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社員も社長もフリーランスも社畜です- 本質的な自立がない限り人は社畜になってしまう

社畜とは - 社員も社長もフリーランスも社畜です- 本質的な自立がない限り人は社畜になってしまう

社畜という言葉。
おそらく、ニーチェの畜群と誰かが重ねたのか実に悪い響きを持ったあやしく、かつ、自虐的な響きを与える造語です。

もし、サラリーマンという職種の多くが社畜だとすると、実は、経営者の多くも社畜です。社畜とは、会社や組織という箱が共同体と化した時にその場にしがみつく人たちを総称した用語だからです。

大山俊輔

本業は英会話スクール運営会社の経営。月間、30万PVのサイト運営と月額1000万以上のWeb広告運用をかれこれ10年以上やっています。一方で、別の会社では平社員もやったり柔軟にあらゆる職種をこなします。

私はサラリーマン歴は7年、経営者歴は15年です。
現在は本業では、英会話スクールの社長をやってますが別の会社では平社員もやってます。また、ブロガーとして副業も行っています。つまり、フリーランス、平社員、社長と全職種兼任なんです。

だからこそ言いますが、本質的に人は共同体化した組織に依存しすぎると、社畜になりやすい傾向があります。特に日本の職場は企業も官公庁も共同体化しやすいため、社畜という言葉が人口に膾炙しています。脱社畜サロンなんてオンラインサロンもあったそうです。

ところが、海外に目を向けてみると「社畜」的な表現はあまりないのです。
実際、英語でも「社畜」ドンピシャの表現はでてきません。

その理由としては、日本人よりも海外の人のほうが「組織に依存しない」生き方をしているからなのではないでしょうか。互いに依存し、そして、でるにでられなくなるほど、社畜になりやすくなる傾向があります。

そこで、このエントリでは「社畜」という概念とその意味を理解しつつ、どうすれば、社畜を脱することができるのかについてまとめました。

社畜は英語では?海外でも社畜という概念はあるの?

さて、それではまずはこの社畜現象を客観的に見るために、海外事情を見てみることにしましょう。

海外のドラマなどを見ていると、社畜的な概念がストーリーとして出てくることはあまりないですよね。

社畜を英語で調べてみると・・・

「社畜」があまり概念としてないとすると、英語での造語も少ないのではと思って調べてみました。そうすると、造語的に当てはまりそうなのは、

      • Company slave (会社の奴隷)
      • Wage slave(賃金の奴隷)

あたりでしょうか。

「畜群」の概念を提唱したニーチェはドイツの方ですし、それを応用し、”mass”=「大衆」の概念を打ち出したオルテガ・イ・ガセットもスペインの哲学者です。また、ナチスドイツ時代のごく普通のドイツ人たちがどのようにして、自ら自由を放棄して長いもの(ナチス)に巻かれていったのか。その心理状況についてはエーリッヒ・フロムがその著書『自由からの逃走』で詳細に記述しています。

実は起業家必見!?ホセ・オルテガ・イ・ガセットの『大衆の反逆』は生き方の指南書 実は起業家必見!?ホセ・オルテガ・イ・ガセットの『大衆の反逆』は生き方の指南書 – 要約・まとめ

こうして見てみると、人々が組織に過度に依存したり、抜けられなくなる現象は決して海外でもない概念ではないのです。

海外でも社畜はいるが意味も違うし、数も少ない

では、「社畜」という言葉がなかなか日本語以外の言語では出てこないのはどうしてなのでしょうか?

明らかに「社畜」という言葉の意味は、会社とそこで働く人が密接に関係していることがわかります。これは後述しますが、最大の理由は海外の人のほうが会社に依存しない生き方をしているからなのではと思われます。

良くも悪くも日本人は一度その組織に入るとそこにとどまってしまう。
特に、大企業や官公庁ではこれが顕著です。

これが、社畜という言葉を生み出した理由なのでしょう。

ブラック企業と社畜の違い

もう一つ、日本人が使い慣れたことばで「ブラック企業」というものがあります。この「ブラック企業」「社畜」の違いとは何でしょうか?

ブラック企業といえば、ワンオペ、社歌の唱和など通常の労働環境と違うマイナスイメージがありますね。一方で、社畜についていえば、その会社がはたしてブラック企業かといえば、そうした議論は少ないです。

つまり、

  • ブラック企業=会社側の問題
  • 社畜=人々がそこにとどまって出ていけない現象

として見ていくと整理ができます。

日本的雇用慣行とデフレが社畜モデルの根源的理由

では、この社畜モデルが日本で独自発展してきた理由を考えてみましょう。

それは、日本独特の雇用慣行と大きく関係しているのではないかと思われます。海外では、転職は当たり前ですが、日本では大企業、官公庁、地方を中心に一生涯を一つの組織で勤め上げる人はまだまだ数多くいます。

この辺りを中心に社畜という言葉が生まれる背景をまとめてみました。

1: 終身雇用と非流動的な労働市場

1つ目の理由としては日本の労働市場の独特の慣行と結びついているということです。
その代表が、終身雇用制度です。

高度経済成長期あたりから、日本では終身雇用が定着しました。
かつて、ジェームズ・C. アベグレンは日本的経営の強みは、

  1. 企業別組合
  2. 終身雇用
  3. 年功序列

であると述べました。

確かに、米ソ冷戦で西側諸国内での競争と、経済がモジュール化する前の時代には一つの企業が部品から製造の最終工程までを担うのが当たり前でした。このような時代は、外部環境は大きく変化しないため、安定した雇用環境を通じて恒常的な技術革新を通じて日本企業の国際競争力は一気に高まりました。このモデルは、村人総出で行う日本のチームワーク型の稲作文化と密接に関わっていたと経済学者の青木昌彦さんはおっしゃっています。

しかし、2000年前後から多くの産業でモジュール化が進みます。

モジュール化とは、すなわち最適な部品を世界中で調達し組み立てるモデルです。かつて、テレビ、パソコンなどは部品製造から最終組立までを一社で行うことが当たり前でした。この時代は日本の製造業が世界を席巻した時期と重なります。

しかし、時代は急変。今は液晶パネル、CPU、GPU、メモリなど部品を最適調達して組みててを行うのが当たり前です。

従来は、終身雇用でチームワーク型の雇用環境が有効に機能していたことが、現在はむしろ弱点になりつつあるという見方です。

家電、パソコンなどで進んだモジュール化ですが、一部の例外もあります。その代表は自動車産業でしょう。日本企業が過去20年の経済失政下でも、国際競争力を落とさなかった数少ない産業です。しかしながら、近い将来、電気自動車の普及によって自動車産業にもモジュール化は波及することでしょう。

こうなると、閉鎖的な雇用環境でノウハウを内部で尽き重ねていくことが強みとなる産業がますます減っていくことになります。

2: 日本の組織は共同体(ゲマインシャフト化)しやすい

もう1つ、日本モデルには共同体化という問題があります。

この点は、大東亜戦争(第二次世界大戦)の敗戦理由をまとめた「失敗の本質」や堺屋太一さんの著書などでも数多く指摘されています。

本来組織とは組織の目的があって組み立てられます。
これを機能組織(ゲゼルシャフト)といいます。

例えば、軍という官僚機構は戦争に勝つことが目的です。明治初期の日本軍などは幕末の騒乱を通じて、江戸時代の幕藩官僚制を一気にヒックリ返して、新しく帝国陸海軍を創設し、日露戦争までは非常に有効に機能しました。

一方で、組織にはもう一つの形があります。
それが共同体組織(ゲマインシャフト)です。ゲマインシャフトの代表は、町内会だったりキリスト教圏でしたら教会などのように、地元の共同体に密接に関わる組織です。

では、日本企業、特に、大企業はどうなのでしょうか?

当然あらゆる企業は創業された時はベンチャー企業です。創業者がいて、起業としての実現したいプランがあって、そこに人が集まります。つまり、ベンチャー時代の企業の多くは、目的に対して最適化されたゲゼルシャフトであると言えるでしょう。もちろん、だからといって、組織内の人間関係は冷たいわけではなく、ゲゼルシャフトであっても小さい会社ならではの人と人との温かい接触もあったりします。

しかし、事業が成功して大企業化し始めたころから組織にはその本来の目的ではなく、組織の安定性や心地よさに惹かれて人々があつまりはじめます。ここに、1960年代からはじまった終身雇用と年功序列モデルにより組織がさらに閉鎖的になってきます。

3: 一度脱藩するとキャリアアップしにくくなる独自の社内スキル

共同体化した組織では、スキルは対外的に通じるようなものよりも、その社内や組織内の人事考課で使えるような、社内の対人スキルなどが優先されていくようになり、人々は組織の外と内を分けてみていくようになります。これは、一般的にいわれる上級国民と呼ばれる人が属す職種である大企業や官公庁でよく見られる現象です。

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一方で、こうした内輪化と独自スキルばかり身につける状況は見せかけの安定を与える代わりに、大きな不安を与えます。

  • ひょっとして自分は外ではまったく通じないのではないだろうか?
  • もし、会社に何かあって外に放り出されたらどうなるのだろう?
  • 40代、50代に入れば黄昏研修、子会社出向など窓際に追い出されるのでは?

こうした不安を抱えつつも、外に出ていくことはますますできなくなっていきます。
この心理的状況は、是非、エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』をお読みいただくことを勧めます。

エーリッヒ・フロムの名著『自由からの逃走』をわかりやすく要約・解説 - 書籍内の名言などもあわせてご紹介します エーリッヒ・フロムの名著『自由からの逃走』をわかりやすく要約・解説 – 書籍内の名言などもあわせてご紹介します

人々は、実はこの共同体化した組織の受益者であるにも関わらず、「こういう環境に自分は閉じ込められている」という被害者意識も持ち始めるようになります。居酒屋で会社の愚痴などをよく聞くのはこの心理状況の裏返しではないでしょうか。

4: デフレ経済による社会の固定化

日本の物価上昇率の推移日本の物価上昇率の推移

もう1つの理由は日本のデフレ経済です。

デフレとは物価が向上的に下落していく経済現象で、常に需要不足、供給過剰の社会状態です。

需要が足りなければ、人々はお金を使いませんし、企業も設備投資を行いません。今、手元にある金を本来は未来のために出費したり、投資すべきなのにこれらの行動を尻込みさせるのがデフレです。つまり、目先の金を5年後、10年後の未来のリターンより優先してしまうのです。

日本は1997年の消費増税以来、小康状態を取り戻したこともありますが、ほぼ20年以上に渡ってほぼ物価上昇がゼロ%台かマイナスというデフレ状態にあります。唯一物価が上がったのは、1997年、2014年、2019年と増税のあった年のみです。

一度デフレになるとますます、人々はリスクを取ることをためらい始めます。運良く公務員や正社員になった人は、その職場にしがみつくようになります。給料は思ったように増えなくても大企業であれば倒産確率が少ないからです。

サラリーマンとリモートワーク 日本的リモートワーク~人を組織にしがみつかせ、愛社精神を奪うおままごとシステム

しかし、一方でこうした行動は転職して新しいチャンスを得たり、起業して一攫千金を狙う気持ちを奪い去ると言えるでしょう。つまり、ただでさえ流動性の低い日本の雇用環境を更に固定化させてしまうということです。

結局のところ自分が自立するしかない

大組織にいるほど社畜になりやすいということがこうした分析からも見えてきました。

では、ベンチャー企業の社長は社畜ではないのでしょうか?あるいは、独立して活動している芸能人はどうでしょうか?組織に属している限り、そして、成功体験が固定化する限りにおいてあらゆる職種の人は社畜化していく可能性を持っています。

実は社長も社畜

例えば、私は1つの会社では社長の名刺を持っています。

この会社では、私は給料をもらってますし、また、銀行から大きな借金をして保証人にもなっています。いわゆる、サラリーマン社長と違って、創業社長の多くは自分の生んだ企業と運命共同体です。

また、当然、売上を特定の顧客に依存していればその顧客の言うことがたとえ無理難題であっても聞かなければいけないことだってあります。

そう、つまり、社長をやっているからといってその会社に自分の生活の大部分を依存していればやはり社畜なんです。

同じことがフリーランスにも該当します。やはり、自由人のイメージもありますが仮にその収入の殆どを1つの企業に依存してしまうと、気づかないうちにその組織の動静に自分自身の行動や判断がひきずられます。つまり、社畜というのは組織に縛られる人間関係であり、その構図の本質は私たちが金銭的、精神的にその共同体と一体化しすぎることで起きる心理的現象だと言えるでしょう。

解決策は自立することともう1つの共同体を外に持っておくこと

こうなると、社員だろうがフリーランスだろうが社長だろうが特定の組織に依存してしまえば社畜化します。では、社畜化しないための方法は何でしょうか?

それは、1つの組織に依存しないモデルを構築していくことです。

まずは1円でもいいから本業以外で所得をつくることが心の安らぎを与える

仮に現在あなたの所得の100%が1つの会社に依存しているとすると、あなたがそう思っているかいないかに関わらず社畜であると言えるでしょう。もちろん、その会社が素晴らしくて、今、現在安定していたとしても将来はわかりません。

そう、「畜」とは別に会社があなたに家畜のようになることを押し付けるだけではありません。いえ、むしろ、自ら選択したことの結果として、外に出ることを極端に恐れるようになってしまった結果、更にその組織に依存しているからなんです。

となると、解決策は唯一つ。
1つに依存しない状態を作っていくことです。

やっぱりブログは鉄板の自立手段

とはいえ、自分は今40歳で今更転職するなんて怖い。
ウーバーイーツの配達する体力もないし、今更、コンビニバイトもしたくない。

そんなふうに思った方。
むしろ、今、社畜として少なくともむこう半年、1年の給料が突然ゼロになるような状況でないのであれば、やっぱり私はブログを勧めます。

なぜなら、ブログは今日今すぐの売上にはなりませんが、コンテンツを蓄積していきます。一見、1円も生み出してないかもしれない記事も、インターネット上には残ります。そして、その記事が今後新しい記事をサポートするかもしれません。

いずれにせよ、目先の1円にはなりませんが、1年後、2年後の1万円、10万円に繋がる可能性に自分の大事な時間をかけるのです。

このあたりについては、下記のエントリをご参照ください。

ブログのメリット・デメリット 起業・独立するならブログからがオススメなわけとメリット・デメリット(本業でリアルに100人雇う商売をやって悟ったこと)

もう1つは仕事以外のゆるいネットワークを作る

海外と比べて日本人が社畜化しやすいもう一つの理由は日本に中間共同体が少ないことが挙げられます。

ヨーロッパやアメリカではかなり変わったとはいえ、今も週末に教会に行ったり地元の活動に参加する人たちが多いです。こうした共同体はまさにゲゼルシャフト(共同体組織)です。ただ、地縁に結ばれた人間関係であり、かつ、職場も業種も全く異なる人達のゆるい連帯です。

日本でもかつてはこうした中間共同体が各地にありましたが、首都圏などでは核家族化が進んでお隣の人のこともわからないようになってしまった現在、事実上消失してしまっています。

日本の会社が共同体化しやすい理由の1つは日本社会から中間共同体がなくなった代わりに会社が共同体化したという見方もできるでしょう。

しかし、一方で今はネットの時代です。
バーチャルに中間共同体が出来上がってそこに属することだってできます。

オンラインサロンなどもその1種ではないでしょうか。
飲み会も、ゴルフも、バーベキューも職場となるのではなく、自分の中にもう1つ属してると思えるような共同体を持っておくことで仮にあなたが現在社畜だと思っていたとしても、その精神的ストレスは大きく減らすことができるでしょう。

私にとっての中間共同体はスポーツクラブのサウナでしょうか。
自分が通う朝の時間帯はほとんど仕事前の経営者の方たちばかりで、お互い立場を抜きにして情報交換などしたり時には飲みに行ったりと気持ちのバランスを取るのにぴったりです。

まとめ

いかがでしたでしょう。

自分のことを「社畜」と卑下していても状況が向こうから好転してくれることはありませんね。

むしろ、「社畜」と自虐できる環境は逆に考えれば今この瞬間は給料も普通に支払われていて安定している恵まれた環境にいるともいえるでしょう。社畜から脱するには、まず、自分自身に複数の収入のソースを確保して、心を自由にしていくしかないでしょう。

ブログはうまく行ったときのアップサイドがある一方で、失敗リスクは低くはじめるにはピッタリの副業であるといえるでしょう。

大山俊輔