大山俊輔ブログ ー 脳科学による習慣ハック・歴史・経済のサイト

菅義偉政権の政策が日本経済と中小・ベンチャー企業に与えそうな影響

菅義偉政権

安倍首相が退任し菅総理が誕生しました。
今まで、安倍政権の官房長官という立場でどちらかというと女房役を務めた人間が急遽首相になるということで、その政策が気になる方も多いのではないでしょうか。

中小企業にとってアベノミクスとは何だったか?(アベノミクスの評価)」
アベノミクスの評価 中小企業にとってアベノミクスとは何だったか?(アベノミクスの評価)

あまり多くを語る方ではないため、菅政権の方向を探るには彼に影響を与えそうな周囲の人々の言動や行動から想像していくのが最も妥当かと思います。また、その政策により日本経済がどの様になっていく可能性が高いのか?

大山俊輔

元外資系証券会社、ベンチャーキャピタルにいた人間で今は中小企業経営者である自分が、中小・ベンチャー企業へどのような影響がありそうなのかについてまとめています。

それでは、読み進めていきましょう。

菅義偉氏とは?生い立ちなど

それでは、菅義偉氏の生い立ちを見てみることにしましょう。
菅氏は秋田県雄勝郡秋ノ宮村の生まれで、現在は神奈川県在住。選挙区は神奈川2区(横浜市西区・南区・港南区)。

家族構成は、父、母、姉2人、弟1人で、父親の菅和三郎氏は第二次大戦時満州にいたようです。帰国後、農業に従事し「秋の宮いちご」のブランドいちごで大成功されました。農家の貧しい・・・・という苦労話もありますが、菅さんの幼少期にはそれなりに事業も成功されていたようですね。

大学は法政大学法学部政治学科。
在学中には実家から仕送りも受けていたようです。また、警備員、カレー屋のバイトなどで生活費を稼いだということです。1973年に大学を卒業。建電設備株式会社(現・株式会社ケーネス)に入社しました。

その後、国会議員秘書、横浜市会議員を経て、1996年の第41回衆議院議員総選挙に神奈川2区から自由民主党公認で出馬し当選。総務副大臣、総務大臣を経て、第二次安倍内閣で官房長官をつとめた後、2020年9月16日に内閣総理大臣に就任しました。

菅首相とはどのようなタイプの政治家になるか?

政治家の中には自らの政策信念のようなものを持っている方もいれば、逆にそれがない方もいます。

例えば、

小泉純一郎元首相 → 郵政民営化

池田勇人小泉純一郎池田勇人元首相 → 所得倍増計画

田中角栄
田中角栄元首相 → 日本列島改造論

などは、誰にもわかりやすく何が起きるのかも想像がつきます。
私個人的には戦後の総理大臣でその政策にほぼ100%同意できたのは池田勇人首相の所得倍増計画だけかなぁと思います。

さて、菅首相は逆にこうした目に見える特徴がないことがある種の特徴だといえるでしょう。同じように長期政権、キャラの強い人の後任になる首相には似たようなタイプの方が多いと言えるでしょう。

・ 中曾根内閣 → 竹下内閣
・ 橋本内閣 → 小渕内閣
・ 第一次安倍内閣 → 福田康夫内閣

この中では小渕さんは私個人的には橋本内閣時代の消費増税・ビッグバンなどによる経済不況を一時的に立て直したという点で、後継内閣としては非常に頑張ったと思っています。残念ながら小渕さんは突然亡くなられてしまいましたが、小渕政権の政策が継続していたら、2000年代初頭に日本経済はデフレ転落から早々に脱却していたかもしれません。

となると、菅政権はどのような内閣となっていくのでしょうか。
元官房長官ということで、第二次安倍内閣の内部の人間ではありますが具体的に何をしたいのかはなかなか見えてきません。

しかし、菅さんの周囲にいる人達を見ていくとおそらく彼らの影響が強い政策が出てくるのではと思っています。正直、マクロ軽視なのが心配です。

菅政権の周囲にいる人達

さて、今後の菅首相の政策を占うであろう記事がありました。
少し抜粋してみます。

菅氏の人脈、目立つ「構造改革派」 経済優先へ幅広く
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63845920V10C20A9PP8000/

官房長官を務めた7年8カ月の間も朝昼夜と各分野の人物と会食をこなした。夜は2軒をはしごすることも珍しくない。

安倍政権下で成果を上げた外国人旅行客(インバウンド)政策は小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長の意見に耳を傾けた。同氏は『新・観光立国論』の著作を持つ。

「大胆な改革」を掲げた規制改革は金丸恭文フューチャー会長兼社長らの意見を参考にする。金丸氏は規制改革推進会議のメンバーとして菅氏を支えた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オンライン医療の解禁を訴えた。デジタル関連の政策にも詳しい。

サントリーホールディングスの新浪剛史社長とも意見を交わす。新浪氏は安倍政権で経済財政諮問会議の民間議員を務めた。最低賃金の引き上げを促し、菅氏を後押しした。

産業競争力会議を通じ、楽天の三木谷浩史会長兼社長とも距離を縮めた。楽天は菅氏が利用料の4割下げを提起した携帯電話事業も手掛ける。地銀再編や大阪・神戸を国際金融都市とする構想を巡っては、SBIホールディングスの北尾吉孝社長との連携が目立つ。

総務副大臣の頃に総務相だった竹中平蔵氏とも付き合いが深い。竹中氏は小泉純一郎元首相の経済ブレーンとして構造改革をけん引した。

以上抜粋。

うーん。
ちょっと、面々を見てると頭が痛くなってきます。

デービッド・アトキンソン

デービッド・アトキンソン
小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長です。

なぜか、この人はビジネスマンに人気があるんですよねぇ。
特に、「日本の観光産業には未来がある!」とか外国人に言われると日本の知識薄弱なおぢさまはイチコロです。

ですが、私はこの人の主張にはまったく賛成していません。

基本その主張の根幹は、

・ 日本は欧米と比べると大企業のGDPに占める割合が少ない
・ 中小企業を保護しすぎだ
・ 中小企業を減らして大企業に集約すれば労働生産性は改善する

というお話です。

このあたりの冷静な反論はこちらに記載しています。

「労働生産性?なんじゃそれ? – 分母を削る改革で自滅するのが大好きな日本人」
日本の労働生産性改革 労働生産性?なんじゃそれ? – 分母を削る改革で自滅するのが大好きな日本人

あと気になるのは、財務省とも親しいことです。
https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2019/jinkou2019.htm

ここのメンバー見てください。

座長: 土居 丈朗 慶應義塾大学経済学部教授メンバー
デービッド・アトキンソン 株式会社小西美術工藝社代表取締役社長
吉川 洋 立正大学学長、財務省財務総合政策研究所名誉所長

土居丈朗さんはずっと消費税消費税と言ってる困ったおじさんです。
その界隈と仲良しということで、だいたい主張したいことも見えてくるんですよね。

新浪剛史

新浪剛史

サントリーホールディングスの社長さんで元ローソン社長。
The・サラリーマン社長の世渡り上手のおじさんですが、ポジショントークしかしません。

この人も、なぜか構造改革・構造改革なんですよねぇ。
いやいや、政府の仕事は金融・財政と国防外交だろって。

もっとも、自由主義的なハイエク先生ですら怒りますよ。

こういうサラリーマンから大企業社長に転ずる人の多くはおじいさんをヨイショするのが上手な一方、リアルの現場を見たりしてきてないのでどうしても、浮世離れした主張をしてしまいがちです。

サントリーレベルになれば、社長が政治活動にうつつを抜かしてても会社は回りますが僕が株主だったら怒りますね。

金丸恭文

金丸恭文
次はフューチャー会長の金丸恭文さん。
実は、個人的にこの方は面識あります。18年近く前の話ですが。

その時は働いていた会社でサラリーマンだった私ですが、よく役員会で社長と喧嘩してました(笑)。その時、社外役員だった金丸さんには間を取り持っていただきとても冷静な大人の方の印象でした。

ただ、時間の経過は人を変えちゃうのでしょうかね。
気づけば、政府のさまざまな諮問委員会に入られるようになったようです。

内閣府規制改革推進会議議長代理、内閣官房未来投資会議構成員、内閣官房働き方改革実現会議議員、働き方改革実現会議委員、経済産業省新産業構造部会委員、経済産業省IoT推進ラボIoT支援委員会委員、厚生労働省データヘルス時代における保険者機能強化と質の高い医療実現に関する有識者検討会構成員、公益社団法人経済同友会副代表幹事、公益財団法人総合研究開発機構(NIRA)代表理事、公益財団法人日本ハンドボール協会特任副会長などを務める。

経営者の仕事はそっちにいっちゃだめだと思うんですけどねぇ。
そこそこの上場企業だと、自分で頑張って営業したり新しいサービスを作るよりこういう政府に入り込んで仕事持ってくるほうが美味しいのでしょうかね。

竹中平蔵

竹中平蔵
みんな大好き、竹中平蔵さんですね。
2000年代初頭の小泉政権期の彼の精算主義的な経済破壊以来、彼が政府系の諮問委員会に入るときはうがった目で見ています。

こまったおじさんです。

菅総理の周囲の人達の主張から予想される菅義偉政権の政策

さて、これらの人たちに共通するポイントをいくつかピックアップしてみましょう。ここを見ていくことで菅義偉政権の政策の展開を予想することができます。

全員企業(特に大企業、官製談合)

共通しているのは全員が大企業側、特に経団連や自分たちの特定業界の肩を持つ政策をしたいと思っている人たちです。

消費税についても妙に経団連は賛成していましたよね。
彼らの多くは輸出産業です。となると、消費税のダメージよりもメリットのほうが大きいからです。
そう、こういう人たちは口では改革、自由競争と言いながら実際に主張していることは、

「俺にうまい汁を吸わせろ」

という麻薬中毒者なんです。
いやいや、経済のパイを成長させないとそのうまい汁が出なくなってくるんだよ!

と言いたいですよね。
私は、こういう民間企業にいるくせに本業頑張らないで国に入り込んで旨味を吸い取ることしか考えない人たちを、蔑みを込めて、

「民僚」

と呼ぶようにしています。

マクロ経済軽視

私は菅義偉首相誕生で真っ先に残念に思ったことがあります。
それは、「デフレ脱却」の文字が抜けたことです。

デフレとは資本主義が死んでいる状態です。
資本主義が死んでいるということは、

・ 今日よりも明日はより物価が下がる(安くなる)
・ 新しいことに挑戦したり投資する人が減っていく
・ お金の価値が上がり物価が下がるので、お金を投資するより貯金するほうがメリットがある
・ お金が動くのが個人消費周りではなく社会保障など国周辺しかなくなる

状態です。

このデフレの状態をさっさと治さないことには、民間の活力なんて夢のまた夢です。
彼らの大好きな改革なんてのは更に経済状況を悪化させるだけです。

私が一番気になるのはこのメンバーがおそらく誰一人デフレの恐ろしさや、マクロ経済そのものを分かっていないということです。マクロ経済というのは、あえて、単純化すればGDPを伸ばすことであったりその結果として国民の所得を伸ばそうと考えているということです。

言いたくないですがみんな規制を緩和したり特定の業界を潰したり政府の政策を通じて自分の会社や業界におこぼれがくることしか考えていません。

つまりみみちいのです。

あえていいますが、携帯料金下げろなんてどうでもいいんですよ。
だったら、景気よくして会社の売上が上がってみんなの給料が上がればいいのです。

政府がするべきことは家計や企業ができないことです。
それはすなわち、

・ 年間100兆円を超す予算の執行であったり
・ 中央銀行を通じたマネタリーベースの調整であったり、
・ 他国と渡り合う外交であったり、
・ 国境を守り安心して経済活動に専念できる国防力をつける

なんです。

携帯料金じゃないですから!!

お願いだから、国民の所得を増やして日本を強くする政策を考えましょう。

全体のことを考えられない

いかに優れた部分最適も全体最適には勝てない (ピーター・ドラッカー)

ドラッカー先生のこの言葉を上記の方々全てに捧げたいですね。
アトキンソン氏は中小企業がよほど憎いのか、最低賃金の引き上げを主張しています。

別にうちはそれ以上とっくに出してるので構わないですが、それをやれば地方経済は壊滅しますよ。
ってか、すでにそれをやって大失敗した国があります。

お隣の韓国です。

平均賃金の推移
上記の図のとおり、この20年日本人の平均賃金は1997年の467万円をピークにどんどん下がりました。
ちなみに、この年に消費税は3%から5%に上げられ日本のデフレがはじまりました。そう、デフレになれば給料が落ちる。アタリマエのことが起きただけです。

では、このデフレ下に、国が「給料を上げろ」といったら解決するでしょうか?

しませんよね。

日本の問題は需要不足です。

・ 需要を下げる政策をするから、売上が伸びない。
・ だから、そこで働く人の賃金も増えない。
・ 設備投資もできないから生産性は下がる。

結果として、労働集約化が一層進む。
これが問題です。

とはいえ、一つこの状況で良かったことは失業率が下がったことでしょう。
そう、仕事がないことは人を死に追い込みます。

「もはやコロナ犠牲者の定義を変える時期だ(犠牲者総数=「感染による犠牲者」と「経済苦による犠牲者」)」
日本の完全失業率の推移 もはやコロナ犠牲者の定義を変える時期だ(犠牲者総数=「感染による犠牲者」と「経済苦による犠牲者=自殺者」)

これを逆に法律で強制的に払わす方向にすると企業はどうするでしょう?
人を雇わなくなります。

つまり、失業率(特に若手の)が悪化し消費が更に悪化する→GDPが伸びないという悪循環を更に強化してしまうのです。私は、アトキンソン氏の主張は、

・ とりあえず給料を上げろ
・ 失業率が上がって自殺者が増えようが知ったこっちゃない
・ うまく大企業に潜り込んだやつだけうまい汁がすえればいいんだ

というふうにしか聞こえてきません。
なんか、ここにいる人たちみんな一応民間人ということになってますが、言ってることがお上思考すぎます(笑)。どっちかというと、国家社会主義者じゃないだろうかと思いますよ。

どうしてかというと、自分の手金で勝負してないから感覚がわからないのです。

構造改革すれば良くなると思ってる(確信犯?)

これは、もういい加減気づけよ、という話です。
日本人はリスクとってなにかする人は少ないくせ、お上も下々も構造改革という言葉に代表される変えるごっこが好きな国民です。

構造改革という言葉が流行り始めたのは2000年代初頭の小泉政権、あるいは、少しさかのぼって1996年~1997年に日本版ビッグバンをしようとした橋本政権ではないでしょうか。でも、経済パフォーマンスを見てください。

はい、ドン!

日本の名目GDPの推移

え、なに・・。この成長しない子(笑)
変える=善じゃないんですよ。

会社だって、売上なくなったら死にますよね。

そんなときに、

「当社の問題は硬直化した人事制度とイノベーティブでない商品だ」(キリッ)

なんて言って、人事をこねくり回し始めたらどうなるでしょう?
アホな企画部とかの人がいいそうですが。

ダメダメですよね。

まずは、企業なら売上ですが国家なら経済成長なんです。
結局、構造改革と言って特定の業界(主に自分の)におこぼれがくるようにしたいというのが本音で、それで、日本全体が衰退してもいいと思ってるんじゃないですかねぇ・・・・。

中小企業は生産性低いから潰したい

これもアトキンソン氏の主張です。
彼は常に日本の労働生産性の低さを目の敵にしています。

ってか、君の天下り先の企業も一応中小企業だろ。
ってツッコミでもしたくなりますが(笑)。

確かに現実を見ると、ここ30年日本の労働生産性は他の先進国に遅れを取ってきました。それは、彼の言うとおりです。
では、ここでまずは定義を見てみましょう。

生産性とは付加価値の総額を労働者のアウトプット総数(労働時間合計)で割った数字です。
つまり、

付加価値総額
————————
労働者のアウトプット総数

これがざっくばらんな定義です。

では、かつて日本の労働生産性がどんどん改善した時はどのような時期だったのでしょうか?バブル期です。

・ 経済が成長する=付加価値総額(名目GDP)が増える
・ アウトプット総数はそこまでは増えない
・ 余力があるので設備投資が進む

→結果として生産性が改善する

これです。

「労働生産性?なんじゃそれ? – 分母を削る改革で自滅するのが大好きな日本人」
日本の労働生産性改革 労働生産性?なんじゃそれ? – 分母を削る改革で自滅するのが大好きな日本人

これを無理して、アウトプット総数を減らして付加価値総額を維持させようとする政策が働き方改革でした。また、アトキンソン氏の言う強制的な最低賃金の引き上げは結果として雇用を悪化させて失業率の増加になります。

やるならデフレ脱却。
景気バク上げして給料を上げていく。

あべこべなんですよね。
馬鹿なのかわざとこう言って経済を破壊して大企業に集約させたいのか。

どっちかですね。
多分、私は彼については後者だと思ってます。

結論:結局パイを小さくする中で大企業に集約させたいだけ

では、結論ですがこの政策をすればパイは小さくなる=GDPが伸びないか減少することは間違いないです。
そうすれば、中小企業にとっても大変なのは当然ですが大企業だって内需で食ってる会社は大変になりますよ。

彼ら的には中小企業を潰したり弱体化させて自分たちがおこぼえれもらいたいのでしょうが、そのおこぼれが出ないほど、雑巾はこの30年で搾りに搾り取られています。

お願いだからマクロ経済を考えられる人にトップになってもらいたいものです。

おわりに

こうしてまとめてみると、日本の過去20年以上のデフレを通じた長期停滞の最大の理由はミクロで様々な規制やルールに手を付ける一方で、全体最適となるマクロ経済を軽視してきたことです。

会社で言えばそこそこ90年代までそこそこ上手くやってたのに、97年に値上げしたら売上が瀑下がり。
でも、それ認めるのは悔しいから、

・ 人事改革だ―
・ 新商品だ――
・ ROE改革だ―
・ 働き方改革だ―

ってやってるようなもんです。
企業はそれで淘汰されるからいいですが、国が淘汰されてしまっては困ります。

菅首相、まだ、今なら変節できますよ!
ぜひ、「デフレ脱却が当内閣の仕事だ」と言い直してください!

そうしたら評価するよ!
そんなとこで!

大山俊輔