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偽りの希望シンドローム(症候群)とは?ならないようにするための方法は?

偽りの希望シンドロームとは

大山俊輔

こんにちは。習慣デザイナー・ハビットマンShunです。

「偽りの希望シンドローム(症候群)」って何?
おそらく、このページに辿り着いた人たちはその解説を知りたいと思ってると思います。

偽りの希望シンドロームはケリー・マクゴニガル氏の大ヒット著書『スタンフォードの自分を変える教室』にも登場する有名な概念です。きっと、この本でこの単語を知った方も多いかと思いますが、昔から心理学ではよく使われている現象です。


私は習慣デザイナーとして、そして、英会話スクール「b わたしの英会話」を運営する立場として今まで8000人以上の生徒のサポートをしてきました。その過程で、お手伝いできた方もいればできなかった方もいますが、一方でお手伝いを最後までできずに去られたお客さまもいらっしゃいます。

後者の方の中に多く見られるのがこの「偽りの希望シンドローム」です。

このエントリではこの偽りの希望シンドロームを習慣デザイナーの立場でゆる~く解説しつつ、今までお手伝いしてきたお客さまのケースを元にどのように対策をすればよいかについてもまとめさせていただきました。

偽りの希望シンドローム(症候群)とは

偽りの希望シンドロームとはわかりやすく言っちゃうと、

「次はきっとうまくいくだろう」

「そうさ、うまくいく(に違いない!)」

と言って、今やってることを諦めて新しいことに手を出す心理的現象をいいます。

英会話で言えばこんな感じです。

1)今年こそ英会話がんばるぞー!とお正月に誓う

2)妄想しながら英会話を勢いではじめる

3)そのうち面倒になって辞めてしまう

4)あのときは忙しかったから仕方ないんだ!と自己正当化してしまう

5)数年後に別の英会話スクールに通いまた辞めてしまう

この繰り返しをする人を英会話スクール難民ともいいます。まさに、偽りの希望シンドロームがフル稼働した人は難民化します。

アメリカでの遺品整理の人気ランキングは?

ダンベル

アメリカなどではおじいちゃん、おばあちゃんが亡くなると遺品の整理をしますがその時に出てくる物ランキングの一位が「ダンベル」だそうです。

でも、「あ、おじいちゃんが筋トレしてるの見たことない・・・」

というのが遺族の偽らざる本音でしょう。

きっと、ダンベルがあるおうちには、他の健康器具も山程遺品として出てくることでしょう。

動画解説はこちら

新年の抱負の実現度は◯%?

多くの人は新年の抱負をたてますよね。

人は、基本的には今の状況を変えたい、変わりたいと思います。
一方で、その変わるために必要な対価(お金、労力)は払いたくないというわがままな生き物です。

2019年こそ英会話(筋トレ、ダイエット、なんでもいいです)。
このブログのエントリは10月後半に書いていますが、まだ行動を起こせていない方はどれくらいでしょうか?

あるいは、起こしたけれどもすでに辞めてしまった方も足してみたらどうでしょう?

アメリカのデータになりますが、新年の抱負の挫折率はなんと・・・・

92%

にもなります。

習慣デザイナーとして今まで多くの方たちを観察している印象では、

・ そもそも妄想したけど行動に移さなかった人:80%
・ 行動に移したけど続かなかった人12%

くらいなイメージです。

変わろうと思うことは快楽、でも、行動に移すことは苦痛

偽りの希望シンドロームが発生するワケ

なぜ、人は偽りの希望シンドロームを持ってしまうのでしょう?

それは、人は変わろうとすることで気持ちが良くなるからです。
今までの理想とは遠い現実の世界の自分とはもうサヨナラ。これから先は、すごい自分になるんだから。

こうして、気持ちが高まり多幸感に包まれます。
実際にはまだ何も着手してない、もしくは、はじめたばかりであるにも関わらず。

偽りの希望シンドロームが発生するワケ

ですが、この多幸感は妄想と表裏一体です。
一時的には気持ちも盛り上がるのですが、その後、現実との乖離に気持ちはダウンしてしまいます。

英会話が話せるようになった自分。ダイエットに成功した自分。

妄想では楽しい姿ですが、実現するためには長いプロセスを通り抜けなければいけません。そう、努力を続けるということです。この現実と向き合うのが嫌で多くの人たちは、今スグ系のものに飛びつきます。

つけてるだけで痩せる。
聴くだけで英語が上手になる。

こうしたキャッチコピーに人が飛びつくのはまさに偽りの希望シンドロームが原因です。

また、なんとかはじめの一歩という行動をとれた人はどうでしょうか

はじめの一歩までたどり着いた人でも、そこから行動が継続できる人は少数派です。新年の抱負で1月にダイエットをはじめたはずが、5月にはすでに体重アップなんて方も多いのではないでしょうか?

「こんなはずでは・・・」

という気持ちが頭をよぎりますが、そのうちこう考えるようになります。

「そもそもダイエットなんて自分には関係ない」
「忙しいんだから仕方ないよ。」

偽りの希望シンドロームが破壊的なワケ

偽りの希望シンドロームは人に一時的な快楽を与えてくれます。

それは、「うまくいった姿」に対しての偽りの妄想です。残念なことに、この妄想を現実のものとするためには、するべきことをするしかありません。

ですが人は「するべきことをする」ことは嫌がります。お金がかかったり、努力が必要だったり、続ける必要があるからです。

こうして、妄想による一時的な快楽はその後現実との乖離として絶望へとなります。仮にはじめの一歩に成功したとしても、続けることに失敗すれば同じ結果が待ち構えています。

こうして、「変わる」はずっだった興奮は現実に引き戻され、そして、再び同じ妄想をはじめます。

・ 前回うまく行かなかったのは◯◯が悪いからだ・ 次はうまくいくだろう

こうして、前回失敗したことと同じ決意を行います。

「次はしっかりできるだろう」

と。

カナダのトロント大学の心理学者、ジャネット・ポリヴィとC・ピーター・ハーマンのグループはこうした心理的状態を「偽りの希望症候群」と名付けました。

偽りの希望シンドローム対策について

ここでは、偽りの希望シンドロームにならないようにする方法を紹介します。わかりやすいたとえとするため、ここではダイエットを行う人を例に考えてみます。

たとえば、身長が170cm、体重が85kg、体脂肪率が23%の人がいたとします。

ここで、この人が「今年こそダイエット!」ということで、下記のような目標を新年の抱負でたてたことを想像しましょう。

・ 体重を70kgに落とす・ 体脂肪率を15%に落とす

はたしてうまくいくでしょうか?

私の予想ですが、80%の確率でこの人は行動に移しません。仮にジムに入会したとしても2ヶ月後には幽霊会員になってしまっていると思います。

そして、そこから更に数カ月後ジムを退会して、来年のお正月に同じ事を考えながら別のジムのホームページを眺めていることでしょう。

これが偽りの希望シンドロームです。

では、どのようにすればこの偽りの希望シンドロームを防げるのでしょうか?

正しい目標設定を行う

人間の脳はわがままです。

一番、脳にとって楽しいのはその結果が手に入る姿を妄想しているときです。実際に手に入れてるのではなく、手に入ってる姿を妄想しているときなのです。

特に、目標値が高いほどアドレナリンやドーパミンなどの脳内ホルモンの分泌も多くなりますので、脳はその妄想の姿に向けてハッピーになります。

ですが、前述の通りこれは破滅をもたらします。

ではどうするかと言うと、脳に現実的な目標を教えることなのです。目標設定の鉄則ですが、下記の3つが大外れしなければ脳の多幸感も少なく、現実的なスタートを切りやすくなります。

1) 目標は手が届くところで設定する
2) その目標達成に必要な行動を分解して決める
3) 達成までの期限を(できれば1年以内で)決める

これで、大分変わりますよ。

上記に基づけば先ほどのダイエットの話は下記のようになります。

1) 今年は5kg体重を落とす
2) 一日の摂取カロリーを1400kcaまでにする
3) 有酸素運動を週に2回、1回3km行う
4) 3ヶ月ほど頑張ってみる

先程の無謀な目標より期限が見えて、目標も現実的。そして、その目標達成のために行う行動(食事、運動)も具体的なので脳も妄想で勘違いすることがなくなりますね。

結果ではなく行動(プロセス)を計測する

次に、行動に移せているときは計測するKPIを結果にする前に行動(プロセス)にすることです。

ダイエットであれば一番気になるのは体重や体脂肪率です。

定期的に計測するのは良いのですが、毎日体重計に乗ったところで大きな変化とはなりません

むしろ、体重計にのって焦って無茶な食事制限をしてしまったり、1回だけむやみな運動をしてしまうと続けるためのハードルが高まってしまい、結果として、辞めてしまうリスクが高くなります。
ここで大事なのは計測する対象を結果ではなくて、その結果に繋がるプロセスにすることです。

例えば、ダイエットであれば先程の目標設定に出てきたような1週間の運動距離であったり、1日の摂取カロリーを継続的に記録することだけに注力するのです。

もちろん、定期的な体重計測で予想より体重が落ちていないということもあるでしょう。ですが、そのときは簡単な答えです。

今やってることを引き続き続ければ、必ず、目標値にいつかは到達します。こうしていれば、現実とのギャップは苦にならず、むしろ、解決すべき近い将来の目標として見据えることができるのです。

継続する(習慣化)= 続けることを当面の目的とする

アメリカの教育学者でもあるジョン・デューイはこのような言葉を残しています。

人間は理性の生き物でもなければ、本能の生き物でもない。
人間は習慣の生き物である。
(ジョン・デューイ/アメリカの哲学者・思想家・教育者)

 

多くの人はモチベーションや意思の力で自分を変えると思っていますが、結局のところ、いちばん大事なのは習慣、つまり、続けることなのです。

正しい目標設定を行い、正しいプロセスを、正しく継続する

 

これこそが、偽りの希望シンドロームに振り回されずに自分の望む姿になるための黄金率なのですね。

ですので、逆説的ですが新しいことに挑戦したはじめの3週間位の間は結果を期待せず、まず続けることそのものを目的にすることをおすすめします。

例えば英会話を学ぶ方であれば、長期的なゴールではなく、

 

・ 毎週水曜日の夜は英会話スクールに通う時間にするとか
・ 週2回30分だけ家で学んだ単語やフレーズを復習する

といった活動を続けることそのものを目的化するのです。

 

まとめ – 結局のところ続ければ人は変われる

私は今まで実に多くのお客さまと出会ってきました。

中にはテレビや雑誌に出てくる著名な方からごくごく普通の方まで、お手伝いしてきた方は千差万別ですが、上達した方に共通することが一つだけあります。

それは、粛々と続けることに成功したことです。

逆に言えば、どんなに潜在能力がある方であろうが、続けられない方は英会話は上達しません。そして、再び、偽りの希望シンドロームに今も囚われているかもしれません。

習慣は能力ではなくコツです。

b わたしの英会話のスクールに入会されたお客さまにプレゼントしている「b 習慣化メソッド」は私の習慣研究の集大成ですが、そんなに難しいことは書いていません。ただ、続けるためのコツをまとめて紹介しているだけです。

私は壊れたスピーカーのようにいつまでもこのことを言いながら、少しでも多くの人の「変わる」お手伝いをしていきたいなぁと思います。

興味のある方は、私のYouTubeチャンネルでもこうした習慣関係のテクニックを紹介してますので、是非、ご訪問&チャンネル登録をしてみてくださいね。

https://www.youtube.com/channel/UCcH2iZyQj8M7MxiZDlhYpDA

ハビットマンShun