大山俊輔
さて、当社も6月からスクールの営業を再開しました。
かなり人々の動きはこの2ヶ月近くの行動自粛で鈍っているだろう。そう思って、広告も控えめにスタートしました。結果としては、まだまだ動きは鈍い印象ですが、最悪ではなかったかなぁという印象です(とはいえ、採算ラインからはまだまだ遠いレベルの回復です)。
この2ヶ月のスクール休業期間、リモートワーク、サービスのオンライン化をしたりして様々なことを検証してみました。
その結果、思ったのはこんなことでしょうか。
既存顧客に対して思ったこと
② スタッフや講師(レッスンパートナー)がお客さまと繋がりを保てるのは良かった
すでにお会いしたことがあって、人間関係のある者同士のオンラインでの会話はまぁ悪くないのかなぁという印象です。ただ、やはり人間というのは言葉を声に出してコミュニケーションするだけではなく、それ以外の様々な要素 ー 顔の表情、動き、からだの仕草 – 全てでコミュニケーションをとっているので、すでに知った者同士ですら伝わらずにまごまごしている場面をなんどか見かけました。
ということで、緊急事態宣言が解除されて真っ先に対面でのミーティング復活を要望されたのは、ITチームでした(笑)。普段、ノマドやオンラインで働いている人ほど、月に数回のミーティングでは、現場に確認して一気に解決したいもの。オンラインだけだと、こうした細かなニュアンスをまとめて解決できず、かえって手間がかかることが判明しました。
うちの会社じゃないですが、世間でリモートワーク化を推奨してるおっさん、おばちゃんたち。
従来から事実上、ノマド的な働き方をしていたエンジニア、デザイナー、ブロガーさんなんかは別として、大部分はおそらくホントのリモートワークしてないんじゃないかと思います。はじめて、Slack使ってたのしー、とか、誰にも見られない気楽さに慣れちゃったり・・・。でも、商売は、その人が生み出した付加価値が給料の原資です。果たして、そんな気楽なリモートワーカーのどれくらいの人が付加価値変わらず仕事できてるんだろ・・・。ってか、思ったより仕事好きじゃない人が多いんだろうなぁ。
日本的リモートワーク~人を組織にしがみつかせ、愛社精神を奪うおままごとシステム
日本のテレワーク論を聞いてるとそう思いますよ。
そんなことを思ってたら、IT企業でもこんなところはリモート早めに解除していますね。
新規顧客に対して思ったこと
やる前から思ってましたが、やはりクロージングを必要とする程度の単価の商品になると、100%オンラインでの商談というのはかなり難易度が高いものです。マニュアルや顧客向けプレゼン資料もかなり作り込んで、直感的に分かりやすいものをつくりましたが、実店舗で話すときと比べて成約率はボロボロでした(笑)。
B.J.Fogg氏
ここで思い出したのが、B.J.FoggのBehavior Model(行動モデル)。
B.J. Foggはスタンフォード大学の”Persuasive Technology Lab”(現在は”Behavior Design Lab”)の責任者。私もサンフランシスコに行った時に、Foggさんのお弟子さんの一人の日本人の方に色々お話を伺いました。基本は行動経済学と脳科学をベースに、私たちが普段接するパソコンやスマフォのUI/UXをどうするのかということをひたすら研究している人です。
主にシリコンバレーのテック系の人たちは彼の行動モデルを使ってアプリ開発などを行っています。実際、私が2年前に参加した”Habit Summit”の主催者、Nir EyalさんもFoggさんの薫陶を受けた一人で、自身の”Hook”モデルの中でFogg氏のモデルを引用しています。
ハビット・サミット – Habit Summit 2018に参加してきました この本、UI/UXをされている方には超オススメです。さて、Foggの行動モデルのポイントはこうです。
B=MAT
(B=行動、M=モチベーション、A=アビリティ、T=トリガー)
つまり、人が行動を起こすには、MとAとTの要素が必要である。
さらに、
Mの6大構成要素
1:喜びを求める 2:痛みを避ける 3:希望を求める 4:恐れを避ける 5:社会的承認を望む 6:社会的拒否を嫌がる
Aの6大構成要素
1:時間 2:お金 3:身体的努力 4:考える手間 5:社会的逸脱 6:ルーティンでない新しいこと
これを理解した上で図にするとこんな感じですね。
これを英会話に当てはめるとこんな感じでしょうか。
A: 始めやすい要素(値段、距離など)
T: 友達が知らないうちに英語が話せてビックリした、など
一般的には、このMとAとTの要素は人によって少しずつ度合いが変わってきます。
特にAでもある値段がちょっと高めですと、そのハードルを越えるのは大変かもしれませんし、一方で、お金に余裕があってもTのキッカケがそこまで強くなければ同様にハードルを越えるのは大変です。
そのため、ここで言うと一般的な英会話スクールのビジネスモデルをそのまま新規で非対面で行うとかなり難しくなります。
そこで、一般的なオンライン英会話のサービスを見ていると圧倒的に「A」の一要素である値段をフィリピンなど人件費の安い国を使うことで落としてクロージングを不要としたビジネスモデルに転換しているわけです。これは、デフレが続く日本ではAの「値段」が消費者の脳内を占める割合が高いため有効です。
ただ、安いということは当然多売をしなければ売上は増えません。
特に英会話ですと、原価側も人間ですのでその売上を増やすために膨大な人を雇う必要が出てきます。人が増えればその分、問題も発生しますので、マネジメントコストがかかります。ここを覚悟するならいいんですが、私はそういう商売はあまり興味ありません(笑)。
その上、同じことを私たちのような実店舗を持つ英会話スクールがオンラインサービスを専業の会社と同じ土俵でやってしまうと、家賃を払って国内で事業をやってる分不利なのは言うまでもありません。
では、どうすればいいか。このFoggのモデルにヒントがある気がしますね。
詳細は秘密です(笑)が、いろいろとアイデアも出てくるものです。
大山俊輔