大山俊輔ブログ ー 脳科学による習慣ハック・歴史・経済のサイト

保育業界いた自分がいいますが、保育園を作り続けても少子化は悪化し日本から子供いなくなりますよ

日本の少子化問題

大山俊輔

こんにちは。習慣デザイナー・ハビットマンShun、もとい、大山俊輔です。今日は日本の少子化問題のお話。

こんなツイートがありました。

私個人としては、さもありなんと思うお話です。
ついに、2019年の出生数が87万人を下回る可能性大とのことです。

このニュースを受けて様々な考察がネットやテレビでも言われてますが、なんかしっくりこないものが多いです。

なぜなら、その多くが保育園を増やせという結論になるから。
ああ、また利権を増やしたいんだな・・・。

そんな風にうがって見てしまうわけです。
なぜなら、私は保育園業界にいたことがあるのでこの少子化と保育園業界の構造的問題をずっと観察してきました。

そして、関わって確信に至ったことは、

「保育園を増やしても少子化問題は解決しない」

ということです。

少子化は社会保障問題、ロスジェネ問題などと並び日本の大きな社会問題だと言われてきました。
なにせ、2017年には「少子化が国難だ」ということで解散総選挙まで行われてます(みんな忘れちゃってますが、あれなんだったんでしょうね(笑))。

そして、社会保障、少子化、最近ではロスジェネ問題に膨大な予算が取られることになりました。
ですが、共通するのは、この20年以上成果が全く出ていないということ。

その理由は、少子化そのものが問題だからではないです。
原因と結果があべこべなのです。

少子化が原因で今の日本の長期停滞があるのではありません。経済失政の結果としてデフレによる長期停滞があり、長期停滞をきっっかけとして、少子化問題があり、ロスジェネ問題があり、そして社会保障問題があるのです。

では、保育園を都心部に乱立させるのではない形でどのようにすれば少子化問題は解決するのでしょうか?

日本の少子化がヤバい水準である理由

出生数の推移

それでは、まずは現状を見てみましょう。シンプルに日本の出生数の推移です。

日本の出生数

出典:https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20191213-00153538/

この図を見ていると、終戦後となる1940年代は270万人も生まれています
日本の人口がまだ7000万人ちょっとの時代です。ちなみに、ピークとなる1947年の合計特殊出生率は4.54です。丁度ベビーブームの頃ですね。この人達が団塊世代として現在どんどん高齢者の仲間入りをし始めているわけです。

ちなみに私は1975年生まれで1学年約200万人いました。
そして、今年が減りに減って87万人・・・。

これがざっくり見た今の日本です。

出生率の推移

次に、出生率の推移を見てみましょう。

日本の合計特殊出生率の推移

現在の人口を維持するのに必要な数字として2.08程度と言われています。
ですので、私の生まれた1975年の1年前となる1974年の時点で2.08を割り込み、いずれ人口がピークアウトすること自体は想定されていました。

ただ、一方で平均寿命が長くなり、この期間、生産年齢人口が増えてきましたので日本経済のパイ全体に与える影響は最小限でした。実際、日本の人口はしばらくの間増え続けました。実際に減少に転ずるのは2005年と大分先のことです

2000年代の日本の対応

さて、こうした状況になり日本政府はどうしたのでしょう。
一応、危機感を持って手をこまねいていたわけではないです。

実際、私が以前属していた保育業界などには潤沢な税金が注がれ、特に都心部では多くの保育園が設立されました。規制緩和も行われ、東京都などでは東京認証保育園などの制度が誕生しました。私が働いていた会社もこの流れで成長しました。

保育園の設立には膨大な税金が投入されます。
例えば、保育園の設立にかかる内装工事費についてはその1/2~2/3が補助金として運営会社に支払われます。

これは保育業界が「公的なサービス」を提供するからという理由一点でなされた制度です。

もし、私が今の英会話スクールを出店する際に同じような制度があったら・・・。
使いまくってるでしょうね(笑)。ほんと、羨ましいものです。

ただ、残念ながら都心部を中心に保育園を増やしたにも関わらず出生率は目立った改善がなされませんでした。

ここに日本の少子化の本質的な問題が保育園を増やすことでは解決しない理由を垣間見ることができます。では、何が本質的な問題なのでしょう?

それは、こうした日本政府の対応の多くが問題の本質とは異なる対処をしてきたことが原だと言えるのではないでしょうか。

大企業や官公庁の家庭を前提とした制度設計と現実のズレ

答えから書いてしまいましたが、都心で増える保育園の恩恵をこうむる家庭の多くは、大企業で働く平均的なサラリーマンや官公庁で働く公務員家庭です

もちろん、私達の会社のような中小企業で働くスタッフで現在保育園を使っている人たちもいますが都心部では少数派です。なぜなら、都心のサービス業界や製造業を中心とした中小企業で働く女性の結婚率は非常に低いからです。

つまりそもそも結婚していないのだから、子供もいないケースのほうが多いのです。

受益者は、結局のところ特定の層に限られているが実情なのです。

日本の諸制度設計の仕組み

日本の諸制度の設計には経団連などの経済団体からの要望が多く組み込まれる傾向にあります。

2019年10月に施行された消費増税や4月の入管法の改正はまさに大企業の要望を反映したものです。普通に考えて中小企業の人たちに全くメリットがないですからね。

下記の図を見てみてください。

大企業と中小企業

大企業と中小企業の雇用者数

出典:http://jobgood.jp/chusho

企業数で見れば大企業はわずか0.3%
雇用者数で見ても1/3に過ぎないのが実情です。

つまり、この僅かな人たちを前提とした諸制度をつくったとしても、雇用者数の2/3を占める中小企業やベンチャー企業で働く人にはあまり恩恵がないのです。

いや、むしろ消費増税のように、中小企業から富を吸い上げて大企業に還元してしまうような悪いケースも出てきてしまいます。同じ事は、今後、働き方改革などでも今後起きることでしょう。

つまり、日本の少子化対策は雇用の1/3を占める大企業で働く人には多少なりとも効果があったが、中小企業で働く大多数の人を置いてけぼりにしてしまった。

そう総括することができます。

選挙に行かない国民の責任

でも、これは中小企業で働く大部分の国民にも責任があります

なぜなら、日本の投票率は極端に低い。数で勝るはずの中小企業側の人達が選挙をサボタージュしてしまったこともこうしたことを助長していると言えます。(確かに、工場やサービス業界が多いので、選挙の日が仕事だったりすることも理由としてあるでしょう)。

本来、代議員制民主主義国家である日本では、国民が選挙を通じて代表者を選び、そして、国会に送り重要なことを立法する。これがあるべき姿です。

これだけ、権利に対しての意識が高い時代なのに多くの人が最も重要な権利である選挙権を放棄してしまうとどうなってしまうでしょう?

当然ながら選挙で一部の組織ががっつり動けば国政を動かせてしまうのです。

大企業などは連合など労働組合が組織化されてますし、公務員も自治労などの組織があります。

結果として、人数では圧倒的大多数の中小企業で働く一般国民の多くが自らの権利を放棄してしまため、こうした強く組織化された大企業や公務員に有利な法案を上げる政治家がどんどん国政に選ばれちゃいます。これは、与党である自民党も野党の多くも同じです。

じゃなきゃ、経済全体を地盤沈下させて一部の輸出産業にしかメリットのない消費増税なんて普通可決しないはずです。でも、それは私達みんなの責任なのです。

日本の少子化の本当の解決策

さて、話を少子化問題に戻しましょう。
こうしてみてみると、都心部に保育園を増やすということが少子化問題の抜本的な解決にならないことが容易に想像できます。

なぜなら、そもそも中小企業で働く人の結婚率が極端に低いからです。

そりゃそうです。この20年のデフレで疲弊して所得が伸びていないうえに、消費増税で強制的に物価をかさ上げされれば生活で精一杯となります。つまり、日本の少子化問題とは、経済失政に伴う中小企業で働く人達の貧困問題と密接に関係しているのです。

日本の少子化対策とは?

ここでヒントが見えてきます。
本当の日本の少子化対策とは何なのでしょう?

それは、2/3を占める中小企業で働く普通の日本人の富を増やす政策をすることです。それはすなわちGDPの60%を占める内需振興策、要は消費と投資を増やすことです。

残念ながら、大企業の多くは輸出企業で株主の多くは海外投資家です。つまり、日本国内がどうなるかよりも、自社の利益の最大化を優先します。こうして、法人税減税と消費税増税がセットのパッケージとして政権政党が変わっても度々立法されてきました。

その結果、1997年の消費増税、そして、2014年、2019年と追加の消費増税をするたびに多くの中小企業が倒産。一方で輸出系企業の利益は過去最高を更新します。実に1997年の増税直後は年間の自殺者数は3万人にも登ったのです。私はこの20年の日本を経済失政を通じたポルポトや毛沢東の大躍進に引けを取らない、不作為の大虐殺政策だと思ってます。

平成から令和平成を振り返って・・・・ロスジェネ経営者の逆襲

さらに、2000年代初頭に行われた派遣法などの諸改革は大企業にとっては良い改革でしたが、多くの人の職を不安定化させ、消費増税と合わせて日本のデフレを長期固定化させました。私の世代がまさにこの時代に社会人になったのですが、1学年200万人を雇えるような雇用は当時ありませんでした。中小企業はどんどん倒産し、銀行すら倒産し金融システムは崩壊の一歩手前でした。

この時期に保育園を増やしたのが日本の少子化対策なのです。
これで出生数が増えれば奇跡ですよね。

韓国の公務員家庭の出生率は平均の2倍

ここで、ここで面白い(面白くはないのですが・・)データがあります。
このヤバい日本より、さらに少子化問題でやばい状況になっている国があります。

それがお隣の韓国です。

韓国の合計特殊出生率はなんと0.88です(2019年)。
ソウルに限っては、なんと0.69。日本でも1.4近くある(東京は1.2ちょっと)わけで、この数字が続けば遠くない未来に国家が消滅することを意味します。

ところが面白いデータがあります。
なんとこんな時期でも「公務員家庭だけに限ってみればその倍の出生率」
これが意味することは何でしょう?

「人は生活が安定し家庭を持てれば子供が欲しくなる」

 

これが答えです。

もちろん、戦後間もない日本は生活は安定してなかっただろう、というツッコミもあるでしょう。

あの時代のように、子供が労働力であり資産であった時代は別として、現代社会においてはもはや子供はある意味多くの国民にとっては贅沢品になってしまっている。

いや、結婚すら贅沢になっているのが日本や韓国の現状だといえるでしょう。

日本の少子化最大の問題は婚姻率の低下

さて、こういうお話をしてしまうと、昨今の日韓対立から韓国の悲惨な状況をザマァという人もいるかもしれません。ですが、残念ながら経済成長率だけで見てしまえば、日本ははるに韓国より失敗国家です。

なにせこの20年間ほぼゼロ成長だったわけですから。
韓国は財閥に富が集中しすぎたという点で、社会構造は日本より更に歪ですが一応成長はしているわけですから。

今は日韓で喧嘩しながら仲良く少子化を競い合って東アジアの力を落としている場合ではなく、ともにこの問題を解決して国力を高めていく必要があるでしょう。

そこで、このエントリの答えが見えてきます。

日本がやるべきことは景気対策を通じた少子化対策

ここまで読んでいると少子化そのものが問題ではないことが見えてきたと思います。

確かに経済成長を通じて合計特殊出生率は成長率がまだ高かった80年代でも既に低下し始めていました。ですが、このトレンドを固定化させたのは間違いなく1997年の消費増税からスタートした日本のデフレーションです。

① デフレを通じて、雇用が不安定化し団塊世代の次に人口の多かった団塊ジュニアの婚姻率が異常な低さとなってしまったこと。

② また、大企業を優遇した経済政策を行ったことで、人口の移動が都心部に集中し結果として婚姻率の低下に拍車をかけてしまった

この2つが日本の少子化にとっての最も大きな理由でしょう。

となると、解決策はシンプルです。都心部に保育園をいくらつくっても解決にはなりません。なぜなら都心部を優遇して保育園をつくればつくるほど、都心部に人口が集中しますが、今の雇用環境下では都心部人口が増えるほど、婚姻率が低下してしまいます。

そうなれば、出生数そのものが減ってしまうからです。

では、やることはといえば上記の2つの根本問題を解決することです。

その1)景気浮揚を通じた雇用の安定化

まず行うべきは景気浮上を通じた雇用対策です。
仕事さえあれば、生活は安定します。

明日がみこめれば、人は家庭を持ちたいと思います。
派遣労働や不安定な職であれば結婚どころではありません。

まず、雇用者数の圧倒的多数を占める中小企業をはじめとした大企業以外で働く人に経済成長を通じた富の再分配を進めていくのです。とはいえ、決して大企業から富を奪え、とか、公務員の給料を下げろ、といったルサンチマンを言うつもりはありません(多少法人税は上げたほうが良いと思いますが)。

とりあえず、経済を成長させたときの果実を中小企業はじめ一般国民に行き渡るようにすればよいのです。つまり、金を使って投資と消費を増やす、ということです。

いやいや。日本は破綻仕掛けてるからお金がないよ。そんな風に言う人もいるかもしれません。が、このエントリを読む人であれば気づいていると思いますが、日本には財政問題はありません。

虚構の財政問題を理由に消費増税がなされましたが、自国通貨建ての国債が破綻する確率はゼロです。今はどんどん国債を発行し予算を増やしていけばいいのです。

ちなみに、アメリカも中国も成長している国は皆、そうしています。
日本だけが、将来世代にありもしない不安をもたせた上に増税で体力を奪った上で「最近の若いものは」とか「増税が」と言ってるのです。

ノストラダムスの大予言よりたちが悪いジョークです。

その2)地方創生

私も地方出身のスタッフを見ていて感じます。
それは今の時代、夫か妻いずれかの両親が近くにいないと結婚していても子供を育てることはとても難しいということです。

確かに大企業や公務員などまだ雇用が比較的安定していて、勤務時間も融通が効く大組織で働く人は保育園などのサポートでなんとかなるでしょう。でも、中小企業で働く人は保育園があったところで、両親のサポートなくして子育ては現実的にはかなり厳しいものです。

なぜなら、中小企業の雇用の多くはサービス業や工場といったシフト勤務です。
シフト勤務であれば、保育園の運営時間外に託児ニーズが発生してしまうこともあります。

そんな時やはり頼りになるのは家族です。
ですので、中小企業で働くスタッフで子供を持つ人の多くはラッキーなことにご両親が近くに住んでいる人がほとんど。つまり、都内生まれの人です。

逆に地方出身で、単身東京に出てきたような人同士のカップルはこうしたフォローが難しく、子供を持つことは現実的でなくなります。

となると地方出身者にとって最も良いこととは何でしょう?

それは生まれ育った街でそこそこの仕事があり、家族の近くで結婚することではないでしょうか?

そうすれば、多少東京より給料が東京より安くなっても生活は安定し、家族を持つことが贅沢ではなくなります。

まとめ – 結局は自分たちが変えていくしかない

いかがでしょう?

少子化=保育園を増やすことが解決と思っている人が多いですが、かつて現場にいた感覚としては解決策ではないと断言してきました。むしろ、政治家と保育運営会社の癒着を招き、レントシーキングを増やしてしまう結果になります。

また、保育園を単純に都心部に増やしたところで、その受益者は既に恵まれている大企業で働く人や公務員層であってここをいくら優遇しても子供は増えません。

それより大事なのは、今、結婚しようにもできない人が結婚できるような世の中にすること。そして、結婚したごくごく普通のカップルが子供を1人や2人くらいは持つ余裕のある経済環境にすること

こちらが大事なはずです。

目の前の現象の応急措置ではなく問題の原因解決を

日本人は起きた出来事に対して、応急処置をすることは得意ですがその本質的な原因を特定し対処することが苦手です。

このことは、下記のエントリでも紹介しています。

日本とジグザグ型変化日本人とジグザグ型進化(マクロデザインVSミクロ最適化)

少子化問題が起きたから、保育園を作るというのは一見解決策ですが、実は、問題の本質的な解決には繋がりません。

日本は、かつての大戦の際にも同じことをしています。まず、戦争することありきで、真珠湾攻撃の細かな作戦を立てるようなものです。大事なのは、そもそも論を議論することです。はたして、アメリカと戦うべきなのか、あるいは、弱そうなイギリスとオランダだけと戦うのか。戦うにせよ落とし所をどうするのか。こういう議論をせず場当たり的な反応をお役所仕事的に繰り返して我が国は一度亡国の寸前まで到達してしまったのです。

大事なそもそも論とは何でしょう?それは「本質的な原因の特定」ではないでしょうか?

今、私達が日本で観察する大部分の社会問題の多くははっきり言ってしまえば、マクロ経済政策のミスの結果として発生した経済停滞に付随した諸現象のひとつひとつでしかないのです。

であれば解決策はただひとつ。マクロ経済対策 ~それはすなわち財政と金融政策なのです。なのに、こうした細かい議論ばっかするのは日本人の悪い癖です。

でも、もうこんなことやってる余裕は日本にはなくなってきました。

そろそろ、経済政策を一部の既得権を持っている層を優遇するものから、大多数の一般国民の為の政策に切り替えていく時期にきているはずです。アメリカもイギリスもその流れですし、今後EUも内部崩壊していくことでしょう。

既得権益ではなく国民全体にお金が行き渡る経済。そのほうが間違いなく経済は成長し、結果として自分のことしか考えず、目先を追いかけてる経団連の会社にだって大きなメリットがあるのです。消費増税とバーターで法人税を少し下げてもらうことにあくせくするより、経済のパイ全体を大きくしてみんなで分かち合うほうが遥かによいじゃないですか。

じゃないと、経団連はほんと下記のツイートどおり、単なる日本の足を引っ張る無能集団であることをどんどん証明するだけです。


そうならないようにするためにも、正しい人を国政に送り、官僚をちゃんとコントロールして正しいことに頑張ってもらうようにすることですね。

それでは!

大山俊輔