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ロスジェネ世代とは?日本経済とともに見る就職氷河期世代の歴史

ロスジェネ世代とは

ロスジェネ世代、またの名を就職氷河期世代
この言葉ほど、漠然と使われてきつつも、当事者世代を複雑な想いにさせるものもありません。

  • フリーター
  • ニート
  • 引きこもり

こうした言葉が定着し、社会問題として認知され始めたのはこの2010年前後からです。

大山俊輔@ロスジェネ社長副業中

自分自身1998年大学卒業のロスジェネ世代。今は会社社長しつつ、新規で副業はじめてそちらも頑張ってます。

このロスジェネ世代とはどのような世代なのでしょうか。
そして、現在、どのような問題があり、そして、今後、どのような課題がでてくるのかについてこの記事ではご紹介します。

ロスジェネが該当する就職氷河期世代について

まず、ロスジェネ世代に該当する就職氷河期という時代を見てみましょう。
一般的にロスジェネ世代に該当するのは1970年代前半から1982年までに生まれた人々のことを指します。

では、このロスジェネ世代が生まれた時代とはどのような時代だったのでしょう。

団塊ジュニアの誕生

日本のGDP成長率推移

出典:http://honkawa2.sakura.ne.jp/4400.html

第二次世界大戦の敗戦後、日本は国防をアメリカに任せて経済発展に邁進しました。1955年から1970年まで日本はほぼ毎年年率で10%近い経済成長を達成し、一躍経済大国の仲間入りを果たしたのです。

見てください、上のグラフの左側。
いっときの中国じゃないですよ(笑)。

平均で10%近い成長です。賃金上昇率はGDPとほぼ連動します。
すなわち、努力した人もしなかった人も含めて平均で毎年10%近い所得の上昇があったそんなボーナスステージです。

この時代に新卒社員として社会人になったのがいわゆる団塊世代
そして、ロスジェネ世代は概ねこの団塊世代の子どもたちにあたるため、団塊ジュニア世代とほぼ重なると言われています。

バブル景気とお受験戦争

日本の好景気はこの後も続きます。
その後、1980年代にかけても日本は経済成長しバブル景気に。

山の手線の内側の地価でアメリカ全土を買えてしまう、と言われるほどの好景気に沸きました。

ロスジェネ世代は1学年200万人世代と言われています。
2019年のニュースで、この年の出生数が86万人に減少したことが話題になりましたが、ロスジェネ世代はその倍以上の人数がいました。

好景気とその多い人数からロスジェネ世代の学生時代は受験戦争の時代と言われています。子供の数が増えたことで、有名大学は非常に狭き門となります。

全国に塾や予備校が誕生し、家庭教師というビジネスモデルが登場したのもこの時期です。

バブル崩壊と就職氷河期の誕生

ロスジェネ世代が高校や大学を卒業し、社会に進出する前後の90年代に大きな変化が経済で起きました

  • 1つ目は90年代前半のバブル崩壊。
  • 2つ目は90年代後半の3%→5%消費増税をきっかけに引き起こされたデフレ経済です。

バブル崩壊では就職率はそこまで悪化しませんでしたが、97年にはじまった景気後退により就職率は急激に悪化。新卒での就職が突如狭き門となりました。

ロスジェネ世代の不幸はこの急速な経済の悪化と連動します。
ロスジェネ世代の父母世代は、20代〜30代の時に高度経済成長時代を謳歌し、バブル時に社会人として40代〜50代を過ごしてきました。

つまり、日本として一番いい時代に社会人を経験しています。
一方で、ロスジェネ世代はその父・母を見て育ちました。したがって、経済とは常に成長して良くなっていくもの。だからこそ、受験勉強を頑張り少しでもいい学校に入れば良い。こうしたゲームを信じてきました。

しかし、社会人になる手前に突然の経済悪化によりはしごを外されてしまいます。
これがコロナショックのような予期せぬ問題であればあきらめもつくのですが、このときのきっかけは橋本龍太郎内閣による消費増税。つまり、人為的な政策判断ミスによる恐慌でした。

大学卒業者の就職率の推移(ロスジェネ世代)

大卒でも1997年〜2006年に社会に出た人たちの新卒就職率は6割〜7割。
つまり、3割〜4割の人が大学を卒業した時に仕事がない時代が突如現れました。

高卒・中卒の方の就職率は更にひどいものでした。

また、もう1つ、小さなコブがリーマンショックの時にあります。これが第2就職氷河期と呼ばれる世代です。現時点では多くが30代前半で注目を浴びてはいませんが、ロスジェネ世代同様、今後、大きな問題となっていく可能性もあるのではと思われます。

ロスジェネ世代の誕生と日本の問題

日本の課題

ここで、日本の問題としての新卒一括採用の仕組みとそれがロスジェネ世代にどのような影響を与えたのかについて論じていきたいと思います。

① 流動性の低さ:新卒採用を逃すと挽回チャンスが少ない

新卒一括採用システム

まず、日本社会の特徴として新卒一括採用システムがあります。

高校、大学を卒業する前から一斉に就職活動を開始。
学生時代中に就職を決めて、一斉に社会進出をするシステムです。

この仕組みは大手企業にとっては潜在性が高い優秀そうな学生を新卒で採用し、囲い込むというメリットがあります。一方で、かなり変わったとは言えども、この新卒採用で人生が大きく決まってしまうのも日本社会の特徴です。

特に経団連など大企業に入社すれば、その企業の倒産確率は非常に低くなります。
一方で、中小企業では創業から10年で実に90%以上がなくなってしまうような新陳代謝の激しい世界。

就職氷河期世代に社会進出した人たちの多くは、

  1. 運良く大企業・官公庁に滑り込めた層
  2. 中小企業に採用された層
  3. 派遣、フリーター、ニートになった層
  4. いずれにも属さない層

の4つに分かれることになりました。
問題は、上の層への流動性はこの新卒採用モデルが足かせとなるため、ほとんどない一方で、下方に落ちていく流動性だけは高いことです。

2000年代後半のリーマン・ショック、2010年代前半の東日本大震災などによる経済不況に合わせて、企業のリストラが行われますが、そのたびに、大企業から中小企業へ、中小企業から派遣、フリーターへと転落が起こりました。その結果、1はますます狭き門へなる一方で、日本人の平均収入は20年以上かけて大幅に下落するのです。

② 世代格差問題:上の世代を温存することで若手世代を犠牲にするシステム

かつて、ジェームズ・C. アベグレンは日本的経営の強みは、

  • 企業別組合
  • 終身雇用
  • 年功序列

であると述べました。
この3つの慣行を「三種の神器」と呼びます。

確かに、政治的には米ソ東西が分裂しつつも、経済的には大きな変化のなかった1960年代から1980年代にはこの仕組みは非常に機能しました。ある程度、潜在力のある新卒社員をまとめて採用してゼネラリストとして育てて、多少の不平等はあれど給料を年功で引き上げることで社員の所属企業への忠誠心は高く、その力で日本企業は世界で勝ち進んだのです。

しかし、景気が悪化するとこの神話は持続可能ではないことが明確になります。

急速にバブルが崩壊したことで、日本企業の業績は急激に悪化。
さらに、日銀の総量規制の通達などの影響から、銀行のバランスシートも急速に縮小します。こうなると、銀行は改修モードに入るため、企業の新規投資は行われず経済は成長しません。

そして、年功序列で上にいる世代は自分たちがなんとか逃げ切れることを優先していきます。こうして、大企業をはじめ、新卒採用が90年代中盤以降、激減します。

その結果が先程の図でもあった新卒時の内定率の急速な悪化です。
こうして、1997年〜2000年代初頭にかけて、日本の新卒採用数は激減したのです。

③ 派遣制度の登場

こうした就職氷河期と時を同じくして導入されたのが派遣制度です。

日本の人材派遣制度自体は1980年代後半のの労働者派遣法施行によってスタートしました。しかし、ちょうど、就職氷河期世代が仕事が見つからずに切磋琢磨している時代と時を重ねて、派遣制度に大きな変化がおきました。

  • 1996年:対象業務を拡大
  • 1999年:対象業務の自由化
  • 2000年:紹介予定派遣の解禁
  • 2004年:製造業への派遣解禁

こうした制度変化により、新卒採用を逃した人々、または、日本的モデルからこぼれ落ちた人たちが派遣業に吸収されていきます。また、90年代以降急速に、自営業の廃業が進みそうした人たちの多くは派遣、パートなど非正規雇用に吸収されていきます。

日本の正規雇用・非正規雇用

出典:厚労省ホームページ

こうして、日本の就業者数のうち非正規労働は全体の4割近くを占めるようになります。

両極化を生み出したロスジェネ世代

日本の新卒一括採用システムと階層固定化モデルを通じてロスジェネ世代にはもう一つのキーワードがあります。

それが、「両極化」です。

この両極化がなされた最大の理由は日本の雇用環境の流動性の低さと新卒採用システムの組み合わせから出来上がりました。

ここでは、その両極化が意味することをまとめます。

圧倒的な人数

日本の出生者数の推移とロスジェネ世代
まず、ロスジェネ世代の不幸はその人数の多さです。

上記グラフからもわかるように、ロスジェネ世代の中核となる1970年代前半から1982年前後の出生者数は1学年200万人前後〜160万人台と非常に多いのです。確かに私の小学生時代、近所では新しい学校が続々と設立されていきました。

しかし、大学などの高等教育の枠はそう簡単に増やすことはできません。
かくして、私達ロスジェネ世代の多くは受験戦争世代と言われ、学生時代青春の多くを受験勉強に注ぐ人が多かった時代と言えます。

そして、受験勉強が終わった後の世の中に待っていたのが経済停滞による採用枠の激減です。
今まで、8割以上が就職していた時代から翌年になった瞬間、6割前後まで落ち込むような急激な変化を理解し受け入れることができた学生は少ないでしょう。

かくして、今までと同じ就職活動をして100社以上面接を受けて全滅。
こんな厳しい経済環境に突然叩き落されてしまったのです。

2010年代は新卒は幸い恵まれていると言えるでしょう。
これは、ちょうど団塊世代の引退、そして、1学年100万人とロスジェネ世代の半分程度の子どもたちが社会にでていくようになり企業側も採用の余力が出たことが大きいと思われます。

兎にも角にも、日本モデルはどのタイミングで社会に出るかもその後のキャリアに大きく影響が出てしまいます。

極端な差

この硬直的で流動性の低い日本の雇用環境下でははじめの新卒採用で身分が決定します。
ここで、大手企業、官公庁に潜り込めればよほどの問題を起こさない限りは、会社が存続する限りは逃げ延びることが期待できる人生があります。

一方で、新卒採用で失敗した人はスタート時点からバイトや派遣などでスタートします。
そして、バイトから正社員、派遣から正社員の道は非常に厳しいだけでなく、仮にそれが可能だとしても新卒組と比べると出世の可能性は著しく低くなります。

もちろん、これは大企業や官公庁の話で、ITベンチャー企業などに転職して成功した人もいることでしょう。しかし、絶対数としては非常に少ないのが実態です。

こうして、20代、30代と時間を重ねるごとに年功序列で給料があがる新卒潜り込み組に対して、非正規組は給料が年令を重ねてもあまり上がることはありません。したがって、徐々に年収で大きな差がついていき、生涯賃金に至っては数千万円、いえ、億円単位の差がつくようになるのです。

生き残っても先行きの不安

サラリーマンレース出典:インベスターZより

では、新卒採用で潜り込めると幸せなのでしょうか。
これは、ケースバイケースだと言えるでしょう。

なぜなら、新卒採用で大手企業に潜り込めたとしても定年まで出世して幸せになれるのはわずかです。

それ以外の人たちは、それなりの生活は保証される一方で、40代以降になると徐々に選別にかけられて黄昏研修はじめ様々な仕組みによって50代以降は年収が下がり始める人もでてきます。また、子会社や関連会社への転属などにより体の良い都落ちなどはよくある話です。黄昏研修はその代表と言えるでしょう。

人は新しく何かを得るよりも、一度得たものを失うことを極端に恐れるようにプログラムされています。
まさに、上記の漫画「インベスターZ」の絵はその恐れをうまく表現しているといえるでしょう。

確かに現時点で非正規よりは経済的に恵まれてるかもしれませんが、常に転落に怯えるというのもなかなかしんどい人生です。

コロナショックこれからの課題

2020年にはじまった新型コロナウィルス問題は今後ロスジェネ世代に大きな問題を引き起こすことになるでしょう。

なぜなら、コロナショックがダメージを与えたのはサービス産業や製造業
たとえ、安定してなかったとはいえ辛うじて、こうしたロスジェネ世代などの雇用の受け皿になっていた業種です。

この業界が大きなダメージを受けることで今後多くの店舗の撤退、統廃合が行われることになるでしょう。また、企業の倒産、採用の凍結、そして、レイオフなどが断続的に続くことになります。

また、菅義偉政権は中小企業の統廃合をその政策に位置づけています。
菅義偉政権 菅義偉政権の政策が日本経済と中小・ベンチャー企業に与えそうな影響

こうなってくると、中小企業は採用を減らしていかざるを得ません。
今後、40代から50代、60代へと歳を重ねていくロスジェネ世代にとってその仕事の選択は更に厳しい門へとなっていくことでしょう。

国や各地方自治体でも就職氷河期世代向けの職種を開放していますが、非常に狭き門。まさに、1学年200万人と今の倍以上いたため、受験戦争で1ランク下の学校を受験してきたこの世代にとって、再び面接戦争へとつながるのです。

■ 山口県職員採用「ロスジェネ枠」、競争率100倍超
https://news.yahoo.co.jp/articles/08440f8f172f38325dff80436e18fd06b55ce6c6

こうしてみていくと、国にはもうやってるアピール以外の打つ手はないと思われます。
となると、今、まだ体力や気力があるうちにサバイバルをしていくための手を売っていく必要があるのではないでしょうか。

私自身も40代中盤のもろロスジェネ世代です。
なんとか、30歳で勝負してそこそこの会社を作りましたがコロナショックで何億もの借金。
で、再びピンチです。

ですが、一つ、大企業で安定しているようにみえる同世代の仲間より、自分が自信を持ってることがあります。
それは失うことを恐れないメンタルと、仮にすべてを失ってももう一回なにかできるだろうという達観です。

中小企業の経営者なので秘書もいないですし、コピー取りから掃除、会社のパソコンの修理から営業からちょっとしたサイトのコーディングまでなんでもやってきました。なので、生命力だけは雇われ時代より強くなったと思いますし、最悪、もう一回国や会社に頼らずゼロからやってやろうと思ってます。

私自身、2010年くらいまでは、この就職氷河期世代問題を政治的、経済的に解決することを期待していました。
しかし2020年に入り経済状況が更に悪化し、ロスジェネ世代の中核が40代に突入する中、政策に期待することはもはや手遅れと思ってます。
もちろん、運良く自治体のロスジェネ枠に潜り込むのもありでしょうが、それでは、多くは救われません。

だからこそ、私は同じ世代のロスジェネ世代の人たちが一人でも、国や会社に頼らずともなんとかやっていける状態を作っていくことが大事だと思っています。
月に1万でも3万でもいいので、企業や国の制度ではなく自分で稼ぐ体制ができれば、そこに余裕がでてきて様々な選択肢も出てくると考えるのです。
ロスジェネ世代と生き残り ロスジェネ世代のサバイバル戦略のひとつとしてブログだけでもはじめておこう

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ロスジェネ世代に属している人であってもその解釈はかなり異なります。

うまく、大手企業や公務員に潜り込めた人はおそらくこの状況ですとずっとしがみついてでも定年退職まで居座る選択肢をとっていかざるを得ません。

いつ、自分もふるいにかけられるかわからない不安を抱えながら、家庭を持ち、ローンを抱えて日々ビクビクするのもなかなかしんどいなぁと思います。一方で、新卒採用時に恵まれないまま、不遇の20代〜30代を過ごしてきたロスジェネ世代では、こうした世の不条理について思うところも多いのは仕方のないことです。

しかし、世の中はそう簡単には変わりません。
今のいびつな社会は数十年かけて完成したのです。

となると、仮に良い方向に舵が取り直されるとしても、その好影響が出ていくにも同じくらいの月日がかかることでしょう。つまり、待ってたら死んじゃいます(笑)。

となると、今、まず変わることが出来るのは自分だけです。
自分にとって、こうした時代に生まれつつ、それなりに人生を楽しんでいくためには、

  • 他人と自分を比較せず
  • 自分として何をしたいのかを一生懸命自分と向き合って考えていく
  • 他者に依存しないでも、最低限の生活ができる仕組みづくりを今のうちにはじめておく

これしかないのではないでしょうか。

幸い、受験戦争時代のロスジェネ世代は地頭がいい人が多いです。
今から、新しいことに着手するのは遅くはないです。

大山俊輔