大山俊輔
・ 取引先に出したメールの返事来てるかな?
といった、仕事関係の人もいるでしょうし、
・ とにかく新着のメールが気になって仕方ない。
という、立派なスマホ中毒の人もいることでしょう。
目次
原因はオペラント条件づけ
実は、私も今月ちょっとしたことがキッカケでこの罠に陥りました。
私達の仕事はかなりメールを使うことが多いです。中でも、売上と直結する体験レッスンのお申込みのメールがどの程度来るか、というのはついつい気になるものです。
ましてや、ちょっと動きが少ないときなどは何度も「来ないかな~」と思いながら
gmailを立ち上げてしまいます。
こうして一度気になってしまうと完全に悪循環のループにはまります。
仕事に集中してる最中も定期的にチェックしてしまいますし、歩いてる最中もチェックしてしまいます。
こうした不安と報酬を期待した心理的状況をアメリカの心理学者スキナー(B.F. Skinner)は「オペラント条件づけ」として説明しました。
パチンコ、カジノ・・・すべてオペラント条件づけによりハマってしまう仕掛けになっている
以前、「FOMOって何? - やってる?FOMO対策」というエントリを書きました。
この中で、このハマるメカニズムについてざっくりと書いています。
■ 読んでみよう
実は昔からカジノだったりパチンコといったギャンブル業界ではこのオペラント条件はよく知られた存在でした。
簡単に言っちゃうと、
↓
ご褒美がある(パチンコだとフィーバー)
↓
いいことがあると学んで同じ行動を繰り返す
↓
ご褒美がある
↓
繰り返す頻度があがる
↓
廃人化
こうしたループを作ることを言います。
テクノロジー商品の多くもこの仕組を意図的に使っている
こうして書くと、
・ でも、それってカジノとかパチンコの話でしょ?
・ 自分には関係ないよ
といった声が聞こえてきそうです。
でも、ちょと待ってください。
実は現代社会で最大のオペラント条件付けをしてしまうデバイスが手元にあるのです。
そう。スマホです。
スマホという機械そのものが問題ではなく、その中にインストールされているアプリの中にはこのオペラント条件付けを活用したものがゴロゴロしています。
代表的なものとしてはFacebookやインスタといったSNSやコンプガチャのようなゲーム。
これらは、開発する側もオペラント条件付けを理解したフィードアルゴリズムなどを作っています。
こうした開発側の意図を知らないと気づかないうちに一日に何度もこうしたアプリを立ち上げてしまうくせがついてしまいます。
メールは自動ドーパミン装置
でも、SNSもほとんどしないしゲームもほとんどしない人はこの議論は関係ない、と思ってしまいがち。
ですが、そんな人も一生懸命お仕事をされていると思います。
そして、もともと悪意を持って開発されたわけでもないはずですが、このオペラント条件付けにピッタリハマったものがあるのです。
それがメールです。
メールというのは良いメールも悪いメールも含めていつやってくるかわかりません。
メールを出すのは相手であって自分ではありませんから。
オペラント条件づけの中でもはまらせることを「強化」といいます。
強化するタイミングをコントロールすることを「強化スケジュール」と呼びます。これは、何かの行動(パチンコなら玉を出すために手を動かす)ことに対して、報酬をどのような間隔で与えるかを設計するときの言葉です。
強化スケジュールには、①定率強化スケジュール(fixed ratio)と②変率強化スケジュール(variable ratio)の2つがあります。
行動を一定数繰り返すと報酬がもらえる。報酬をもらえるスケジュールが一定なので、脳がおかしくならない。②変率強化スケジュール(variable ratio)
行動を繰り返すとランダムに報酬がもらえる。1回目の行動でもらえることもあれば、10回してももらえないこともあるため、ハマってしまい中毒になってしまいやすい。代表的なものは、パチンコ、カジノ、SNSなど。
さて、メールはどちらでしょう?
まさに、パチンコと同じ
そのため、一度、気になってメールを立ち上げてなにか来ていることがあると、
その後は、メールが来なくても気になって立ち上げてしまうのです。
このあたりのことは、現在では脳科学的にもドーパミンと呼ばれる脳内物質の分泌プロセスを通じて説明されています。
振り回されないようにするオススメ法
さて、メールにはまって何度も立ち上げてしまう仕組みがわかりましたね。
となると、手っ取り早く改善する方法は何でしょう?
これはシンプルに「変率強化」であったメールチェックを「定率強化」に変更するだけでもかなり改善します。つまり、今までは気になったらすぐ立ち上げていたメールですが、これをパソコンやスマホのアプリなどを活用して、開封できる時間に制限を加えてしまうのです。
実際、オペラント条件づけ発見の親であるスキナーも鳩の実験では定率で餌を与えるときと、変率で与えるときでは変率の方がはるかに鳩は行動(この場合は突っつく)を行ったということです。人も鳩もギャンブル性があるとハマってしまうのです。
ちなみに私はこうしてます。
(こうせざるを得ませんでした(笑)。
① パソコン側における制御
オススメのアプリは、”Inbox when Ready”というGoogle Chromeのアドオンです。
このアプリを使うことで、メールを確認することができる時間を決めてしまうのです。
私のケースでは、
・ 午前中:4時30分~7時
・ 午前中~午後: 11時~13時20分
の2つの時間帯だけOKにしています。
理由はシンプルで、朝一番は朝礼をするための準備やスタッフの欠勤などがあるかもしれないので、最低限のチェックが必要なため。
日中は、取引先とのやり取りのチェックのため。
ただし、この時間を過ぎたらメールは見れない。
こうすることで、1日2回の時間帯しかメールをしなくなります。
そして、それ以外の時間帯はメールに振り回されず、考えたり必要な作業をするためのアウトプットのための時間として有効活用できるようになりました。
② スマホ側における制御
私はiPhoneユーザーなのであくまでもiPhoneの事例となりますが、デフォルトでiOSに入っているスクリーンタイム機能を使えばこうした設定ができます。
iPhoneは使える時間設定を細かくはできないため、基本、制御するアプリ(gmail、Facebook、Newspicksなどのような変率強化スケジュールの出やすいアプリ)については、「常に使用するアプリから外して」その後、「休止時間」を設定することで、先程のChromeと同じような設定をすることができます。
自己防衛できないと気づかないうちに振り回されてしまうのは自分
いかがでしょう。
まだ、メールの怖さに気づいてない人もいるかもしれません。
ですが、ある時、自分の一日の時間が何に費やされているかを振り返ってみるとよいと思います。
一生懸命仕事をしている人ほど、SNSはあまりやらなかったりするかもしれませんが、意外とこのメールに時間を取られています。皮肉なことに、SNSやパチンコと同じメカニズムで・・・。
そうならないようにするためには、定期的に自分の時間の使い方を振り返るしかありません。
なぜなら、オペラント条件に振り回されるのも自分ですが、変えることができるのも自分しかいないのですから。
大山俊輔(ハビットマン)