大山俊輔
消費税上がっちゃいました。
いやー。ずっと、私は消費税上げると税収減るぜ。そう言ってました。一応、商売人ですが大学は経済学部でしたので、これくらいは分かります。実際、97年の増税の時もろ直撃弾くらった世代ですからね。
そうしたらこれ。
貿易戦争の影響で企業業績が悪化し、法人税が失速。政府が過去最高の62.5兆円を想定していた2019年度予算の一般会計税収が2兆円規模で下振れし、3年ぶり税収減の可能性があります。https://t.co/x6dRIEePtI
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) November 15, 2019
まだ、見込みの話ですがこのとおりになったらほんと笑えませんね。
でも多くの人がこのことを指摘していました。
商売の現場にいる人達は恐らくこのシナリオは容易に想像がついたと思います。
ついていなかったのは、ひょっとすると霞が関と永田町のおエライサンだけかも。給料が税金って楽でいいもんです。
実は私も昨年Habit Summitというアメリカの習慣専門のイベントに参加してきました。
ハビット・サミット – Habit Summit 2018に参加してきましたその時にGoogle Photoの開発をしている人と話している時に日本の話になって、
「もし、消費増税したら減収になるぜ」(英語で)
と言われてました。
彼の予言あたっちゃいそうだな~。残念ですが。
ということで、今回はなぜ、シリコンバレーのエンジニア的に消費増税とおまけの軽減税率というのがまずいのかについてまとめてみました。経済のエントリっぽいけど、UIのエントリでもあります。
目次
Google PhotoのUIと消費税の不思議な関係
スマホでGoogle Photo使ってる方いらっしゃいますか?
iPhoneユーザーだと、iCloudがありますがGoogle Photoの方が便利ですよね。私も基本写真はすべてGoogle Photoで同期しています。
今回の話は、そのGoogle Photoアプリの開発者との雑談でした。
彼の専門分野は”Cognitive Load”と”Cognitive Simplicity”。
日本語で訳すると前者は「認知的負荷」。後者は私は見たことがなく、あえて訳すなら「認知的シンプルさ」とでもいいましょうか。
ひたすらGoogle Photoの開発の中でいかに人間の作業をシンプルにするか。
こればっか考えている人でした。
アプリも税制もシンプル・イズ・ベスト、なのに・・・
おかげさまで、Google Photo、めっちゃ使いやすいですよね。
この視点で税制を見ると、シンプル・イズ・ベストなんだそうです。
彼は、個人的には法人税や所得税がベストで、消費税は最悪と言っていました。
Google Photoの視点で見ると、シンプルがベストです。
法人税や所得税なら手続きは年に1度で済みます。支払いも1回。
一方で、消費税ですと毎回の取引の度に税金を払うことを意識します。
そうなるとどうでしょう?
「あ、これもほしいけど税金増えちゃったし・・・」
こう思うのが人の性です。
結果として、毎日、コンビニでも電車でも本屋でも居酒屋でも一つ一つの消費の前に増税を意識するとどうなるか。
認知的負荷の回数は増えた2%以上ですよね。
つまり、理屈的には消費は2%減るだけのはずがそれより遥かに減ってしまうのです。
だから、結果として税収は減るんじゃないの?
これが彼のポイントでした。
あたってんじゃん!!悔しいですが・・・。
軽減税率が更に洒落にならんわけ
彼は更にこんな話をしていました。
「良いアプリは”cognitive overhead”が少ない」
と。
この”cognitive overhead”という言葉の良い日本語訳がないのですが、あえて、「認知的間接費」と当てさせてもらいます。間接費ってところは、頭の中で考える時間=コスト、とでもイメージしてください。
自分が今見ているもの、触っているものが直感的(System1)にスグ理解できるのか、それとも、毎回毎回、頭を使う必要があるかで、アプリの普及度は変わってくると言う話でした。
例えばQRコード。
中国では普及しましたがアメリカや日本ではそこまで普及しませんでしたね。
出典:https://burmeistergroup.com/advertising/advertising-with-qr-codes/
QRって一見シンプルそうです。でも、上の写真のような広告ならどうでしょう?
「あ、バーコードだ」
「ん、、これスキャンする必要あるの?」
「そもそも広告なの?」
「カメラアプリだっけ。それともQRアプリ入れてたっけ?」
広告主が期待するアクションにたどり着くまでにかなりのことを考えてしまいますよね。となると、この広告からそのホームページに飛ぶ可能性は非常に低くなります。なら潔く検索窓で「◯◯◯◯を検索」と入れてるほうがシンプルで良いです。
軽減税率に認知的間接費のコンセプトで見るとどうでしょう?
えっと、このお店は軽減税率対応なの?
イートインにしようか、それとも、持ち帰りにしようか?
キャッシュレスだと何%安くなるんだっけ?
ただでさえ、増税になって認知的負荷が増えているのに、それプラスで認知的間接費までかかってきます。
これってアプリだとどんな感じでしょう?立ち上げる毎にログインが必要で、パスワード変更も必要、おまけに、使いたい機能のボタンがめちゃくちゃわかりにくいクソアプリがあったらどうでしょう?
使わなくなりますよね(笑)。
法人系の銀行のシステムなんかはこのパターンが多いですが、これが税制に適用されるとどうでしょう?
ますますお金を使わなくなっちゃうのは当たり前です。だから、日本大丈夫?という感じのことを2018年の4月に言われました。まだ、この頃は増税するかもわからない時期でしたがよくもまぁこんなピッタリ予言したもんだ。
そんな風に思いました。
ではベストは?
では、シリコンバレーのエンジニア的にベストな税制は?
というと、法人税と所得税だそうです。年に1回の納税のシンプルさ。毎回の取引の度に税金を意識しないで良いので、消費を落とし込む効果も低く、結果としてみんなお金を使うので税収的にもベスト。
あれ。でも、それって89年の消費税増税前の日本と一緒じゃね?そう思ってみたらやっぱりそうでした。
こうしてみてみると、1997年の消費税3→5%直後の落ち込みと2009年のリーマン・ショック直後がヤバいです。一方、2014年の増税はまだアベノミクスのはじめのアクセル効果もあって落ち込みがほとんどありません。
つまりのところ、景気を良くすることが税収を増やす一番の手段であって、税率を上げることじゃないんですよね。もし、このロジックが正しいなら消費税率1000%にしても、永遠に税収が増えます。んなバカな!
ましてや、認知的負荷の大きい消費税はもっとも消費を落とし込む効果が高いので、下策中の下策。
あれほど、一応賢いはずの霞が関のエリートがこんな簡単なことを理解しないはずはありません。だとすると、、、、。なんか、かつての大戦の時の負けパターンと同じ匂いがしてきました。このあたりは、以前紹介した永野護さんの『敗戦真相記』に詳しいです。
【書評・レビュー】永野 護『敗戦真相記』を読んで要約・まとめをしてみたまさか、今更間違ってたなんて言えない・・。それが理由じゃないことを祈るばかりです。
誰かなんとかして!!
ハビットマンShun