脳科学に興味を持つ

大山俊輔です。
私が脳に興味をもったきっかけは今自分自身がほぼすべての時間を投入しているb わたしの英会話という英会話スクールの事業だ。
 

別に自分自身、茂木健一郎さんや中野信子さんなどのように脳科学をテーマに講演をすることもないだろう。
あるいは、習慣をテーマにしたコンサルタントや講演稼業で飯を食っていく気もまったくない。
 

私の少なくとも現時点の主たる事業はb わたしの英会話という英会話スクールであり、その経営者だからだ。

 
では、なぜ、「脳科学」や「行動デザイン」に興味を持つのか?
それは、あくまでも、自分の事業を深掘りしていくとどうしてもこの「脳」と「行動デザイン」という2つのトピックは避けることができなくなっただけなのだ。

 

お客さまのお手伝いしながら気づいてきたこと

自分がこの事業をはじめたのは2006年5月。
このエントリを書いているのは2018年の5月だから、かれこれ13年も英会話スクールの運営ということに特化して自分の時間を使ってきた。
 
今まで何千人というお客さまをサポートしてきたし、体験レッスンなど英会話をはじめるかどうか検討している(いわゆる見込み期ステータス)人の接客も入れると何万人という人と接してきた。自分自身が担当したお客さまも2千人は超えるだろう。
 
その時に自分が興味を持ったのは、下記の2点だった。
 

① 人は何故新しいことに挑戦するのを躊躇うのか

② 何故、始めたことを続けるのがかくも難しいのか

③ 英会話ははたして学問として捉えるべきなのか?

 
商売、という視点で見れば①は当然ながら営業という視点で大事だから。
そして、②については、お客さまが長期的に継続し上達してもらえることこそがビジネスとしても良いことだからだ。
 
①については自分はもともと営業経験がなかったのではじめのころはかなり営業の本を読み漁った。
創業間もない頃はまだ、書籍など見ても昭和時代の成功事例が多かったためか、かなりコテコテ。
例えば、『鬼の販売部隊』とか(笑)。

 
②についても同じ。
やっぱり、始めてくれたのは(特に自分が担当だと)嬉しいものだ。
でも、気づけば「最近見かけないな〜」と思ってしばらく経つと消えてしまっている。
 
頑張るって言ったのにどうして!?
 
当初は、かなり脳筋的に自己啓発書や体育会系の根性論でこうした問題を解決しようとした。
ナポレオン・ヒル、ブライアン・トレーシー、ジム・ローンなどの海外の著名な自己啓発関係の人達の本には自分自身もかなり助けられることも多かった。
ただ、始めることと継続すること
 
でも、考えてみたら自分自身も気合、根性は苦手。
そもそも、自分は学生時代は部活すらしてもいない(笑)。
 
③については自分自身の経験と重なる。
数多くの英会話スクールでは、教材、講師といった目に見えるスペックで競いがち。
もちろん、こうした要素が必要条件であることは言うまでもないけど、だから上達するかというとそうではない。
 
これは日本の製造業が技術者視点でスペック競争しているうちに
中国企業がそれを遥かに上回る価格競争力で日本企業を国際市場から駆逐し、そして、アメリカ企業がユーザー視点で設計した高付加価値商品で同様のことをしてきたことと似ている。
 
英会話業界も職人気質の経営者が多い。
結果として、スペック競争が大好きな人が多い気がする。
 
こうした人達の視点では、英会話というものを提供するスクール側が「学問」として見ているからではないか、というのが自分の仮説。
確かに学生時代、英語のクラスは、数学、物理、歴史、地理、といった他の科目と一緒に学ぶからそのイメージが強いのだろう。
 
だが、実際には英会話は掛け算の九九、パソコンのキーボードのタイピング、スポーツなどと同じだ。
個人的には、球技に慣れるあの感覚こそが英会話でも必要だと思っている。
 
実はこれも脳とかなり関係している。

 

行動主義心理学、行動経済学、脳科学との出会い

自分が創業した時期って知的好奇心をくすぐる意味ではラッキーだったと思う。
なぜなら、科学の世界で今まで不明だったことがどんどん解明されていった時期だから。
 
まず、2003年にヒトゲノムが解読された。
そして、これは90年代からだが、fMRI(functional magnetic resonance imaging:磁気共鳴機能画像法)の登場により脳の機能が以前と比べて加速度的に解明され始めたことだ。
 
従来は心理学者(特に意思決定については行動主義心理学)や哲学者といった人たちと、こうした概念と実践を結びつけた自己啓発関係の人達が人のグズグズしてしまう性癖、あるいは、続けられない癖を解決するための様々な方策について議論してきていた。
 
そもそも、人が集中できない、続けられない、といったテーマは古代ギリシャから永遠と続く人類のテーマだ。
全然古いテーマでもない。
 
ただ、脳の機能がより明らかになることで何故なのかが科学的に説明できるようになってきた。
この鏑矢となったのは、行動経済学の登場だろう。
 
ダニエル・カーネマン
ダニエル・カーネマン
 
ダニエル・カーネマンは2002年にノーベル経済学賞を受賞した。
彼の研究は主著『ファスト&スロー』(英題:”Thinking, Fast and Slow”)でも書かれているがその代表となるのはプロスペクト理論。
 
不確実環境下の意思決定モデルだ。
 
そして、もう一つのテーマは「ヒューリスティクス」と「バイアス」。
これは平たく言うと経験則。今まで慣れ親しんできたことが意思決定にどう影響するか。
 
そして、彼の論文で有名になった概念がシステム1(System1)とシステム2(System2)。
これはテーマとしては長くなるので、別の機会に紹介するが、脳科学の飛躍的発展が2000年台以降であることを考えると少しラフな区分けかもしれない。
ただ、説明する時にはシンプルなのでよく使っている。
 
自分自身の意識、無意識における意思決定、行動、あるいは言語などでもとても重要な要素になってくる。

 

脳をベースに社内マニュアルを変えていった結果・・・・

こうした研究を踏まえて、実はbの社内マニュアルからお客さまのお手伝いマニュアルに至るまでかなり行動経済学のエッセンスを入れ込むようにした。
それ以降の結果の変化は驚くばかり。
 
まず、営業成約率は劇的に改善した。
しかも、いわゆる営業という行為をしないにもかかわらず。
 
私はそもそも営業されるのは嫌いだ。
いや、厳密にいうと他人に何かの価値観や行動を強制されるのが苦手。
 
そういうこともあって、昭和的な営業の本に書かれている気合と根性系のスタイルには違和感を持っていた。
なぜなら、そこには相手の頭の中から逆算するという行動デザインの発想がないからだ。
 
そこで、まず、行動経済学のエッセンスをお客さまの体験レッスンの対応方法に入れるようにしたところあら不思議。ほとんどのお客さまが自発的にご入会される。
 
始めの頃は魔法でも起きたのかと思ったけどそりゃ当然。
強制しないで、お客さまに決めてもらってるし、こちらは何も強制しない。
 
ただ、ちゃんとお客さまが意思決定をするときに壁になっているものを外すお手伝いをしているだけ。
細かなことは企業秘密(笑)。
 

そして、継続率。
 
これもかなり改善した。しかし、正直に言うとさらなる改善の余地があるだろう。
なぜなら、継続していくためには「ハマっていく」ための段取りが必要になるから。
 
そして、その段取りをつくるものはスクールや人だけでなく、お客さまのスクールの外での行動。
その中でもかなりの時間を占めているスマートフォンとも実は密接に関わってくるのだ。
最近では、アテンションエコノミーについての反省がシリコンバレーでも語られている。その通り。当社もお客さまも被害者だ。
 
ただ、正しく使えば、実はお客さまや私達の生活をより豊かにしてくれる可能性もある。
 
このことも、企業秘密(笑)。
 

最後に、英会話ははたして学問として扱うかどうか。
これは会社、人によって解釈もわかれるだろう。私が学問として扱わないという解釈をすればそれに対しての反論は山ほどあるだろう。
 
特に学会や同業他社の方からはそう言われるかもしれない。
 
でも、bで提供している英会話のサービスは学問、より厳密に言えば、あの、中学や高校のときと同じ学校のクラスと同じ扱いはしない。
 
なぜなら、「会話」という行為をより深く掘り下げると一般的な学問で使われる脳と違う部分を使う必要があるからだ。このヒントは先程出てきたカーネマンのSystem1とSystem2とも関係するし、より最新の脳科学の発見のインプットから見れば更に脳のどの部分が言語を話す上で具体的に重要かも分かってきている。
 
結論としては、英会話は体育のクラスや楽器の使い方を学ぶときの行為とより近い。
 
その時、私たちはどうやって楽器の使い方を覚えたのか?
どうやって、サッカーボールの蹴り方を学んだのか?
あるいは、掛け算の九九を覚えたのか?
 
このことはまた別の機会に。