどん豊かになり、その豊かさは世代を超えて受け継がれていきます。富裕層の子供は資産の相続を受けて豊かになっていき、資産を相続できない子供は豊かになれないという構図ができているのです。また、少子化によっても経済格差の拡大が後押しされてしまいます。例えば、1,000万円分の資産を4人の子供が等分に相続を受ければ、1人当たり250万円の相続となります。

しかし、子供が1人しかいなければ1,000万円全てが1人に相続されることとなります。これにより、経済格差の固定化が進んでいくのです。

トマ・ピケティとはどのような人物なのか

トマ・ピケティとはどのような人物なのか

ここまで『21世紀の資本』の内容について解説をいたしました。

それでは、その著者であるトマ・ピケティとはどのような人物なのでしょうか。ピケティは、膨大なデータを基に、政府が積極的に経済格差を是正しなければならないと主張しました。ここでは、ピケティに経歴や経済格差論ついて解説いたします。

トマ・ピケティの経歴

トマ・ピケティは、経済的不平等を専門とするフランスの経済学者です。特に歴史的観点からの研究をしており、パリ経済学院を設立したことでも有名です。

パリ郊外のクリシーに生まれたピケティは、パリにあるリセ・ルイ=ル=グラン(中等教育機関)、国立高等師範学校(高等教育機関)、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(大学)にて勉強に励み、経済学への関心を深めていきました。そして、22歳のときに富の再分配の理論研究を博士論文として提出し、異例の若さで経済学の博士号を取得しました。ピケティは、理論的かつ歴史的に経済的不平等を主張し、経済学界で高い評価を得ています。

トマ・ピケティが主張した経済格差論

トマ・ピケティは経済格差を大きく2つに分類しました。

1つ目は、不労所得により生活している人の資産が加速的に増えていくことによるものです。先述のとおり、資産運用による不労所得者はどんどん豊かになっていき、労働者は低賃金により雇われるという構図です。アダム・スミスは労働生産によって国富が増し、各人が利己心によって仕事をすることでみんなが豊かになると主張しました。しかし、ピケティは「経済成長は経済格差を生み出すもの」であると考えました。

2つ目は、結果至上主義に基づく’超’能力主義によるものです。超能力ではなく、”超”能力主義です。つまり、労働によって富裕層に成り上がることは余程の能力がなければ不可能であるということです。世の中の富の半分以上をトップ1%の富裕層が保有しているというように、抜群に秀でた才能がない限りは莫大な資産相続によらなければ富裕層にはなれません。

トマ・ピケティの『21世紀の資本』に対する賛否について

トマ・ピケティの『21世紀の資本』に対する賛否について

経済学界に大きな影響を与えた『21世紀の資本』ですが、賛成意見のみではなく反対意見も多く存在しています。ここでは、トマ・ピケティに対する賛否の意見を紹介いたします。

賛成意見

賛成意見としては、やはり「小さな政府論」ではなく「大きな政府論」を肯定するものが多く、富裕層の資産は積極的に中間層以下に配分されるべきであるという考えが強いです。特に先進国においては少子化の加速に伴い、ますます経済格差が広がっているため、累進的な富裕税を導入するべきだと声が上がっています。

反対意見

反対意見としては、資本家のことを楽して収益を上げる不労所得者として扱っているが、そこに至るまでのリスク等については触れられていないというものがあります。また、富裕税の考え方はそもそも資本主義におけるやり方ではないと否定する声も上がっています。

他には、富裕税を導入したところで富裕層はあらゆる手段を使って多くの収 益を得ようとするため、経済格差を縮小させる効果は薄いという意見もあります。

トマ・ピケティの『21世紀の資本』についてのまとめ

いかがでしたか。経済学というとなんだか難しい学問であると感じる人が多いかもしれませんが、実は私たちの生活にとても身近な話であり、イメージしやすい学問であります。トマ・ピケティの主張に対しては賛否両論が飛び交っていますが、現代経済学に大きな影響を与えたことは間違いありません。

2020年の日本における富裕層(保有資産1億円以上)は約2.4%であるため、この記事を読んでいるほとんどの人は富裕層ではないと思います。

資産運用を行わなければどんどん貧しくなっていくということは、私たちの生活に当てはめて考えると、より一層現実的に考えることができます。これを機に積立NISAやiDeCoなどを使って、資産形成を試みてはいかがでしょうか。

茶もふ&大山俊輔