大山俊輔
さて、全くそのまんまのタイトルで名著があります。
これです。
私もこのコロナ騒動で4月・5月と会社をお休みしてましたが体重は2kg、いえいえ、それは表向きの話です。
実は、3kg近く増えました(笑)。
おまけに、会社は休業状態でも家賃はダダ漏れだし、借り入れやら助成金申請やらで結局三密三密うるさい時期にずっと三密の場所にいましたよ。おかげさまで、ストレスマックスの2ヶ月でした。
で、ですよ。
私のことを良く知ってる人はジムで一応筋トレ頑張ってるのご存知だと思います。
ジムも2ヶ月休業でしたが、その間はオンラインレッスンで自重トレするなど、一応習慣がなくならないように努力はしていました。
ですが、このコロナ騒動とは別にしばらくサボってたことがありました。
それは、有酸素運動です。
ジムが再開すると同時に、通常通りのメニューに戻ったのですが今回は実体験として有酸素運動が脳に良いことを見事に体感しました。
そこで、このエントリでは脳に良いこととして前回紹介したマインドフルネスに加えて、有酸素運動も脳にいいですよ、って話をしたいと思います。
目次
多くの人が”Stay Home”ストレスで脳に支障をきたす
脳はストレスで萎縮する
コロナでストレスたまりまくってた人。
その人たちは、間違いなくこの数ヶ月で脳に悪いことが起きています。
そう。
脳には可塑性があります。
可塑性とはつまり、一度ついた形が柔らかいプラスチックのように定着すること。
硬めの低反発枕のイメージです。
脳には可塑性がありますが、それはすなわち、いいことも悪いことも定着するということです。
今回のコロナの最大の問題はなにでしょうか?
間違いなく、ストレスです。
なにせ毎日のように流れるネガティブなニュース。
そして、ワイドショーはさらに不安を煽るようなスパイスをドサッとかぶせてきます。
テレビを見なけりゃいいのですが、実際の多くの人の情報収集はこんな感じだったようです。
出典:http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/ldi/2020/wt2004g.pdf
このデータを見ていると絶望しますねぇ・・・。
まだ、こんなにテレビ見てんのかぁ。。。
これだけテレビ見てれば、コロナうつも増えるし、選挙もテレビというメディアを押さえたモン勝ちと政治家が思ってしまうのもやむを得ないことです。
では、これだけストレスが溜まるとどうなるでしょう?
不安が不安を煽り脳ではストレスホルモンであるコルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンなどどばどば状態ですね。
ネガティブなニュースが引き起こすストレス反応
私もテレビのこの手口はよく知ってるつもりでまったく見なかったのですが、では、ネットが良いかと言うとこれまた微妙です。ネットニュースからYouTube動画まで3月、4月、5月はネガティブ系ばかりでした。
結局、ユーザーがネガティブな情報を求めればそれを提供するので仕方ないです。
しかし、そんな鬱なニュースばかり見ているとどうなるでしょうか?
脳では、ストレスホルモンがどぱどぱ出てしまった状態が長続きします。
いわゆる、「闘争・逃避反応」が起きてしまいます。
視床下部は自律神経の一つである交感神を興奮させっぱなし、動悸も早くなり、呼吸も浅くなります。
血糖値も上がりがちで、こうなってしまうと、大脳辺縁系や視床下部といった脳の原理的な部位は、脳のCEOたる前頭前皮質がつかさどる自己コントロール機能を混乱させて、動物的、情動的に行動を支配しようとします。
マスクが買えないと薬局の店員さんにブチ切れる人。
あるいは、立場や置かれた環境が違う人同士で憎しみ合ったり罵詈雑言を浴びせ合う。
こんな現象が世界中で見受けられました。
マインドフルネスとは~初心者なりに理解したその効果とやり方かなりラフな絵ですが人間脳たる前頭前皮質に対して、大脳辺縁系、視床下部、そして、脳幹などはどちらかというと爬虫類とも共通する原始的な部分。つまり、生命の維持を優先するように、脳が動物モードになってしまう状態です。
この動物モードを「闘争・逃避反応」と呼びます。
こうした「闘争・逃避反応」は人間がアフリカで他の動物たちと併存していた時代には非常事態に備えてるために必要なとても重要な機能でした。
しかし、「闘争・逃避反応」でいる時間はごくわずか。
実際にライオンと戦ったり、あるいは、逃げたりして生命の危機的状況が終われば、暴走して動物モードにしていた大脳辺縁系や視床下部、交感神経などは落ち着きを取り戻します。そして、CEOの前頭前皮質は指揮権を取り戻して冷静になり、明日、明後日のことを考えるようになります。
「闘争・逃避反応」が長続きすると脳はどうなるか?
しかし、コロナの問題はちょっと異質です。
それは、ライオンと違ってダラダラとストレスが長続きするのです。
こうなると脳は常に「闘争・逃避反応」状態で数ヶ月続くことになります。
すると、どうなるでしょうか?
行動は刹那的、攻撃的になります。
いわゆる、「どうにでもなれ効果」により、食べすぎ、飲みすぎ、そして運動しなさすぎといったろくでもない状態になります。
また、同時に白血球やリンパ球といった免疫系の細胞が減少することも報告されています。
コロナを防ぐために”Stay Home” – 自宅で閉じこもっていたはずが、妙に風邪っぽいな、と思った方は自分の免疫系が元気を失っている可能性を疑っても良いと思います。
特に、初期のがん細胞などをやっつけてくれるNK(ナチュラルキラー)細胞などはストレスと密接に関連しています。
漫画『はたらく細胞』に登場する擬人化されたNK細胞、強そうですね(笑)
有酸素運動が脳に良い理由
マインドフルネス(だけ)では駄目な理由
さて、そこで有酸素運動です。
前回、別のエントリでまとめましたようにマインドフルネスもこうしたストレスと向き合うにはドンピシャな対処法の一つです。
しかし、有酸素運動とマインドフルネスでは全く異なる形で脳に良い影響を与えます。
マインドフルネス(瞑想)は、「今、ここに気持ちがある」という気づきの状態を意図的に作り上げる訓練です。
基本、身体は座るなり寝るなり、動かすとしてもマインドフルネスウォーキングのようにゆっくり歩くに留まります。
今、自分の気持ちが「ここにある」という状態を作り出すのがマインドフルネス。
まさに、先ほどお話しをした脳のCEOでもある前頭前野を鍛えるにはマインドフルネス瞑想はまさにもってこいです。
実際マインドフルネス瞑想の原点とも言える、瞑想を行っているベテラン層の前頭前野の灰白質が分厚くなることが実際の研究で証明されています。
一方で、有酸素運動は違う形で脳に良い効果をもたらします。
その効果は主に、脳で分泌される神経伝達物質の調律を行う形で現れます。
そもそも運動不足の上に”Stay Home”が与えた問題
私たち現代人は圧倒的に運動不足です。
人類の現在の体躯・脳のモデルは現生人類が誕生した30万年前からほぼ変わることがありません。
200万年前にホモ属(このホモ属はネアンデルタール人など現生人類以外の人類を含む)が登場してから農業がはじまった1万年前までの間、私たち人類は基本狩猟生活でした。食料を探す間は歩き、走り、そして、哺乳動物を仕留めたり、どんぐりなどを採集して食べていました。一般的に、その時代の人類は1日に8km~16km歩いていたと言われます。しかも、食べていたのは主に、動物性たんぱく質と低GIのどんぐりなど。
今のように炭水化物たっぷりの食事と1日の歩行距離が1kmもないような生活とは違うのです。
明らかに、私たち現生人類とそのご先祖様は同じスペックの身体と脳を持っているにも関わらず、食べるものも運動量も圧倒的に違ったのです。
Stay Homeによる行動習慣の悪化はこの問題に拍車をかけました。
有酸素運動が脳にもたらす効能
血流増加による脳スッキリ効果
運動をすれば当然心拍数が上がります。
心拍数があがれば、心臓から送り出される血液が脳により多く流れ込むわけですから頭がスッキリするのは当然ですよね。
また、血流が増えるとセロトニン、脳由来神経栄養因子(BDNF)などが生成されます。
セロトニンといえば、気分を安定させるリラックスホルモンです。
特に、短期間高強度(最大心拍数の80%程度)を行った後に、低強度の運動をすると血液中にトリプトファンを送り込む効果があります。トリプトファンはセロトニンの前駆体ですので同じように運動後に、気分を安定させる効果があります。
神経伝達物質がベストミックスに
脳には実に多くの神経伝達物質、いわゆる脳内ホルモンが存在します。
その中でも、特に人の意欲、感情コントロールなどに重要なものといえば、セロトニン、ノルアドレナリン、そしてドーパミンです。
実は、脳内ホルモンはすべてが重要ですがどれか1つが過剰に分泌したり不足しても脳に悪影響を及ぼします。
ドーパミンの過剰分泌は依存症に繋がりますし、足りなければ注意力散漫、いわゆるADHDになります。一方で、セロトニンが少なすぎればうつ病になってしまいます。
リタリン(塩酸メチルフェニデート)やプロザック(フルオキセチン)といった薬は、こうした特定の脳内ホルモンに働きかけることで効果を発揮しますが、残念ながら、特定のホルモンを増やすことはできますが、脳全体のバランスを調律することはできません。
うつになって、プロザックを処方するのは確かに安易な話です。
アメリカなどでもこのコロナでの自宅滞在ストレスでプロザックの処方が増えているというニュースを見かけました。
一方、有酸素運動は全く異なる形でこうした神経伝達物質の分泌に働きかけます。
『脳を鍛えるには運動しかない』の著者、ジョン・レイティは「ランニングをするとプロザックやリタリンを少々服用したような効果がある」と言っています。しかも、重要なことは、特定のホルモンだけを増やしたり減らしたりするのではなく、最適な状態に自然に分泌させることがポイントです。
実際、アメリカではADHD持ちの人にスカッシュなどの激しめの有酸素運動を勧める医師もいるそうです。
ニューロンが増える
ストレスは脳細胞であるニューロンを減らします。
実際、ストレスホルモンのコルチゾールをペトリ皿の上のニューロンに注ぐとニューロン間の結合は途切れて、あっという間に死んでしまうそうです。
私が子供の頃は「大人になると脳細胞は死んで衰えるだけ」と言われていました。
しかし、最近の研究でこれが間違いであることが明らかになっています。つまり、ニューロンは後天的に増えます。
このことを、ニューロン新生といいます。
特にニューロン新生は運動と密接に関係しています。
運動を通じて新しく誕生するニューロンは記憶と密接に関係している海馬付近で数多く誕生します。
一方で、酒はニューロンを減らします。
この自粛期間、アルコール消費が増えた方は多いのではないでしょうか?
私も、正直家にずっといたこともあり、アルコール消費は増え夜ふかしの回数も多かったです。
ここらで、運動を通じて減ったニューロンを取り戻したいところです。
まとめ
いかがでしょう?
正直、はじめてのウィルスで”Stay Home”になったのはやむを得ないことだったと思います。
一方で、時間も経過しそろそろ”Stay Home”が引き起こした問題を理解し、日常を回復していく必要もありますよね。
私自身、6月1日からジムを再開しましたが今のところ週4日はジムで、そして、1日は外をジョギングしたっぷり太陽の光を浴びるようにしています。
自宅にこもっていたときは、夜ふかしで睡眠時間も少なく、酒の量も多くなり、朝から少し身体がだるく頭も重たい日が多かったです。
しかし、しっかりと有酸素運動をして酸素をたっぷり身体に取り入れて、そして、複雑なマシンなどを使いこなすことを通じて(ちゃんとアルコール消毒してますよ)運動後にこれほどまでに頭がスッキリとするのかと自分自身ビックリしています。
人類は300万年の歴史で、適切な食事と適切な運動することをデフォルトに最適化された肉体を与えられています。この掟に逆らった生活を長くしてしまうと、当然、脳内ホルモンのバランスが崩れてニキビが出たり、闘争・逃避反応を通じて心拍数が安定しなくなったり、そして、どうにでもなれ効果で今まで培ってきた良い習慣を失ったり、他人にあたってしまったり本来自分が望まないことをしてしまいがちです。
そろそろ、他人に迷惑をかけない範囲で運動をしてみるのも良い時期ではないでしょうか?
ありがとうございました!
大山俊輔(ハビットマン)