大山俊輔ブログ ー 脳科学による習慣ハック・歴史・経済のサイト

続かない理由と太る理由はどっちも同じ~タイムマシンで脳を知ればわかる

人間は合理的ではない

大山俊輔

今日はハビットマンとして、人類史と人が続けるのが苦手な理由につきまして。

以下記のエントリで「英会話が上達しない」=「続けないから」というお話をしました。

英会話が続かない人に共通する理由(14年、8000人以上お手伝いして分かったこと)

世の中にはとてつもない集中力や継続力のある人がいます。
身近な存在で言えば、イチローさんが思い浮かびます。ですが、イチローさんは特別ですよね。もし、彼と同じやり方を真似すれば、私たち一般人は必ず失敗します。

私たち普通の人間は気合や根性で自己をコントロールすることは出来ません。従いまして、普通の人間にとっての自己コントロールの第一歩は「自分を知る」ことからはじまるのです。

このエントリを読む頃には、人類の脳の仕組みがわかればあなた自身もなぜ何をやっても三日坊主になりがちなのかがわかります。

人類と脳の歴史

私たち自身がなぜ、続かなかったり、食べたら太ること間違いないしの夜食についつい手を出してしまうのでしょう。

このことを理解するためには、まず、私たちの脳の仕組みを理解することからはじめえます。そのために、少しだけ時代を遡りましょう。遡るといっても数百年、数千年という時間軸ではありません。

数百万年前にさかのぼったときの私たちのご先祖様の脳

うんと、数百万年前・・・・。
そう、私達のご先祖様がサバンナで狩りをしていた頃までさかのぼります。

人とチンパンジーの共通の祖先が分岐したのは約200~1000万年前と言われています。

そして、中でも私達の直接のご先祖様にあたるホモ・サピエンスは20万年前に登場したと言われています。いえ、スミマセン!実はモロッコで最古のホモ・サピエンスの化石が見つかったそうです(2017年6月7日)。それは30万年前。人類の歴史がさらに10万年古いことが判明した瞬間です。

かつて地球には様々な人類がいた

人類というと私達現生人類だけを想像してしまいがちですが、この時代には、学生時代私達が勉強したネアンデルタール人はじめ同じホモ属に属する私達の兄弟分にあたる人類が地球上にはいたのです!つまり、私たち、ホモサピエンスはその中の一つであったにすぎません。

残念ながら、現在、地球上に残った人類は私たちホモ・サピエンスのみ

それ以外の私たちの兄弟たちは地球上から去りました。そして、残ったのが私たち、サピエンス科です(にしても、サピエンス=賢い、ってちょっと言いすぎですよね)。私たちの兄弟たちは絶滅しましたが、最近の研究により、私達ホモ・サピエンスのDNAの中にはこうした他の人類であったネアンデルタール人やデニソワ人のDNAが混じっていることが発見されました。

このあたりのことは、ユヴァル・ノア・ハラリ著の『サピエンス全史』がオススメです。興味のある方は読んでみると、人類史に詳しくなりますよ。

特に日本人にはアジア人では珍しくネアンデルタール人の血が混じっているそうですよ。では、ここから話をご先祖様の脳に戻しましょう。

私達の脳は30万年前にほぼ完成して変わってない

私達のご先祖様はアフリカで30万年前に誕生し、その後、7万年前にアフリカを出ました。

そして、ユーラシア大陸に拡散する過程で、採集に頼っていたサバンナでの生活から、農耕や牧畜を学びました。こうして、食料を生産したり備蓄したりすることを学んだ私達のご先祖様はより大きな集団を作ります

農業を通じてより大きな人口を養う手段を得た人類は、その後5000年前には世界最古の国を作ります。

膨大な人口を統治する機構を構築し、科学技術が発達します。近代には産業革命などにより完全に他のライバルとなる動物がいない、地球の支配者となりました。そして20世紀のIT革命を経て今ではこうしてインターネットを通じて情報を発信したりできるようになるまで発展してきたのですよね。

チンパンジーと人類のDNAは98%一緒

人とチンパンジーのDNAの違い

といわれると、その30万年のせいで人は続かないし、太るの?と思ってしまいます。

でも、 人類の原型となるヒト属がチンパンジーと分岐したのは、30万年前ではなくて、200~1000万年前と言われています。なお、そのチンパンジーと私たちのDNAは98%が一緒です。宇宙人から見れば、ほぼ、同種族かもしれませんね。

また、チンパンジーから遡れば、更に原始的な哺乳類や生物から私たちは進化してきています。

私達が学生時代に歴史の教科書で学んだ私達人類の歴史はたったの数千年です。ですが、私たちの脳はこの30万年、アフリカにいたときから変わっていません。

人が続けるのが苦手な理由

上記のように私たちの直接のご先祖様は30万年前から存在していました。

そして、彼ら・彼女たちはその大部分の時間(7万年前に出アフリカとなるまで)アフリカのサバンナで生活していました。そして、そのサバンナでのサバイバル生活に適応した進化を遂げています。

なによりも、前述したように彼ら・彼女らの脳を含めた身体的構造は現生人類と何ら変わりません。つまり、タイムマシンで30万年前のご先祖様が今の時代にタイムトラベルしてきたとしても、はじめはビックリすることでしょうがしばらくすれば私達と同じように、スマフォ中毒になって、お菓子を頬張りながらテレビを見たりしてしまうことでしょう。

そして、30万年前の私達のご先祖様と今の時代に生きる私達が共有しているもの。
それは変わることのない脳なのです。

チンパンジーから人類が分岐して更にホモ・サピエンスに進化するまでの間には数百万年もの時間が経過しています。なによりも、そのチンパンジーが地上に登場するまでの間にもより原始的な哺乳類、爬虫類、更にさかのぼり魚類などから進化してきているわけです。

人類の脳は少しずつ機能を足しながら進化した

私達の脳は、突然変異で今のような進化を遂げたのではありません。

いえ、むしろ、原生動物の時代の名残を脳幹などのより原始的な部分に残しつつ、徐々に新しい機能を付け足していきました。その中でも代表的なのは、私達人類が持つ前頭前非質(前頭前野)部分です。

ここでは、自己コントロールや概念を把握する高度な処理を行っています。一方で、私たちは食べたり、性的な衝動を感じたり、時には眠気に襲われてしまいます。これは、私達の脳が突然進化したのではなく、原始的な衝動・本能のシステムの上に、進化を通じて自己コントロールの機能が付け加えられてきたからなのです。

衝動・本能のシステムは生存に関わる食、生殖などに関わる重要な機能ですがうまく制御しないと現代に生きる私達にとっては命取りとなります。

太るのも続かないのも一緒の理由なわけ

ひとつ例を上げてみましょう。

かつてサバンナで限られた食事を確保し、体脂肪をつけておくことが人類の生存にとって重要な時期がありました。こうした時、私達のご先祖様は甘いもの(果物)などを見つけた時に何をしていたでしょう。迷うことなくすかさず食べていますよね。

そうしないと、次に食べ物を確保できる保証がないからです。

ですが、今の時代のようにいつどこでも食べ物がある時にはこの原始的な脳の本能は健康を損ねてしまう可能性があります。より長寿を全うするためには、今目の前にある甘いお菓子に手を出すのではなく、手を出さないほうが重要になってくるからです。これが私達が夜テレビを見ながら、ついついスナックに手を伸ばしてビールを飲んでしまう理由であり、そして、そのことに対して自己嫌悪に陥ることの理由なのです。

理性(人間のみ)5%・本能(動物と共有)95%の脳

一般的にはこうした自己コントロールに関わる高度な処理(前頭前野が司る)は脳全体の5%。そして、人類になる前から私達が進化の過程で培ってきたより原始的な本能に基づく部分が95%と言われています。

脳は私達の進化とともに発展してきました。ヒトの脳ができるまでにはどのような進化の道のりを歩んできたのでしょう?

人間と動物の脳の基本構造は同じ

出典:http://bsi.riken.jp/jp/youth/know/evolution.html

脳には神経管と呼ばれる原始的な構造があり、その神経管の内側で神経細胞がつくられ、膨らんで脳がつくられていきます。神経管自体は、あらゆる脊椎動物に共通の器官でその起源をさかのぼっていくと、約5億年前に出現した原索動物であるホヤの幼生に行き着くそうです。

その後さらに進化してきた脊椎動物の脳は、どの生物でも基本構造はとても似ています。どの生物の脳も「脳幹」「小脳」「大脳」から成りたち、違うのはそれぞれの大きさです。

魚類、両生類、爬虫類では、脳幹が脳の大部分を占めています。脳幹は反射や、えさを取ったり交尾するといった本能的な行動をつかさどっています。小脳は、小さな膨らみにすぎないのです。大脳も小さく、魚類と両生類では、生きていくために必要な本能や感情をつかさどる「大脳辺縁系」のみが存在します。大脳辺縁系は、進化的に 古いことから「古皮質」と呼ばれる。ここから進化して爬虫類では「新皮質」がわずかに出現してきます。

鳥類や哺乳類になると、小脳と大脳が大きくなります。特に大脳の新皮質が発達し、「感覚野」「運動野」といった新しい機能を持つようになる。霊長類では新皮質がさらに発達して大きくなり、「連合野」が出現し、より高度な認知や行動ができるようになります。そして私達ヒトでは、新皮質が大脳皮質の90%以上を占めています。

脳の進化は、基本構造が変化するのではなく、新しい機能が付け加わるように進化してきたといえます。つまり、ヒトの脳には生物の進化の歴史が凝縮して刻まれているといえるでしょう。

こうしたことから、特に人特有の前頭前野部分の5%を人間脳。
残り95%の部分をより原始的な処理を行う動物脳(爬虫類・哺乳類脳)と分類し解説している学者もいます。

昨今の研究でこの分類は特に記憶などのメカニズムの解説を行う上では賛否分かれていますが、前頭前野で行われる処理とそれ以外の原始的な処理を区分けする上ではこの概念図は理解しやすいと思います。

英会話はじめ続けるのが難しい理由

いかがでしょう。

私たちのスペックがご先祖様と変わらないことはわかりました。では、英会話はじめ新しい事に挑戦しようとした時、多くの人が続かない理由は何でしょうか?

それは、本能に基づいて悪気ないく邪魔をしてしまうのが理由なのです。

サバンナ時代の私達のご先祖様は、食べ物を見つけたら刹那的に飛びついて食べなければ死んでいました。そして、他の野生動物もいる厳しい環境で数少ない人類のパートナーを見つければ、まようことなく生殖に及んでいたことでしょう。

そして、一つのことに集中せず、ライオンはじめや野生動物が近づいてきたらいつでも逃げられるようにあえて集中しない。つまり、続かないのはアタリマエなのです。

まとめ – 一般人はイチローのマネをしても続けられない

ですので、イチローやすごい人の名言を見てやる気をだしても、多くの人は真似することができません。

もちろん一時的には気持ちも変わるので役立つでしょう・・・。
ですが、それは継続することがありません。英会話は継続して一定の時間を投入することではじめて獲得することのできるスキルだからです。

では、どのようにすればアルキメデスのような変人でもなく、イチローのような努力家でもなく、親鸞やアウグスティヌスのような聖人でなくても続けることができるのでしょうか。

それが本ブログのメインテーマとなる「脳を騙す」習慣化の方法です。

私たちは動物なんです。ですが、人間のみが発達させてきた「認知する」ことで、まず、自分を理解することができます。それさえできればしめたもの。まず現状を理解して脳を騙せばあなたも必ず続けることができるようになります。

ハビットマンShun