FOMOとは?
 
“FOMO”(フォモ)って言葉をご存知ですか?
海外のSNS関係のスピーチや書籍などを見ていると頻出するこの単語。
最近では、日本の雑誌やオンラインメディアでも登場し始めた。

 
やっと日本でも認知でたか〜、と思うが、それだけこのFOMOに病んでいる人がアメリカだけではなく日本でも増えてきている証拠。
 
この”FOMO”は“Fear of missing out”を意味する。
直訳すると、「何かを逃したくない恐れの心境」。
 
びっくりしたが、Cambridge Dictionaryにも単語として登録されている。
それだけ、今のソーシャル社会の変化が急激かつその影響が大きいことが分かる。
 
ちなみに、Cambridge DictionaryでのFOMOの定義は下記だった。

 

“fear of missing out” ー a worried feeling that you may miss exciting events that other people are going to,especially caused by things you see on social media:

 
“especially caused by things you see on social media”とソーシャルメディア上での出来事であることを強調しているのが印象的だ。
 

FOMOが深刻な社会問題に

先日、Habit Summitでアメリカに行った時のひとつのテーマが”Indistractatble”。
つまり、どうやって集中力を取り戻すかだった。
 
Habit Summitについてはこちら

http://shunsukeoyama.com/habit-design-blog/2018/04/habit-summit-2018-report/
 
Habit Summitの参加者はシリコンバレーエリアで働くUI・UXデザイナーがメイン。
彼らの多くは、Stanford Persuasive Technology Labなどの出身者が多く、人の行動に大きな影響を与える行動心理学などは基本的教養として理解している。彼ら自身からその問題点についての指摘が出てきているのが印象的だったが、それだけ、負の側面が看過できないレベルになってきていることの証左ともいえるだろう。
 
一般的なFOMOの症状としてはこんな感じだ。
 

・ 自分が誘われてない飲み会に友達が写っているFacebookのフィードが出てきて気になって仕方なくなった
・ 友達や親戚の方が自分より幸せそうに見えて、無意識のうちにその人のフィードばかり見てしまう
・ なんか大事なニュースを見逃してしまってないか?と不安になってついついニュースサイトやSNSを見てしまった

 

こんなことが気になってFacebookやその他アプリを立ち上げてしまったことはないだろうか?
これこそが、代表的な“FOMO”だ。

 
先日、アメリカを訪問した際にFacebookのザッカーバーグが公聴会に呼ばれていて日本でもニュースになっていたが、実はアメリカでFacebookについて問題になっているのはどちらかというとSNSがFOMOを誘発しやすいこととそれによる社会的なコストの大きさについてだ。

 

問題 1 :生産性の低下

それもそのはず。
一見、スマフォが普及してから社会が便利になったように見えるのではないか?
よく、『スマフォ仕事術』などといったテーマの本が出回っているが、それはスマフォで便利になった一部の部分を切り取ってみているからだろう。
こういうのはデータで見たほうが早い。実は米国の労働生産性成長率は落ちている。
 
米国の労働生産性の推移とSNSの普及

 
こちらは米国のデータだが、実は1990年代〜2007年までくらいが一番生産性改善のペースが良かった。
 
もちろん、生産性の定義は分子が付加価値、分母が労働時間になるので、分子の付加価値の名目増加が一番影響が大きく、経済成長率や物価上昇率といったマクロ指標の影響も考慮する必要はある。とはいえ、肌感覚としてスマフォが普及し始めた2000年台後半から我々の生産性向上率が落ちてるのは腑に落ちる気がするのではないだろうか。
 
 

問題2 : 依存症

もう一つの問題は、依存症だ。
現在、我々人類は1日に平均で150回スマフォをチェックしているそうだ。
 
えっ?そんなに?
そう思うかもしれないが、実際そうらしい。
 
パチンコとスマフォは一緒
 
現在、我々が使うアプリ ー 代表的なものはFacebookやインスタのようなSNS、あるいはソーシャルゲーム、そして、意外と思われるがメールやSlackなどのチャットアプリ ー の大部分はオペラント条件付けを活用したアルゴリズムを採用している。つまり、パチンコやスロットマシンと同じ仕組みなのだ。
 
パチンコは毎回必ず玉が出てこない。
あるいは、同じ確率であたることもない。
つまり、結果を読めないが、たまにあたる。
このあたるのが行動心理学でいうところの“報酬”だ。
 
そして、確率が定率ではなく変率(variable ratio)であることがポイントだ
読めないがたまにあたると、脳ではドーパミンが側坐核に放出されて快感を感じる。つまり報酬だ。
こうして、あたるかわからないので、気になって何度も続けてしまう。結果、依存症になる。
 
報酬系の仕組み

 
実は、Facebookなどのフィードアルゴリズムはまさにこれを採用している。確かに8割から9割のフィードは広告、どうでもいい友達のつぶやきだ。ただ、たまに気になるフィードがよめない確率で登場する。それが楽しかったり気になって報酬となる。
 
スマフォのスクロールとドーパミン
このフィードを出す時我々は何をするか。
手をスワイプしている。報酬を期待してスワイプするのだ。
まさに、スキナー箱と同じだ。我々の脳は基本、エサを期待して首を突っ込む鳩と一緒なのだ。
 
スキナー箱
これと一緒
 
つまり手をスクロール(スワイプ)する(行動)=変率での報酬(たまに面白い、気になるフィード)とリンクされる。
方程式はこうだ。
 

トリガー(通知など)⇒ 行動(スクロール・スワイプ) => 報酬(変率) =>依存

 

2つのトリガー(内的・外的)

それでは、そのキッカケは何だろう?
Facebookをついつい立ち上げるときのキッカケを思い出してみよう。
真っ先に思いつくのは通知だ。
 
Facebookの通知とドーパミン

 
これは、トリガーとしては外的トリガーと言える。
他にはメールが届くときの受信音、あるいは、携帯電話の着信などもそうだろう。

 
ただ、やっかいなのは、この外的トリガーではなく内的トリガーだ。
 
あなたは、通知などがあるないに関わらず、ついつい、Facebookにログインしてしまったり、メールをチェックしたいと動機にかられてチェックしたことはないだろうか?これが内的トリガーの代表的なものだ。他にも、
 
 

・ 友達の動向がちょっと気になるのでFacebook見てしまった
・ どうでもいいレベルの出来事なのにわざわざ写真を撮影してインスタにアップしてその後いいねが気になって何度もみてしまった
・ エレベーターで人が多くて少し不安になってついついメールチェックした

 

こうした動機は一般的に内的トリガーと言われる。
この内的トリガーの大部分は、「不安」や「取り残されたくない」「ヒマ」といった負の心理的な動機である。そして、これこそが、アプリを作っている会社が自社商品に仕組んでいる依存させる仕組みなのだ。
 
FOMOはどうだろう?
まさに、FOMOは内的トリガーの筆頭格だろう。
 
実はFacebookだけではない。
インスタやSnapchatなどのSNSは言うまでもないが、他にも、
 

・ メール
・ ニュースサイト
・ 写真編集(Google Photoなども)
・ TODOリスト
・ 動画(Youtube、Netflixなど)

 
などを開発している会社もみな同じ設計思想でアプリなどを開発している。
 
彼らとしても、滞在時間と広告収入がリンクしたビジネスモデルである以上は、一度ユーザーを捕まえたらそのユーザーの滞在時間を増やすことが彼らのビジネス上の利益を最大化する。そうなっちゃってるのだ。
 

FOMOは21世紀のタバコになる

Yコンビネーター創業者のポール・グレアム

Yコンビネーター創業者のポール・グレアムは、
 
スマートフォンは21世紀のタバコとなるだろう。
 
という言葉を残している。
 

タバコもこうしたアプリと同じく、ニコチンが脳の報酬系に働きかけドーパミンを放出させることで依存症にさせるので確かに同じメカニズムだ。実は、コカインなども脳に働きかける効果は全く同じ。そう考えると、2010年以降の人類はほぼすべての人達が多かれ少なかれ依存症になっている。『スタンフォードの自分を変える教室』の著者、ケリー・マクゴニガルはスマフォのことを“携帯ドーパミン装置”と名付けている。
 
せっかく喫煙が減って人類の中毒の一つが減ったと思ったがまた増えてしまったということだろう。
 
まだスマフォが普及して10年足らず。
我々人類は700万年の進化を通じて、他の動物より大きな大脳新皮質(主に前頭前野)などを手に入れ文明を築き上げたが、こうしたテクノロジーの進化はあっという間だ。つまり、進化を通じた適応では間に合わないのでこうした問題が起きてしまう。となると、解決策は3つだけ。

1:自己防衛(問題を理解してうまく付き合う)
2:テクノロジーによる機能制御
3:法律を通じた規制と開発者の倫理

根本的な解決は2と3になるだろう。
ひょっとすると、タバコのときと同じ規制が加わる可能性もある。
 
ただ、こうした問題に法律が対応するには時間がかかるので当面は自己防衛するしかない。
そこで、少しだけ自分が使ってるツールを紹介する。
 

おすすめのFOMO対策!

FOMOの真髄は「他人が気になること」という内的トリガーだ。
そして、その内的トリガーを定期的に喚起するのが、プッシュ機能や通知などの外的トリガーである。
 
つまり、FOMO対策で一番手っ取り早いのは、外的トリガーとなるこうした通知を外していくこと
究極の対策は、アカウントをなくすことだろうが、ここまでしたい人はあまりいないだろう。
ということで、今すぐできる方法やツールをFacebookを例に紹介する。

 

① 外的トリガーを外す

a) 通知をはずす
まず、手っ取り早いのは通知を外すことだ。
代表的なのは、スマフォの通知ボタン表示をやめてしまうこと。
こちらのサイトに方法が書かれているので試しにやってみるとよいだろう。
 
参考:iPhoneでの通知の設定方法と使い方
https://www.ipodwave.com/iphone/howto/notifications.html
 
 
外的トリガーの代表たる通知がなくなる(減る)だけでも、この無限のドーパミンサイクルにハマるキッカケを減らしてくれる。

b) ドーパミン系アプリをスマフォの画面の後ろに持っていく
多くの人は、Facebook、Line、メールやゲームといったアプリをスマフォのランチャートップに持ってきているのではないだろうか?これこそ、自ら「私の側坐核にドーパミン出してください!」と罠にはまるようなもの。とりあえず騙されたと思って、2つ目以降の画面に持っていこう。これだけでも、Facebookを立ち上げるのにトップ画面から1つ(あるいは2つ)スワイプする必要があって手間が増えるので、チェックする回数が減る。
 
唯一のデメリットはSNSを通じた交流が減ることだろう。
もちろん、メリットのほうがデメリットより多い。
私も母親に「Lineの返事が全然来ない」と文句言われるが(笑)。
これくらいがちょうどよいのだ。
 

② 内的トリガーを外す

a) 友達ではあるがフォローしない
次に、内的トリガーを外す。
つまり、他人が気になる、あるいは、不安になるといった環境にならなくするのだ。
まず、第一にオススメなのは気になる友達や知り合いのフォローをはずすことだ。
 
参考:フェイスブック:友達のままでフィードを非表示にする方法
http://www.tabroid.jp/news/2014/04/facebook041101.html

 
特定の人だけフォローしないというのも可哀想なので私はほとんどすべての友達は友達として繋がってるが基本フォローしていない。
スマフォでもこうしておくと、フィードには友達のエントリが出てこないので他人の動向が気になることがなく自分のことに集中できる
 
しかも、友達関係はちゃんと続いているので、大事なことがあるときだけメッセンジャーなど使えば良い。
たまに会うこともあるだろう。その人のアップデートを知りたいなら、その時に久しぶりにチェックしてあげよう。
フィードに日々出てきて気になってしまうことによる変率報酬の罠を避けられるのでドーパミンの罠にも陥らない。
 
b) 雑魚フィードを名言フィードに変える
なかにはPCでFacebookをしている人もいるかもしれない。
そんな人にオススメなのは、Chrome Extensionの”News Feed Eradicator for Facebook”だ。
これを入れるとなんと、フィードが消えて代わりに偉人の名言が出てくる(笑)。
 
News Feed Eradicator for Facebook
 
他人のつまらないドヤ顔投稿みて自分の気持ちが動揺したりFOMOに振り回されるくらいなら、偉人の言葉に心をかきたてられて仕事に向かうほうが良いのではないだろうか?
 

もっと自分のことに興味を持とう

自分と向き合う
 
FOMOは結局のところ、他人と自分の比較をしてずっと気になること。
そして、その負の感情によりSNSなどを何度も立ち上げてアップデートする度にドーパミンが出て自分自身が依存症になってしまうことだ。
 
こうしたことで神経をすり減らす事ほどもったいないことはないだろう。
 
大事なことは「もっと自分に関心を持つ」ことだと思う。
FOMOに陥る人の気持の軸は自分ではなく、「他人をベースにした自分の相対的な立ち位置」だ。
これだと、常に他の人があれをした、これをしたということが気になってしまう。
 
結論から言うとみんな暇なのだ
暇であり、他人と同じ自分に安心してしまうのだ。
 
特に均一的な教育を受けて同質的な環境で育ちがちな日本人は個人的にはFOMO中毒にハマりやすいと思う。もっと自分に興味を持とう。
 
自分がコントロールできるのは自分だけだ
コントロールできない他人に振り回されているほど人生の時間は長くない。

 
時間は我々誰しもが共有する大事な資産だ。
その時間の使い方の差で人生が大きく変わってくる。


カテゴリー: 習慣・行動デザイン