サピエンス全史を読むか悩んでる人
- サピエンス全史っていい本だと聞いたけど難しそう
- とりあえず、要約を読んでから判断したい
- 認知革命ってなに?
この記事では1200万部突破の世界的なベストセラー、『サピエンス全史』の大事なポイントを10分で解説します。『サピエンス全史』は2016年に出版され、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリによって書かれました。
”人類社会はどうやって発展してきたの?”という誰もが知りたい謎に鋭く迫っている歴史的名著ですが、如何せん、文字数が多くて読書が好きではない方は難しい、あるいは、基礎的知識がなくてつまらないと感じてしまうそうです。
サイト管理人/対談:大山俊輔
この記事では『サピエンス全史』の要約をまとめた上で、読書苦手の人でもこの名著を読んでみようかな!?と思っていただけるキッカケとしたいと思っています。『サピエンス全史』は難しい、つまらないと思った人も、要約を理解した上で読めばきっとどんどん読み進めていきたくなることでしょう。
目次
”虚構”を生み出した認知革命とは?
出典:https://28clinic.jp/kumagaya/blog/2020/02/13/進化の過程/
この記事では、『サピエンス全史』の中でも最大のエッセンスとなる以下の3つの革命を中心に解説を加えていくことにします。
その3つの革命とは、下記3つの革命です。
- 認知革命
- 農業革命
- 科学革命
これら3の革命が人類史のターニングポイントであると看過しています。これは、どういうことでしょうか?
まずは、最初の革命である「認知革命」について解説をすることにします。
1: 認知革命 – 虚構の力とは?
本書でとりわけユニークなのは認知革命についての解釈です。
約7-8万年前に起こったとされる認知革命とはいったいどのようなものでしょうか?
卓越した頭脳を武器に、地球上でかつてないほど繁栄した文明社会を築き上げてきた、われわれ人類。
でもよく考えてみれば、賢い生き物はなにも人間だけではありませんよね?
チンパンジーなど霊長類の他、イルカ、ゾウ、トリなども結構賢いです。
マネをしたり、言葉らしき音を発したり、数を数えたり、絵を見分けたり、絵を描いたり…ときには人間以上の知的能力を発揮します。
サイト管理人/対談:大山俊輔
「脳が地球上に現れてからの数億年間、すべての脳は永遠の現在に捕まっていた。今日でもほとんどの脳はそうだ。だが、わたしやあなたの脳はちがう。200万年から300万年前に、われわれの祖先が、『今、ここ』から大脱走をはじめたからだ……」(ダニエル・ギルバート『明日の幸せを科学する』より)。
多くの動物、そして、初期人類とホモ・サピエンスを分け隔てるもの。そして、ヒトをヒトたらしめているものは何でしょうか?
想像力ですね。
川、木、ライオンなど自然界の物質以外のもの、
たとえば文化、国、宗教など抽象的な存在を信じることができるのは人間 – 特にホモ・サピエンス – だけなのです。
想像力の起源は古く、いにしえの洞窟からライオンとヒトが融合した彫刻も発見されています。
人類のみが持ち得た、そのような”虚構”を信じる力。
その認知の力こそが文明を飛躍的に発展させた、というのが著者の仮説です。
虚構が生み出した貨幣
端的な例として、著者は貨幣を例に挙げています。
そもそもお金、貨幣とはなんでしょうか?
貨幣は信用を具現化したものとされています。
例として、お店に物を買いに行くことを考えてみましょう。
当たり前ですが、買う人と売る人がともに「お金=価値があるもの」という前提を信じていないと、取引は成立しませんよね。
貨幣の実体はしょせん金属か、紙切れに過ぎません。
それらを”価値あるもの”として信じ込めないと、貨幣経済は成り立たないのです。
一方、いくら賢くても、動物が扱えるのはせいぜい実用的な道具程度です。
民主主義・資本主義・共産主義と宗教
信じるといえば神や仏、すなわち宗教の概念から民主主義、資本主義、そして、共産主義と言った主義主張もやはり人類だけのもの。つまり、信仰を可能にする認知能力を生み出した脳の進化こそ、人類社会成立のカギだというわけです。
とはいえ、ひとくちに人類といってもさまざま。
すでに滅亡した人類の”兄弟”には様々なヒト種があり、今でも化石発掘が続いています。
有名なのはヨーロッパに生息したネアンデルタール人ですね。
一説には、私たちホモ・サピエンスと戦った末に滅びたと言われています。
サイト管理人/対談:大山俊輔
著者の仮説では、ネアンデルタール人など他のヒト種は「虚構を信じる力」を持たなかったゆえに繁栄できなかったそうです。
そのため本書を単なる人類史ではなく、『サピエンス全史』と銘打っているのですね。
2: 秩序と差別を生んだ農業革命
次に、私たちの社会を支える資本主義はどのように生まれたのでしょうか?
本書では約1万年前に始まった農業革命をその起源としています。
初期の狩猟採集社会では食料は基本的に保存が効かず、余らないものでした。
やがてニワトリや小麦など動植物の家畜化と栽培化によって、狩猟採集社会から農耕社会へと転換。
その結果、生産性は飛躍的に向上し、爆発的な人口増加が起きました。
でもいいことばかりではありません。
著者によると、農業革命はある種の”詐欺”であり、それ以前の社会よりも大多数の人々は貧しくなったというのです。
というのも人口増加によって逆に食糧難に陥り、また余剰の食糧が生み出されたことで”資本”の概念と格差が生まれました。農耕には広い土地と多数の労働力が必要なので、資本を持つ者と持たざる者に人類は自然に分かれていったわけです。
資本の誕生と共同作業である農業は、大人数の集団になってもいがみ合わない仕組みを必要とします。
それには、互いに協力する体制や秩序が欠かせません。
信じる力を生んだ認知革命は、人々の間に”共同主観”をも作り上げました。
この”共同主観”を基盤とする人類独特のコミュニケーションによって、国家や法律が生み出されたのです。
国家や法律、経済、企業など、実体のない概念を著者は”想像上の秩序”と呼びます。
社会のヒエラルキー(階層)や、人種や性による差別が生まれたのも”想像上の秩序”のせいだというわけです。
農業革命が生んだ「土地と労働力の奪い合い」を引き金とする戦争は絶えず、最終的には地球全体を巻き込んだ20世紀の二度の世界大戦にもつながりました。
現代社会を築き上げた科学革命
認知革命と農業革命がもたらした負の側面。
終わりなき戦争の歴史に終止符をうったのは、第3の革命・科学革命でした。
それまで生産性を高めていた土地と労働力に代わり、高い技術を持ち機械を発明するエンジニアが現れたのです。
統治者・資本家たちは戦争をするより、科学技術に投資する方が割の良いことに次第に気づきました。
こうして人口が爆増し、飛躍的に生産性が高まり、そのうえ平和を維持できる現代社会が生まれたのです。
科学が発達したきっかけは何だったのでしょうか?
科学の進歩が高度な技術発展をもたらすことで、生産性が上がり、生活が便利になり、経済的にも豊かになることは現在誰もが知っています。
ところが、近代以前はそうではありませんでした。
人類の考え方は今と根本的に異なり、”未来は今より良くなる”という思想ではなく、”昔は今より良かった”という思想が支配的だったそうです。
そのような社会では「この世界に人類が知らないことはない」と思い込まれていました。全知全能の神が全てを知っているため、知らないことは聖職者に聞けば教えてくれたのです(それがたとえ間違った知識だとしても)。
聖職者も知らないようなマイナーな知識は、そもそも知る価値がないとされていました。その結果、未知への好奇心は芽生えにくく、人々の知識はいつまでたっても増えなかったのです。
新大陸の発見
新大陸の発見
そんな状況を覆したのは、15世紀のアメリカ大陸の発見でした。
それ以前は地球の全ては分かっていると信じられ、ヨーロッパを中心とした空白のない地図が用いられていました。
ところが大航海時代に入ると未知の島や陸が相次いで発見され、知らない世界があること、地球は丸いことが信じられ始めました。
やがてスペイン王室の資金援助を受けたコロンブスが西インド諸島を発見します。
世界地図のアメリカ大陸付近に空白が書かれるようになると、人々はこぞって未知の世界を探し求めるようになりました。そして未知の世界をより知ろうと、様々な分野の知識を蓄え始めたのです。
このように、人々の考え方を180度転換させたことがその後の科学の夜明けにつながった、と著者は推測しています。
人類の未来予測を知りたい方は『ホモ・デウス』もオススメ
『サピエンス全史』では現生人類であるホモ・サピエンスの発展の歴史をユヴァル・ノア・ハラリの独自の視点から、人類史のターニングポイントとなった3つの革命を通じて解説をする書でした。この大胆な歴史観から、本著は爆発的なヒットとなりましたが、ハラリは続いて『ホモ・デウス』という本を出版しました。
本著は人類の「未来」にフォーカスした作品で、加速度的に科学技術が発展していくとともに、様々な問題が表面化しつつある現代社会において、人類がこの先どこへ向かっていくのか、という視点で考察された書籍です。
「人類の未来はどうなるのか!? | ユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・デウス』のわかりやすい要約・レビュー」の記事では『ホモ・デウス』についてもくわしく解説を加えていますので読んでみようか悩んでいる方は是非、この記事もあわせてお読みくださいね。
人類の未来はどうなるのか!? | ユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・デウス』のわかりやすい要約・レビュー
まとめ
以上みてきたように、「人類史の転換点には認知革命、農業革命、科学革命という3つの革命が登場した」という著者の大胆な仮説が本書の核になっています。
本書は文化人類学から農業、工業、法律、経済、科学など学問領域をあまねく横断し、200万年に及ぶ人類史を俯瞰的に顧みるうえで類をみない解説書です。
こうした歴史的・科学的事実はこれまでも断片的に書かれてきましたが、本書の魅力は、著者の強力な仮説を軸にひとつの読み物としてまとまっていることです。膨大な文献調査に裏打ちされながらも、過去・現在・未来の時間軸に沿って記述されているため、長大ながら非常に読みやすい本になっています。
また、科学革命が貨幣経済と切り離せないことを主張しているのも特徴です。
日本の教育過程は早い段階で文系・理系の切り分けます。
その乖離がときに包括的な理解を妨げますが、本書は人文科学と自然科学の横断的思考を養う助けにもなるでしょう。
学校の歴史の授業は暗記重視なので、往々にして「どうしてそうなったのか?」の説明が足りず、真の理解に及ばないことが少なくありません。
本書はそうした疑問を補完し、新たな見方を提示することで、歴史を学ぶことの面白さを伝えてくれることでしょう!
大山俊輔