「ストレス社会」とも言われる現代。
誰しも一度は、耐え難い感覚に苛まれた経験があるのではないでしょうか。
日本国内のうつ病・うつ状態の患者割合は増加傾向にあります。
ストレス性疾患が原因で、職場を休職するケースも少なくありません。
大山俊輔
ストレスが私たちにとって身近になった今、このように考えはしないでしょうか。
- 日々のストレスを軽減する方法は無いだろうか?
- いつもストレスを感じているけれど大丈夫だろうか?
病気になってしまうのでは… - ストレスと、もっと上手く向き合いたい
この記事では、サイエンス・ヘルプのリーダーとして世界的に注目されてきたケリー・マクゴニガルの著書『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』を要約、解説しながら、ストレスとの正しい向き合い方についてまとめていきます。
ビジネスパーソンのメンタルヘルスケアはとても重要な問題だと考えます。
日々与えられるストレスにどう対応すべきなのか、ご紹介していきたいと思います。
なお、以前、ケリー・マクゴニガルさん著『スタンフォードの自分を変える教室』についてもまとめています。
こちらについてもご参照ください。
目次
ストレスは必ずしも害ではない
ストレスは悪いものであり、避けるべきものである。
多くの方がそうお考えではないでしょうか。
『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』では様々な実験の結果から、以下のことを示しています。
ストレスが体に悪いのは思い込みのせい
ある実験で、参加者の半分には「ストレスは悪影響である」と説明、もう半分には「ストレスには良い効果がある」と説明したところ、実験後、前者はストレスホルモンであるコルチゾールの値が上昇。後者からは脳の成長ホルモンが多く分泌されました。
「ストレスにはよい効果がある」と考えたことが、このような効果をもたらしたとなされています。
ストレスの捉え方で幸福度も変わる
「ストレスには良い効果がある」と思っている人たちは、そうでない人たちにくらべて、うつ状態になりにくく、人生に対する満足度が高いことが調査でわかっています。
また、そういった人たちが、ストレスを感じる出来事(離婚、死別、転職など)に出くわしていないからではないこともデータから判明しています。
ストレスは「まさか」を可能にする
ストレスをポジティブに捉えることができれば、人は直面している問題に対して新しい考え方を学ぼうとし、実践しようとします。
「あれもこれもできない」といったネガティブな考えと逆の変化が起こるのです。
ストレスの欠如は人を不幸にする
ストレスが必ずしも害ではないことをお話しました。
さらに、ストレスの欠如こそが私たちを不幸にしうるということについて、説明します。
ストレス度数の高い国ほど、繁栄度・幸福度・人生に対する満足度が高い
121カ国、12万5,000人を対象にした調査から判明しています。
幸福な人たちの多くはは、大きなストレスを感じていながらも、精神的に落ち込まず、理想的な人生を送れていると考えていることがわかりました。
一方、不幸な人たちには、ストレスの明らかな欠如が見られ、喜びをほとんど感じていないことがわかりました。
ストレスは生きがいと関連している
ストレスを感じた経験が多い人ほど、人生に大きな意義を感じており、生きがいのある人生を送っていると考えていることがわかりました。
例として、18歳未満の子どもを教育している人たちは、日々大きなストレスを感じているにもかかわらず、ほほえんだり、笑ったりすることが多いようです。起業家の場合、大きなストレスを感じた日に興味深いことを学んだと考えたと答えました。
ストレスが欠如すると健康に悪影響をきたす
ある調査では「非常に退屈」と答えた中高年の男性たちは、その後心臓発作で死亡するリスクが、2倍以上も高くなることがわかっています。
別の調査では、「大きな生きがいのある人生を送っている」と答えた人たちの死亡率が30%も低いことがわかっています。
ストレスと向き合おう
これまでストレスがもたらす効果をご紹介してきました。
ここからはストレスと向き合う方法を解説します。
ストレス反応を受け入れる
大事な場面で、ストレスや不安を感じた時、それは「興奮や、エネルギーや、やる気の表れ」であると著者は述べています。
ストレス反応は受け入れることでチャレンジ反応となり、行動の力となります。
反対に、ストレス反応に抵抗したり、不安を避けることは、さらなる不安、そして回避行動を招きます。
「思いやり・絆反応」のマインドセットを育もう
ストレスを感じると自己防衛に走ると思われがちですが、ストレスを感じると仲間を守ろうとする、いたわりの気持ちが生まれることも多いのです。
これを著者は「思いやり・絆反応」と呼んでいます。
これが起こると、思いやりが強まり、勇気が湧き、頭の回転が早くなります。
また、自分よりも大きなものに貢献しようと考えるようになることで、健康度・幸福度は高まります。
反対に、自分だけの目標に邁進している人たちは孤立のリスクも高く、うつ病になる可能性も高まります。
他者のため、コミュニティのために何ができるか、考えてみましょう。
ストレスがくれた成長を振り返ろう、ストレス目標を設定しよう
最近経験したストレスを想像してみてください。どういった対応をとったでしょうか。
その状況のなかで、得たものはあったでしょうか。
あった場合、そのおかげであなたの生活はどのようによくなったでしょうか。
気付きがあった、考えが変わった、成長をとげた、人との関係が深まった
ぜひ、フィードバックしてみてください。
また、著者は「ストレス目標」の設定もおすすめしています。
新しいことを始める時、節目に「ストレスによってどんなふうに成長したいだろう?」と考えてみるのです。
どんなところにストレスを感じそうか、難しそうな点はどこか、誰かと話し合ってみるのもよいでしょう。
まとめ
私たちにとってあまりにも身近な”ストレス”ですが、ネガティブなイメージがつきまとい、上手く向き合えないとう方は多いはずです。
『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』はストレスが人生に役立てることができるものなのだと教えてくれます。
著者のケリー・マクゴニガル氏はこう述べています。
「あなたさえその気になれば、ストレスとの付き合い方はいくらでも変えられる。」
本書には、具体的なエクササイズも多数掲載されています。
ぜひ、ストレスを力に変え、人生をより豊かにするチャレンジに取り組んでみてはいかがでしょうか。
また、このコロナ禍ストレスを抱えてきた方も多いと思います。
私なりに、このストレスを味方としてどのように自己成長につなげるのかについて本を出版しました。
このコロナ禍、様々な挑戦に取り組む人は従来では考えられないストレスを抱えながら日々戦われていると思います。自分もその一員として、うまく、このストレスを味方にする方法をまとめてみたのでご興味ある方は是非読んでみてください(^o^)
大山
1 ストレスを見直す(すべては思い込み―「ストレスは役に立つ」と思うと現実もそうなる/ ストレス反応を最大の味方にする―レジリエンスを強化する/ ストレスの欠如は人を不幸にする―忙しい人ほど満足度が高い)/
2 ストレスを力に変える(向き合う―不安は困難に対処するのに役立つ/ つながる―いたわりがレジリエンスを生む/ 成長する―逆境があなたを強くする/
おわりに―新しい考え方は、ひっそりと根を下ろす)
スタンフォード大学の心理学者。
心理学、神経科学、医学の最新の知見を用いて、人びとの健康や幸福、成功、人間関係の向上に役立つ実践的な戦略を提供する「サイエンス・ヘルプ」のリーダーとして、世界的に注目を集める。
メディアでも広く取り上げられ、「フォーブス」の「人びとを最もインスパイアする女性20人」に選ばれている。
TEDプレゼンテーション「ストレスと上手につきあう方法」は900万回超の再生回数を記録。
著書に、20カ国で刊行され日本でも60万部のベストセラーとなった『スタンフォードの自分を変える教室』などがある。
大学での講義のほか、活発な講演活動のかたわら、心身相関を重んじる立場から、グループフィットネス、ヨガの指導も行っている。