「継続は力なり」。古くから日本の諺にあるように、物事をやり抜く力と成功には大きな関連がある事がわかっています。本書の著者アンジェラ・ダックワース氏は達成心理学の研究において、やり抜く力の大切さを突き止めました。
あこ
本記事では、TEDのプレゼントークが2400万回再生されたアンジェラ・ダックワース著、『GRITやり抜く力』についての要約・レビューとしてまとめました。わかりやすく徹底解説していますので、これから本書を手に取ろうとする方にオススメです!
それでは解説に移って参りましょう!
目次
著者アンジェラ・ダックワース氏について |『GRIT – やり抜く力』のある人はこんな人におすすめ
著者アンジェラ・ダックワース氏はペンシルベニア大学心理学部の教授であり、GRIT(グリット)=やり抜く力の研究の第一人者です。
著者アンジェラ・ダックワースについて
ハーバード大学を優秀な成績で卒業し、公立中学校の数学教員になりますが、行動心理学をより極めんとする志から心理学の世界に戻り、オックスフォード大学で修士、ペンシルベニア大学では博士号を取得します。
人々がそれぞれの分野で成功するには「才能」よりも「やり抜く力」が重要であることを科学的に突き止め、2013年にはノーベル賞にも匹敵するアメリカの栄誉ある賞・マッカーサー賞を受賞しました。そんな彼女の教育界を震撼させたGRITに関する膨大な研究と、導き出されたオリジナリティ溢れる考察の詰まったのが本著です。
GRIT(グリット)とは?
GRIT(グリット)とは、まさに副題の通り「やり抜く力」。本書の著者であるアンジェラ・リー・ダックワース教授が提唱した概念で、下記の4つの単語の頭文字を取っています。
- Guts(ガッツ):困難に立ち向かう「闘志」
- Resilience(レジリエンス):失敗してもあきらめずに続ける「粘り強さ」
- Initiative(イニシアチブ):自らが目標を定め取り組む「自発」
- Tenacity(テナシティ):最後までやり遂げる「執念」
『GRIT – やり抜く力』のある人はこんな人におすすめ
この本はどのような人におすすめです。
- ビジネスや勉強、起業等において、成功者のノウハウを知りたい方
- 何か目標達成に向け、ほんの少し背中を押してもらいたい方
- 自分の諦め癖を解消し、やり抜く力を身に付けたいと考えている方
- 子供のやり抜く力を引き出したいと考える熱心な親御さん
それでは、ここからは本著についてより詳しく解説していきます!
やり抜く力のある人は成功する
アメリカの士官学校の5人に1人は脱落する
ご存知でしょうか。アメリカ陸軍士官学校・ウェストポイントの士官候補生の5人に1人は卒業を待たずに中退してしまいます。日本で言う自衛隊みたいなものですね。この過酷な訓練を耐え抜けるのはどんな人なのでしょうか。
アンジェラは博士課程2年の時に研究を開始します。
あらゆる分野のエキスパートにインタビューを行ってみると、大きな成功を収めた人は並外れて粘り強く努力家だということ、自分が何を成功させたいか方向性も定まっていることが分かりました。
グリット・スコアの高い人、低い人
彼女はやり抜く力を測るテスト「グリット・スケール」を開発し、ウエストポイントの士官候補生を対象に実施しました。すると成績優秀な士官候補生ほどやり抜く力が高いとは限らずに、脱落せず訓練を耐え抜いた人は如実にグリット・スケールの数値(グリット・スコア)が高い事が判明しました。
サイト管理人:大山俊輔
同様に、あるリゾート会員権販売会社や数千名の高校二年生、アメリカ陸軍特殊部隊グリーンベレー、伝統的な英単語力の競技・スペリングビーを対象としてスコアを測ってみても、同じ結果が得られました。
成果を出せる者は総じてやり抜く力が強いことが分かったのです。
才能の有無ではなく「情熱」と「粘り強さ」が大切
何かができる、できないを「才能」の有無で決めがちな私たちにとって、これは衝撃の事実です。アンジェラはやり抜く力は「情熱」と「粘り強さ」の二つの要素でできていると考え、才能、努力、スキル、達成の4つの要素を次のように関連づけました。
才能(上達の速さがあること) × 努力 =スキル
スキル × 努力 =達成(成果)
上記の方程式で言うと「達成」を得るには「努力」が2回影響します。才能つまりスキルが上達する速さは大事ですが、努力はその2倍重要だという事です。ここでいう努力とは、一日にどれほど大量にトレーニングするかではなく、くる日もくる日も「今日も頑張ろう」と練習に励む事を意味しています。
才能があるならば努力によってスキルとなり、さらに努力を重ねることで初めて様々なものを生み出す事ができるのです。
努力をしなければ才能は宝の持ち腐れ、努力をしなければスキルも頭打ちでしょう。
努力の多さの重要性をお分かりいただけたでしょうか。
やり抜く力の強い人とは?
では、やり抜く力の「鉄人」とはどういった人たちなのでしょうか。
やり抜く力の強い人は、自分にとっての究極の目標は、自分という枠を超えて人々と深く繋がっていると考えているようです。
アンジェラは大学3年の時、恵まれない子供たちに指導を行う社会奉仕活動「サマーブリッジ」への参加を決めました。この活動で生徒と教師の出会いには、生徒にとっても教師にとっても一生を変えるような力があるのかもしれないと感じ、「子供たちの可能性を引き出して、本人たちが思っても見なかった大きな目標を達成する手助けをしたい」強い思いが、教師、そして心理学者のキャリアへ彼女を導きます。
アンジェラ自身、究極の目標を見つけ出しているのです。
また、やり抜く力の強い人は、物事を楽観的に受け止め、どんな出来事からも何かしら学べると考える傾向にあるようです。
アンジェラとキャロル・ドウェックの共同研究の例を紹介しましょう。
2人の研究によると、「成長思考=人間は変われる、成長できると信じている人」は、自分の能力をより伸ばすことができ、やり抜く力が強いと分かっています。成長思考は過去にどのような成功や失敗を経験してきたかや、親や教師など権威を持つ立場の大人がどのような反応を示したかによって決まります。
「やり抜く力」を発揮するためには、「人は成長する」という認識が欠かせないのです。
TEDトークの中でアンジェラはこの認識をgrowth mindsetと呼んでいます。ではgrowth mindsetを手に入れるためにはどうしたらいいのでしょうか?
知能や才能は固定されず努力によって向上すると認識する事、楽観的に考える練習をすること。この2点が、しなやかな成長思考を育むのに役立ちます。
やり抜く力の伸ばし方
やり抜くための目標を絞る2つのメソッドをご紹介しましょう。
1.ピラミッド
成功するにはやるべきことを絞り込むとともに、やらないことを決める必要もあります。具体的な個々の目標を一つに束ねるものが「人生哲学」です。
日々の「やることリスト」のような目先の目標がピラミッドの下位にあるとすれば、その上位にはより重要な目標を並べていく。
やり抜く力が強い人は、下位と中位の目標のほとんどは、何らかの形で最上位の目標と関連しているという結果が出ており、人生哲学がしっかり定まっていると言えます。
2.「目標達成法」
優先順位を決めるための3段階方式です。
1.仕事の目標を25個紙に書き出す
2.自分にとって何が重要かをよく考え、最も重要な5つの目標に○をつける(5個を超えないようにする)
3.丸を付けなかった20個の目標を目に焼き付けた後、それらには今後関わらないように心に留める。最も重要な目標に集中できなくなることを防ぐため。
以上の2つの方法により、自分の人生哲学を見出し、見切りをつけるべき「重要度の低い目標」と、もっと粘り強く取り組むべき「重要度の高い目標」の違いをしっかり認識するにつれて、やり抜く力は伸びていきます。
やり抜く力を強くする4つのステップ
やり抜く力が鍛えられるには次の順番で強化されていきます。
1:興味:自分のやっていることを心から楽しめば「情熱」が生まれる。
2:練習:一つの分野に深く興味を持ったら、脇目もふらずに打ち込む。また、慢心しない。
3:目的:自分の仕事は他の人々にも役立つと思えてこそ「情熱」が実を結ぶ。
4:希望:希望は、「やり抜く力」の最終段階だけでなく、あらゆる段階に欠かせない。時には困難にぶつかり、不安になっても、ひたすら自分の道を歩み続ける姿は大変必要。
あこ
やり抜く力を伸ばす上で大切な事
やり抜く力を伸ばすためには以下の2点が重要です。
① 「情熱に従って生きる」ようにする
これらの質問に答えてみてください。
「私はどんなことを考えるのが好きだろう?」
「私が本当に大切だと思っているのはどんなこと?」
「何をしている時が一番楽しい?」
「これだけは耐えられないということは?」
ぼんやりとした方向性を見つけたら、興味のあることは積極的に試してみましょう。うまくいかなかった場合は、取り消したって構いません。
「発見」できたら次に「発展」させていきます。常に疑問を持って答えを探し、どんどん興味を掘り下げていきます。ここで自分と同じ興味を持っている仲間やメンターと近づきになって経験や知識を共有していけば、ますます好奇心旺盛になれるのです。
② やっただけ成果の出る「成功する練習方法」を実行する
エキスパートたちは総じて「意図的な練習」を行っています。
「意図的な練習」とは何でしょうか?
1:ある一点に的を絞って、ストレッチ目標(高めの目標)を設定する。
この際、あえて自分がまだ達成していない困難な目標、つまり自分の弱点の克服に努めるようにする。例えば、競泳でコーチに100mを10本、目標タイムは1分15秒でと言われた場合、まずコーチの指示通りに泳ぎ、次の練習では自分で目標タイムを1分14秒に設定するなど。
2:しっかりと集中して、努力を惜しまずに、ストレッチ目標の達成を目指す。
うまくできなかった部分のフィードバックをもらうと良い。
3:改善すべき点が分かった後は、うまくできるまで何度でも繰り返し練習する。
練習の長さよりも、「どんな練習をしているか」が大事な点で、他のどんな練習よりも「意図的な練習」は絶大な効果を発揮します。
しかし「意図的な練習」は辛いことも多く、どんなに頑張っても1日3〜5時間が限界です。これは努力する価値のあることで、頑張ればきっと習得できると心に留めましょう。
さらに、「意図的な練習」の効果を最大限引き出す方法としてアンジェラは優秀な人の姿勢を真似する事や、「意図的な練習」を習慣化しやすい時間や場所を見つける事等を挙げています。
子供のやり抜く力を伸ばす方法
他人、例えば子供のやり抜く力を伸ばしたい時は、どうすれば良いのでしょうか?それは、両親が「始めたことは最後までやり遂げる姿勢」を子供達に見せることです。
辛い時諦めずに続けられるかを左右する自尊心は、周りの人たちこそ持たせられることができ、「やり抜く力」の強い子を育てるのは、子供に厳しい要求をしながらも支援を惜しまない育て方です。
親自身が努力家で、挑戦する時には全力を尽くし、遠い目標に向かって努力する姿を子供に示せば、自然と伝わるのだそうです。もし自分の子供のやり抜く力を引き出したいなら、まず自分が人生の目標に対してどれくらい情熱と粘り強さを持って取り組めているか、子供が自分を手本にしたくなるような育て方をしているだろうか、自らに問いかけてみてください。
また、課外活動への参加が大きな鍵となります。課外活動を積極的に行っている子供たちは学校の成績や自尊心の高さなど様々な点で優位であると研究から分かっています。
「どんな活動に打ち込んだか」よりも「最後までやり通した経験」が肝心で、アンジェラが提唱するのは、「青年期に何らかの活動を最後までやり通すことは、やり抜く力を要するとともに、やり抜く力を鍛えることにもなる」という事です。課外活動に取り組んでいくうちに周りの人から多くのことを学び、その中で人格が形成されていくのです。
まとめ
以上が本書の要約になります。いかがでしたでしょうか。やり抜く力は年齢を問わず如何様にも伸ばす事ができるのです。
本書で解説されていたように、「興味を掘り下げる」「意図的な練習を行う」「自分の取り組んでいることが、自分よりも大きな目的とつながっていることを意識する」「growth mindsetを持つ」などの方法は自分の内側からやり抜く力を伸ばす助けになるでしょう。
もう一つは外側から伸ばす方法です。親、教師、メンターなど、周りの人々が、個人のやり抜く力を伸ばすために重要な役割を果たします。
グリットスケールと人生への幸福度は見事に相関関係にありました。やり抜く力を伸ばさない選択肢は、どこにあるでしょうか?本要約を読んで「何かをやってみよう」そんな気持ちが少しでも湧いていただけたならば幸いです。
あこ