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ランチェスターの法則とは!?中小・ベンチャー企業にも使えるランチェスター戦略をわかりやすく解説

ランチェスターの法則とは!?中小・ベンチャー企業にも使えるランチェスター戦略をわかりやすく解説

みなさまは、ランチェスター戦略という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ビジネス戦略として、日本で有名な言葉ですが、その論理まで正確に知っているという方は少ないのではないでしょうか。ランチェスター戦略は、有名企業を含めて、多くの企業で成果を上げてきたことから、日本では、競争戦略・販売戦略のバイブルと呼ばれています1。

有名なところでは、かつてビール市場でシェアが10%を割り込むところまで落ちたアサヒビールが、2011年時点で業界1位まで持ち直したことなどが、ランチェスター戦略によるものであることが知られています。みなさんも正しく理解して、自分のビジネスに取り入れられるようになりましょう。

ランチェスターの法則とその歴史

ランチェスター戦略を学ぼうと考えたら、まずはランチェスター法則について理解を深めなければなりません。なぜなら、ランチェスター戦略は、ランチェスター法則から生まれたものだからです。まずは、ランチェスター法則の簡単な概要とその歴史についてお話します 。

いまから約100年前、第一次世界大戦が行われたとき、戦闘機の開発に従事していたイギリス人のF・W・ランチェスターは、戦闘の勝ち負けに興味を持ち研究をしました。その結果、勝ち負けは、戦う双方の“武器効率”と“兵力数”によって決まることを発見しました。これが、ランチェスター法則です。

“武器効率”とは兵器のそれのみならず、兵士のやる気といったことを含めた戦いの“質”の要素全体のことです。一方、“兵力数”とは兵士の数と兵器の物量のことを言います。なんとなく誰にでも思いつきそうなシンプルな話に思えますが、この法則は戦い方によって結論が二つに分かれます。

1体1が狭い範囲で敵と密着して戦う原始的かつゲリラ的な戦い(局地戦)のときは、戦闘力は“武器効率×兵力数”で決まります。これを第一法則と言います。一方、多数が広い範囲で戦う近代的な戦い(広域戦)のときは、戦闘力は“武器効率×兵力数の2乗”で決まります。これが第二法則です。

ランチェスターの法則

画像引用(『10分でわかる! 競争戦略のバイブル「ランチェスター戦略」』より)

以上に見たのがランチェスター法則です。この、第一法則と第二法則を分析していくと、“強者”と“弱者”がそれぞれ取っていくべき戦略が見えてくるのです。これがいわゆるランチェスター戦略ですが、実はこれ、日本人が考えたものであるということをご存知でしょうか。

日本のマーケティングコンサルタントであった田岡信夫はランチェスター法則から“弱者の理論”と“強者の理論”という戦略理論を導き出します。その後、1972年、『ランチェスター戦略』という著書を出版したことがきっかけで、ランチェスター戦略は世間に広がっていたのです。

次の章では、以上に見たランチェスター法則をもとに、持つものである“強者”と、持たざる者である“弱者”がどのように戦うのかという戦略、ランチェスター戦略を解説いたします。その上で、これらをビジネスに応用するとどうなるのか考えていきたいと思います 。

ランチェスター“第一”法則、 “弱者”のための3つのポイント

戦いにおいて、“強者”は常に有利です。そのため、問題なのは効率よく勝利することになります。第二法則では、兵力数が戦力に与える効果は二乗になるので、“強者”にとって、多数が広い範囲で戦う近代的な戦いでは、まず間違いなく勝てるということになります。

一方、“弱者”は常に不利になります。どうしてもその事実は変わりません。しかし、次のように考えることができます。“弱者”は、1体1が狭い範囲で敵と密着して戦う原始的かつゲリラ的な戦いにおいては、“強者”の兵力という強みを緩和することはできるのではないかと。

次にポイントになるのが、武器効率です。なぜなら、戦闘力が“武器効率”と“兵力数”で決まる以上、“弱者”が変えることができるのは“武器効率”だけだからです。また、“兵力数”を変えられないとしても、投入の方法を変えて有利に戦う方法はあります。すなわち、局所戦です。

以上をまとめると、戦闘において常に不利な “弱者”が、戦闘を有利に進めるためのヒントが見えてきます。それは、①第一法則で戦うこと②武器効率を上げること、そして③兵力を集中させることの3つです。これがランチェスター“弱者の戦略”の基礎となります。

ランチェスター“第一”法則をビジネスに応用しよう!

では、今までの話をビジネスに置き換えるとどのようになるでしょうか。戦闘力は“事業力”と言い換えることができるでしょう。武器は、企業の“質的な経営資源”にあたります。例えば、営業力や技術開発力のほか、アフターサービスなどもこれらに含めることができます。

一方の兵力は、企業の“量的な経営資源”になります。従業員数や店舗数のほかにも、財務力や代理店の数なども含めることができます。つまり、第一法則は“質的な経営資源×量的な経営資源”、第二法則は“質的な経営資源×量的な経営資源の二乗”ということになります。

では、局所戦と広域戦はどのようになるでしょうか。このままでも良いですが、よりわかりやすくすると、“部分的な戦い”と“総合的な戦い”ということができます。“部分的な戦い”とは、市場を細分化し製品を絞ること。一方、“総合的な戦い”とは、グローバル市場やフルライン戦略のことになります。

つまり、先ほど見た、“弱者の戦略”の3つの基礎は次のように言い換えることができます。①第一法則で戦うこと②質的な経営資源に注力すること、そして③市場を細分化し製品を絞ることです。これらを組み合わせることで、中小・ベンチャーのためのンチェスター“弱者の戦略”が見えてきます。

それが、“差別化”です。この言葉の本質は、“質的な優位性”です。つまり、他社より良い製品を他社より良い売り方で提供するということになります。これを、経営資源を重点配分(製品を絞る)しながら細分化された市場(限定的な営業範囲)で実践することンチェスター“弱者の戦略”なのです。

ランチェスター戦略の事例、アサヒビールの大逆転

2011年にビール系飲料業界でシェア1位を誇るアサヒビールは、1985年にシェア10%を割り込み、経営危機に陥ったことがありました。今回は、その復活劇をご紹介したいと思います。戦後まもない頃、ビール業界には3つの企業がありました。サッポロ、アサヒ、キリンです。これらは30%前後のシェアを分け合う3強でした。

 

しかしその後、全国に販売網を持つキリンが、東日本のアサヒと西日本のサッポロを凌駕するようになりました。さらにアサヒが新規参入に際して販売網を貸したサントリーが朝日のシェアを取ってしまいました。結果、80年台には60%のキリンに対して、朝日のシェアは10%を切りました。

 

そこで、“総合的な戦い”でキリンに勝てないことを悟ったアサヒは生ビールに絞った“部分的な戦い”をすることに決めました。当時は、熱処理を施したラガービールが中心で、生ビールは家庭用としては普及していませんでした。86年、アサヒは経営資源を集中して生ビールの販売を始めました。

 

35歳以下に絞ったターゲティングが成功したこともあり、88年にはシェアが20%を超えました。その後、停滞期もありましたが、それらも乗り越えて復活したのです。これらを主導したアサヒの中條高徳氏は、ランチェスター協会顧問を務めた人です。氏の持たざる者が持つものと戦うやり方は、ランチェスター戦略と通ずるものがあるのです。

ランチェスター戦略のポイント

ここまで見てきたランチェスター戦略はまだまだ奥が深いものですが、なぜ注目されるのでしょうか。それは、“強者の戦略”と“弱者の戦略”をはっきりと区別したからです。日本の99.7%は中小企業です。大企業と同じやり方では勝てるはずがありません。しかし、ランチェスター戦略は彼らのための戦略を提供してくれるのです。これが、ランチェスター戦略が注目される理由なのです[1]

[1] 栢野克己・竹田陽一『小さな会社 ランチェスター式「儲ける戦略」』より参照

 

ンチェスター戦略を学ぶのにおすすめの書籍5選

おすすめは、NPOランチェスター協会常務理事の福永雅文氏の著作ですが、興味のあるタイトルがついたものを読んでみるのがいいと思います。漫画などもあるのでぜひ。

 

【新版】ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則

2005年発行のロングセラー『ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』を、時代の変化に合わせて全面的に改訂した、“勝ち残りたい”中小企業経営者・ビジネスリーダー必携の書です。

 

ビジネス実戦マンガ ランチェスター戦略: 弱者が勝つ最後の方法

“弱者逆転”の戦略を「わかる」から「できる」にすることを目的とした一冊。局地戦、一点集中主義、差別化、接近戦、No.1主義、という大切な共通言語を、5つのストーリーマンガでわかりやすく理解できる。

 

小さな会社 ランチェスター式「儲ける戦略」

あなたの会社も、七転び八起きで人生は逆転できる!中小零細個人企業に特化!1万社以上が実践し成功している「弱者の戦略」を紹介した、黒字経営の教科書。「大失敗からの人生逆転!大成功経営」事を満載した一冊。

 

決定版 ランチェスター戦略がマンガで3時間でマスターできる本

本書は、ランチェスター戦略を日本で体系化した田岡信夫氏の遺志を継ぎ、現在ランチェスター協会 名誉会長である田岡佳子氏が、わかりやすくまとめた一冊です。全項目2ページ構成で、左ページはマンガとポイントで理解を助けてくれます4

 

【新版】小さな会社★儲けのルール

2002年の初版から14年、12万部を突破した中小企業のためのバイブルをリニューアル。30ページ以上増補、内容当時の成功事例を最新版にして新版として刊行。中小・零細企業、個人事業主、起業家、これから起業する人などまさに必読の書です4

まとめ