大西つねきさんという人がいます。
今は、まだそこまで名前も売れてないので知っている人も少ないと思いますが、この人、きっと何かしでかしてくれると思ってるのです。
今の世界の通貨発行のしくみこそが、世界で起きている格差問題、資本主義、グローバリズムなど様々な課題の根源的な問題である。
そう言ってフェア党という党をひとりで立ち上げた方です。
つい最近まで、山本太郎さんのれいわ新撰組に合流していましたが「命の選別」事件で除名されてまたひとり政党に戻りました。
私も、もと外資系証券会社にいたというバックグラウンドから、元J.P.モルガンのトレーダーだった経歴から今の活動に転じた大西さんの主張はとても興味を持っています。また、もっていた美味しいポジションを惜しみなく捨て去る度胸の良さも応援していきたいと思っている理由です。
私も全ての彼の思想に賛同しているわけではありません。
ただ、政治家としての覚悟と彼の行動を見ている限り応援したいと感じているわけです。
目次
大西つねきさんとは?
大西つねきさんは現在、フェア党という政党の党首をされています。
党といっても、現在、まだ地方でも国政でも議席はありません。
従って政治家といいながらも残念ながら彼の発言が実際に形となって反映はされていないのです。
しかし、彼の主張はとても明快明瞭。
それは通貨発行の仕組みを根本的に変えることです。
なぜなら、この通貨発行の仕組みこそが現代社会の多くの問題の根本的な理由であると看過しているからです。
私が大西さんの存在を知ったのは2019年のGWでした。
ちょうど、その頃、日本でも少しブームになり始めたMMT(現代貨幣理論)について興味を持ってYouTubeの動画を見漁っていた時に大西さんの存在を知りました。
はじめの印象は白髪のイケメンオヤジ。
私がよく行く湘南エリアでサーフボードに原付き乗せたら完璧いらっしゃる感じの方です(笑)。
MMTと大西つねきさん
MMTの細かな解説はこのエントリの主題ではありません。
ただ、超ざっくばらんに言えば、信用貨幣(主に預金通貨)の発行の仕組みを簿記で解説したのがMMTだと言えるでしょう(ざっくばらんすぎてスミマセン)。
なので、会計バックグラウンドの方がMMTの解説を聞くと直ぐに理解できます。
私の知り合いの会計士で「日本は財政破綻する〜」と言ってた人も、簿記処理を通じて話して「あ、そっか、じゃ破綻し得ない」と一瞬で洗脳解除しました(笑)。
一方、経済学のみ学んできた方は、リフレ派にせよ、財政出動派にせよ、ここの簿記処理が理解できない方がいるようです。
さて、MMTを理解した後に大西さんの主張を聞いて思ったこと。
それは、彼の理想のスケールが大きなことです。
MMTの前提は、国家・家計・企業と銀行(預金口座)の間での貸し借りを通じて預金通貨が発行されるという現実を証明したことです。しかし、その預金通貨は民間企業、家計、あるいは国が借入(負債発行)を通じて行われるため、常に利子が発生します。これが、問題の本質です。
ネガティブマネー(利子つきマネー)の課題
この利子がついた通貨をネガティブマネーといいます。
例えば、10年ローンで1億円の元本と1000万円の利息が10年で発生したとします。
こうなると、借入を行った時に銀行は借入人の預金口座に1億円を記帳します。
簿記的にはこうなりますよね。
(借)現預金:1億円/(貸)長期借入金:1億円
仮に、この借入を10年後に一括返済するとしましょう。
そのときには、こうなります。
(借)長期借入金:1億円/(貸)現預金:1億円
(借)利息:1000万円/(貸)現預金:1000万円
————————————–
計:(借)借入+利息:1.1億円 / (貸)現預金:1.1億円
この意味することは、1年目に世の中には1億円という預金通貨が誕生します。
経済的には、マネーストック(マネーサプライ)の増加です。
ここで、1つ問題があります。
利息があるため10年後には1.1億円の預金通貨が消滅します。
つまり10年後には1.1億円のマネーストックが消滅するのです。
大西さんは、この1000万円の利子の存在によるマネーストックの減少圧力によって、企業も個人も国もとんちんかんな行動をとってしまうと指摘しています。
つまり、減ってしまう1000万円のマネーストックを減らさないためには、最低でも、新たに1億1000万円以上の借金を誰かがする必要があります。こうなると、借金を出来る存在というのは限られてきます。
- 国
- 儲かっている企業(主に大企業)
- 収入の安定している公務員やサラリーマン
こうした主体しか借入をすることができない社会になると、これからお金を借りて何かをしようという企業は借入をしにくくなりますし、立場の安定していないフリーランスや自営業も借入を通じて事業拡大はしにくくなります。
つまり、今、この時点で安定している主体がますます借入を通じて富んでいき、一方で、それ以外は日々のあぶく銭稼ぎで精一杯という状態になるのです。まさに、ゲームチェンジや下剋上がしにくい社会です。
トマ・ピケティの『21世紀の資本』における主張を持ち出すまでもないですが、今のような低金利社会では、
になります。
- rとは”return”、すなわち資本収益率
- gとは”growth”、すなわち経済成長率
です。
日本のように過去20年経済成長率がほぼゼロ%台の劣等生においては、gと金利はほぼゼロに近づきます。一方、rは投資を通じたリターンですので、全力で借りて投資できる存在が一番有利です。
すなわち企業であれば大企業、個人で言えば住宅ローンをしやすい公務員や大企業サラリーマンです。
一方で、中小企業の労働者や中小企業の成長率は概ねgと連動します。
だからこそ、今のデフレ状態は常に大企業や公務員に有利で、中小企業に不利なゲームなのです。大企業がデフレ圧力を生み出す消費増税や規制改革という名のデフレ化を好むのは、中小・ベンチャー企業のゲームチェンジを防ぐ防波堤になる。これが最大の理由でしょう。
これが、現在の先進国の多くで顕在化した格差問題の本質であると言えるでしょう。
ポジティブマネーの発行こそが現代の歪の解決につながる
では、この不均衡を解決するにはどうすればよいのか?
ここでこのお金の仕組みを知らない人は、
- 大企業から内部留保を没収しろ
- 金持ちに課税しろ
といった理論になっちゃいます。
でも、上記のようにお金の発行の仕組みが理解できるともっと健全な解決策を考えることが出来るのです。
それは、「利息」のない通貨、すなわち、ポジティブマネーを発行すれば良い。
という発想です。
これをするとすれば、政府紙幣しかありません。
つまり、簿記的に言うと先程の1億円の例で言えば、
(借)現預金:1億円/(貸)通貨発行益:1億円
となって、永遠に消えないお金が誕生するのです。
唯一のリスクは、乱発によるインフレですが現在の日本のデフレ状況を見ている限り、数百兆円やったとしても、おそらく問題はないでしょう。気になるのであれば、そのお金で国債償還すればおしまいです。
以前、私がまとめた永久劣後債は擬似的に企業が通貨発行権を持つスキームです。
このような非常時であれば、私は検討に値すると思っていますがもちろん、乱発によるインフレリスクやモラルハザードの問題がないわけではありません。
民間銀行と日銀による無利子永久劣後債(永久劣後ローン)を活用したコロナショックからの日本復活計画(大山思いつきプラン)
では、世の中に流通するお金の半分でも利息が存在しなくなればどうなるでしょうか?
より、今の時点で弱い存在、新興勢力にお金が行き渡るようになります。
ポジティブマネーの発行ができるようになれば、無理に消費税などで中小企業や個人をいじめる必要はなくなります。一方、財政政策を通じてインフラを整備したり、減税などで新興勢力の投資意欲を増やしたり、弱者の消費マインドを喚起することもできます。お金がただしく行き渡るということは、格差の是正にもつながりますし、何よりも小が大を飲むようなゲームチェンジをやってみようというベンチャー企業を生み出します。
つまり、世の中の若返りがはかれるのです。
前回紹介した、菅総理のブレーンのアトキンソン氏はじめとした人々はこれと真逆で今の格差を更に大手や正社員に集中させてしまう政策を推進しようとしています。この行き着く先は、更なる需要減退によるデフレ強化と少子化・世の中の高齢化です。
菅義偉政権の政策が日本経済と中小・ベンチャー企業に与えそうな影響一方で、この政府紙幣の議論は世界史的な大きな政治問題でもあります。
なかなか、この議論を実務に移そうとした政治家はさまざまな理由からいないのです。
しかし、大西さんはこの課題に本気で取り組むんじゃないか。
私はそう思っています。
大西つねきさんを応援したくなる理由
では、なぜ、私がそう思っているのか。
それこそが、私も大西さんを応援したくなった理由です。
何度と本気で覚悟を見せてきている
まず、大西さんのキャリアという視点で見てみます。
大西さんはもともと新卒で働き始めたのがJ.P.モルガン。
私がいたベアー・スターンズはリーマンショック前に破綻してここに買収されました(笑)。
大西さんは1964年生まれということで、私より11歳年上です。
正直、J.P.モルガンでトレーダーをしていたら30代で数千万円の年収になっていたのではないかと思います。それをなげうって、彼は、ピザ屋を起業してます(その後、IT企業も起業)。
私も、20代中盤の大したことしてないサラリーマンだった時に、一千数百万の給料を給料をもらって、
こんなこと続けてたら自分がおかしくなる
そう思って、一年発起して保育園の会社に転職しました。
給料は1/5くらいになって翌年の住民税が大変だったのを覚えています(笑)
しかし、人間というのは一度手に入れた美味しいポジションを捨て去るのはなかなか大変なものです。私の原点も、外資系証券会社になげうって中小・ベンチャーの世界に転じたことが自分のアイデンティティ形成に大きな影響を与えましたが、大西さんもそうだったのでしょう。多くの人は、正論は言うかもしれないけど覚悟はありません。
三国志でもかの曹操はこう言ってましたよ(笑)。
しかも、大西さんは3児の父です。
この意思決定は家族の理解を得るなどかなり大変だったことが想像できます。
そして、れいわ新撰組から除名された現在、大西さんはまた1人政党として独立して新たな道を歩まれています。家も売ったそうです。
50代で自分の信じる理念を実現させるためにこんなことをする覚悟のある人ってそうそういないですよ。だからこそ、私は大西さんを応援したいと思いました。
れいわ新撰組からの除名は残念だが仕方ない
大西さんは有名な「命の選別」発言問題でれいわ新撰組から除名されました。
私は、あまり評論はしませんが、彼の動画を何度と見直してみましたが少なくとも、彼にはその意図はなかったと思います。
このあたりは本人の発言を生で聞いてそれぞれが判断するのが良いでしょう。
「正しさ依存症」とそれを生み出す教育について
大西つねき記者会見中継(
とにもかくにも言葉というのは相手がいてはじめて成り立つものです。
特に今の時代は、その言葉の一部のみを切り取って、拡大解釈されてしまえばどのような発言だって問題発言とされてしまうこともありえます。
だからこそ、大西さんの発言の真意はともかく、私達ひとりひとりの人間がしっかりと文脈も含めた言論を観察していく必要があるのではと思います。
一方で、大西さんを過剰に批判した人も多いですが、多くの方は彼の発言や文脈まで見聞きした人は少ないかもしれません。
もちろん、どう批判するかは人の自由ですしどう解釈するかもその人の自由です。
だからこそ、大西さんは反論したいことも多かったでしょうが、除名という判断を受け入れたのでしょう。
もちろん、れいわ新撰組の山本太郎さんの立場としてはこの判断はやむを得なかったのでしょう。
それにしても、ちょっともったいない判断だった気がします。東京都知事選で山本さんが都知事になっていたら15兆円の都債発行と日銀引受が行われていたかもしれません。それがあれば、コロナ後の経済もかなり違っていたかもしれません。何よりも、そこまで大胆なことをしてもインフレが起きなければポジティブマネー発行の端緒となったかもしれません。
私は別に山本太郎さんと政治的には信条もかなり違います。
しかし、自由党を飛び出してゼロから政党を立ち上げたその意気はすごいと思っています。
このあたりはこのエントリで書いています。
山本太郎とホリエモン – 違ってるけど似ている – ロスジェネ世代だから感じてしまうシンパシー
また、山本太郎さんもの頭の柔らかさも期待していました。
与党自民党に国会質疑でも多くの疑義を呈しながらも、日銀人事などで同意できるものには柔軟に同意してきました。今後も、組む場所は組んで、論争するところは論争する、という付き合いがあることを祈るばかりです。
今後、大西つねきさんに期待すること
最後は、大西さんに個人的に期待することです。
やはり、彼が常々言っているように、
「貨幣発行の仕組みの変化を日本から起こして世界を変えていく」
を実現することです。
今の時点で、政府紙幣を堂々と発行することができそうな大国というのは意外と少ないものです。日本、アメリカ、カナダ、オーストラリアあたりは政治的合意があればできそうですし、小国としてはスイスあたりも面白そうです。
- しかし、かれこれ20年以上デフレで長期停滞をしてきた日本。
- そして多くの新しい挑戦を奪い取ってきたデフレ。
こうした大きな問題に加えて今回のコロナ騒動を通じて、本当の問題に気づいた日本人も多いのではないでしょうか。
大西さんのポスターをはってるお店が鎌倉にありました。
これくらいでっかいアドバルーン、スラムダンクの「センド−は俺が倒す」と同じくらい好きです(笑)。
大西さんと与野党内のまともそうな政治家の違い
実は、現行政党にもまともな方は多くいます。
たとえば、自民党の西田昌司議員や安藤ひろし議員ははやくから、
- 消費税減税
- 財政出動の拡大
- MMTを理解している
といった点で、山本太郎さんや大西つねきさんと重なるところがあります。
それどころかこないだ退任された安倍総理だって野党時代は消費税はあげない、財政出動するって言っましたからね(笑)
しかし、西田昌司議員は2014年の5%→8%の増税に賛成してしまいました。
安倍元総理も、2回は増税をスキップしましたが結局2019年に再度10%に増税しちゃいました。
安藤ひろしさんが男を見せるかどうかは私も一応見てますが大組織だと難しいと思います。
なぜなら、実はみんな分かってるけど、大きな組織は様々な理由 – しがらみや先輩、財務省への配慮 – があるからです。
これは、大手とベンチャーの戦いにも当てはまります。
大手のほうが遥かに資金的にも人材的にも恵まれているはずが、世の中を変えるような革新的なプロダクトはベンチャー企業が生み出すことが多いです。これは、「イノベーションのジレンマ」のような理論を持ち出すまでもなく、大手には大手のしがらみがあるからです。
結局、こうしたしがらみを変えるのはしがらみに囚われず覚悟がある人間しか無理なんです。
昔だったら、大久保利通のように薩摩藩を使えるだけ使って、その後、廃藩置県やって出身母体の鹿児島県と戦争できるくらいある種吹っ切れて覚悟のある人なら大組織でもありですが、あのレベルの人は数百年に一人でしょう。
大久保利通半端ないって思う理由
残念ながら、現在の与野党の議員を見ていると、それは難しそうです。
だからこそ、美味しい外資ポジションを捨て、そして、家を売ってでも勝負するような覚悟ある人。大手企業の比較的恵まれた人の多いあざみ野エリアで誰も聞いてくれないような「貨幣発行の仕組み」を熱く街頭演説するようなオッサン(笑)。つまり、熱いベンチャースピリットのある人に賭けるしかない。
それが私なりの結論です。
おわりに
ということで、私の大西つねきさんへのちょっとした熱いエールはここで終えたいと思います。
大西さんと私が個人的に相通じると感じるのは貨幣の仕組みこそが今の社会の諸問題の根底にあるという現状認識。
そして、何よりも自由をとても愛しているということです。
一方で、昭和天皇へのご発言などは私とは見方が違うところもありますが、全ての意見が一致するなんてことはありません。
彼の生き方、自分の発言・行動への誠実さに私も期待したいと思います。
れいわ新撰組からの離脱は残念でしたが、これを機会にポジティブマネーの発行一点突破の政党が一つくらい誕生するととてもおもしろいと思っています。
現在の野党は、立憲民主党、共産党、維新と思想は異なれど本気で日本を良くする覚悟はないと思います。その結果が、全野党が自民党の補完勢力になってしまっているこの現状です。今の日本の小選挙区制度は、どうしても政治家が地元のミクロな問題を扱うほうが票につながるため、小粒化してしまいがちです。
しかし、日本はそんな小粒なことを言っているのでは立ち直れないほど落ちぶれてきました。あと数年この状況がつづけば、日本の一人あたりGDPも中進国レベルに格下がりしてしまうことでしょう。
次の子どもたちに残してあげるべきは、前向きな未来と挑戦しやすい環境です。
そのためにも、私達現役世代、特に既得権側にいついてしまった人はそこに固執するのではなく、パイ全体を大きくすることの大事さをそろそろ理解して行動に移すべきです。
大西さんの書籍は読み応えありますのでオススメです。
いつか、書評レビュー書いてみようと思います。
大山俊輔